境目の線
その街には、輪郭がなかった。
建物も、人も、空も、
淡く滲んでいる。
色だけが重なっている。
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少年は歩いている。
足を出す。
地面と自分の境目が揺れる。
踏み込む。
少し遅れて、沈む。
止まる。
指先がほどける。
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誰かが来る。
同じように、揺れている。
すれ違う。
肩が触れる。
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触れた場所だけ、色が混じり、止まる。
細い境界が生まれる。
離れる。
境目はほどける。
それぞれの輪郭が、わずかに残る。
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振り返る。
触れた場所に、
かすかな濃さが残っている。
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しばらく、近くにいる。
声が交わる。
わずかに、線が浮かぶ。
途切れる。
また滲む。
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何人かが集まる。
手が伸びる。
肩に触れる。
背を押される。
向きが変わる。
腕の角度が揃う。
線が整う。
崩れなくなる。
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歩く。
足は揺れない。
線は途切れない。
息を吸う。
輪郭が薄くなる。
吐く。
さらに抜ける。
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止まる。
腕を見る。
線がわずかに遅れる。
吸う。
内側がぼやける。
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一歩、後退りをする。
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崩れる。
足元が滲む。
腕がほどける。
視界が揺れる。
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しゃがむ。
地面に触れる。
触れた場所に、わずかに色が残る。
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立ち上がる。
足元を見る。
わずかに濃い跡がある。
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踏み出す。
揺れる。
それでも、跡が残る。
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もう一歩。
崩れかける。
止まらない。
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三歩目。
少し長く、残る。
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進む。
途切れながら、続く。
歪んでいる。
濃さがばらつく。
消えない。
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振り返る。
滲みが、連なっている。
崩れた跡も、
濃い部分も、
そのまま残っている。
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遠くで、誰かが止まる。
こちらを見る。
動かない。
わずかに、頷く。
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足元を見る。
いまの場所に、線がある。
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踏み出す。
さっきより、長く残る。
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歩き続ける。
輪郭は揺れる。
色は安定しない。
それでも、跡が増えていく。
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誰かの跡と重なる。
色が混ざる。
境界は曖昧なまま。
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それでも、
線は続く。




