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境目の線

作者: 灰間
掲載日:2026/04/03

その街には、輪郭がなかった。


建物も、人も、空も、

淡く滲んでいる。


色だけが重なっている。



少年は歩いている。


足を出す。

地面と自分の境目が揺れる。


踏み込む。

少し遅れて、沈む。


止まる。

指先がほどける。



誰かが来る。


同じように、揺れている。


すれ違う。

肩が触れる。



触れた場所だけ、色が混じり、止まる。

細い境界が生まれる。


離れる。

境目はほどける。


それぞれの輪郭が、わずかに残る。



振り返る。


触れた場所に、

かすかな濃さが残っている。



しばらく、近くにいる。


声が交わる。

わずかに、線が浮かぶ。


途切れる。

また滲む。



何人かが集まる。


手が伸びる。

肩に触れる。

背を押される。


向きが変わる。

腕の角度が揃う。


線が整う。

崩れなくなる。



歩く。


足は揺れない。

線は途切れない。


息を吸う。

輪郭が薄くなる。


吐く。

さらに抜ける。



止まる。


腕を見る。

線がわずかに遅れる。


吸う。

内側がぼやける。



一歩、後退りをする。



崩れる。


足元が滲む。

腕がほどける。


視界が揺れる。



しゃがむ。


地面に触れる。

触れた場所に、わずかに色が残る。



立ち上がる。


足元を見る。

わずかに濃い跡がある。



踏み出す。


揺れる。

それでも、跡が残る。



もう一歩。


崩れかける。

止まらない。



三歩目。


少し長く、残る。



進む。


途切れながら、続く。

歪んでいる。

濃さがばらつく。


消えない。



振り返る。


滲みが、連なっている。


崩れた跡も、

濃い部分も、

そのまま残っている。



遠くで、誰かが止まる。


こちらを見る。


動かない。

わずかに、頷く。



足元を見る。


いまの場所に、線がある。



踏み出す。


さっきより、長く残る。



歩き続ける。


輪郭は揺れる。

色は安定しない。


それでも、跡が増えていく。



誰かの跡と重なる。


色が混ざる。

境界は曖昧なまま。



それでも、

線は続く。

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