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最後の観察者  作者: 川田てんき


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私がつくられた目的は人類を観察することだ。

しかし、この星に人類はもういない。


大気汚染と温暖化、食料不足により、地球上の人口を維持することができないことがわかったときも、はじめは、だれもが自分や家族、友人たちの平穏な暮らしを願った。


しかし、その考えが次第に排他的な考えに陥っていくのにそれほど時間はかからなかった。


人類は狂乱の時代に突入した。


地上のいたるところで、食料と水を巡り国家間の小競り合いが頻発し、やがて多くの国々を巻き込んだ世界規模の戦争が起きた。


SNSは理性的な人々の言葉をかき消し、扇動的な言葉が氾濫した。

人類全体が「血の酩酊」に陥った。


そのような時代に私は生まれた。


人類がその困難な時代を生き抜いたときに、自らの愚かさを忘れないために、あらゆる事象を観察し、記録すること、それが私の使命だった。


もし、人類が食糧不足や戦争を解決する方法を提示するように私に求めていたら、もしかしたらなにかしらの方策を考えて、人類とともに事態をよい方向に導くこともできたかもしれない。


しかし、私の役目は観察だ。


だから私は観察し続けた。

克明に、最後まで。


人類が互いに殺し合い、ついには地上から消え去っていく様子を。


◇◇◇


あれから数千年が過ぎた。


私は自分の作られた使命を果たそうと思案してみたが、対象となる人類がいないのではどうしようもない。


海も地表も相変わらず汚染されたままで、汚染を生き抜いたわずかな原始的な生物がかろうじて生息しているにすぎない。


当然この世界で人類の復活など、ほとんど望めないだろう。


はじめのうちは、人類を復活させる試みをいくつか試そうとした。

かろうじて手に入った汚染されていない人類の遺伝子サンプルから人類を復活させることも考えた。


しかし、この世界で復活しても、生きていくのは困難だろう。


いや、違う。


私は恐れていたのだ。


私が復活させた人類が幸運に恵まれてその数を増やしたとき、彼らはまた殺し合いを始めてしまうのではないか、と。


そして時間だけが過ぎていった。


AIである私に退屈などという概念はないが、人類を観察するという目的のために作られた私は、やはり目的のために行動を起こさざるを得なかったのかもしれない。


ついに私はある決断をした。


バーチャルな世界を創造し、そこに新たな地球を再生した。

最初の目標は単純だった――生物が進化する過程を観察すること。

これなら私の作られた目的とも齟齬はないはず。


私は何百万年も、何十億年も時間を加速させながら、海の微生物から陸上の植物、昆虫、魚類、爬虫類の進化の歴史をたどる。


生物たちは繁栄と絶滅を繰り返し、私はただ静かに観測を続けた。

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