魔法少女になりました。
ああ、人生なんてこんなもんなんだ。
たとえば突然宝くじが当たって大金持ちになったりだとか、大きな企業が倒産したりだとか、そんなことはよくある話だ。実際に、そういう話は存在していて、それを面白がった人間が文章にして書き残しているのだから。そこには当然虚偽も含まれるだろうが、少なくとも現実にあり得ることなのだから、読者はそれをリアルのものとして受け入れられる。
でもたとえば現実にあり得ないようなことを実際に綴って、人々はそれを受け入れられるだろうか。答えはノーだ。人は自分の目で見たこと以外は信じたがらないくせに、あり得そうなものならば面白半分で受け入れようとする。ならば、その自分の目で見ていないものが現実にはあり得ないようなものだとすれば、人はそれを容易に拒絶する。
つまり、だ。たとえそれが現実のことだとしても、あまりにも受け入れ難い現実だとすれば、人は簡単にそれを虚偽と決めつけ、相手にしようとしない。その事実を共有できる人なんていなくなって、自分一人が唯一それを知っている。
つまり巷で騒がれている魔法少女の正体がただの中学生の、しかも男だなんて事実は自分しか知らないし、受け入れられないというわけだ。
人生ってこんなもんだっけ。後悔の多い船旅だなあ。といいつつも、今日もなぜか魔法少女に変身して街の平和を守らなければいけないわけで。知らない間に義務化していたわけで。
とりあえず、だ。一言だけ言わせてくれ。
ふざけんなあああああああああああ! 俺は男だ! なんで魔法少女なんかにならなきゃいけないっていうんだあああああああああああああああ!