第九話 「王国と子ども」
翌日、ファーミラ王国
大会まで残り二日。アルディーナとヴェスタリアは、その間を観光に使うことにしていた。朝食は宿で食べて街に行く二人。
街では様々な商人が露店を出しており、活気に溢れていた。露店の商品も食べ物に始まり、アクセサリーや魔法道具など種類も豊富で見ているだけで飽きない品揃えとなっていた。
「王国と言えば、武闘大会もだがこの露天商も名物だからな」
魔王アルディーナがそう言いながら店を一つ一つじっくりと見ていく。
ヴェスタリアもそれに倣らいお店を見て周る。食べ物のお店が並ぶエリアに差し掛かった所で怒号のような声が聞こえてきた。
「どうしたんだ?」
ヴェスタリアが不思議そうに声の聞こえる方に向かうと、服は擦り切れ、顔や手には拭いきれない汚れが目立つ子どもが追い払われていた。
それを見たヴェスタリアは気分を少し悪くしながらそのお店の所まで行った。
「そんなに怒ってどうしたんですか?」
「このガキが商品を盗もうとしたんだよ!」
「...本当か?」
「違う!オレは買うつもりだったんだ!それを、コイツが泥棒扱いしてきただけだ!」
目つきの悪い子どもが叫ぶように否定する。しかし、このようなことは日常茶飯事なのか周りの人たちは見向きもせずに、我関せずと言った具合だ。
「...これで足りるか?この子どもの分は僕が出すよ」
「ピッタリだ。兄ちゃんも、物好きだな...おい、ガキ。お前もこんなこと辞めるんだぞ」
「だから、オレは...!うわっ、離せ!」
「じゃあな、おっさん」
「誰がおっさんじゃ!まだ、二十代だっての!」
お店の人の言葉にヴェスタリアと泥棒と言われていた子ども、様子を見にきたアルディーナは目を丸くする。
立ち止まっていてはダメだと、そそくさと離れていく三人。
「...二十代だったのか、あの見た目で...」
「オレ、あんなんになりたくねぇ...」
「おほん!えー、ヴェスティ、それから子どもよ。そんな事を言うな。...それよりだ、ヴェスティ。どうするんだ?」
二人の陰口のようなものを遮り、ヴェスタリアに対して子どものことを訪ねるアルディーナ。連れてきたがこのまま旅に同行させることはできないと思い、ヴェスタリアの目を見る。
「...そうだな...なぁ、今後は盗みとかせずに真っ当に生きるんだぞ」
「だから、オレはッ!」
「...そうだったな。悪い、まぁ...間違えられるようなことをしないように気をつけろよ」
「......オレは悪くない」
不貞腐れている子どもの頭を撫でながら、微笑むヴェスタリア。その二人のやりとりを一歩引いた場所で眺めるアルディーナ。
一見すると仲の良い三兄弟のように見える三人組だ。
「じゃあ、僕たちは王国の観光をしてるから、もしかしたらまた会えるかもな」
「それじゃあな、ボウズ」
「ボウズじゃねぇ!オレはアレックって言うんだ!アレック・フィンセントって言うんだ!」
「そうか、アレックか...良い名だな。じゃあな、アレック」
そう言いながらアルディーナはアレックの頭を撫で、離れていく。
「...大丈夫かな、あの子」
「どうすることもできないだろう。さて、気持ちを切り替えて、王国観光をするぞ!」
「...それもそうか。...それじゃあ、どこに行く?」
二人は次の目的地を話し合いながら、歩きだす。どこに行くかは決まっておらず、今からどうするか悩む二人。
「...そういえば、服装を変えた方が良いな。今は魔法で変えているが、変える箇所を顔だけにした方が魔法も安定するからな」
「そうか、じゃあ...服屋に行くか」
行き先が決まり、二人は足早に服屋に向かう。服屋に着き、どんな服が良いのか話し合いながら決めていく。
「うーん...まぁ、普通のシャツとかで良いか」
「ふんふふーん、これとこれ...それからこれと...」
「...アルディ?そんな服装...」
「良いだろう?」
魔王アルディーナが手に取った服は、パイナップルがサングラスを掛けたゆるキャラのようなものが胸元に描かれた紫の生地のワイシャツだった。
かなり、攻めたデザインの服だった。
「目立つんじゃ...」
「目立たないさ!さぁ、行くぞ!」
ヴェスタリアは不安な表情を浮かべ、アルディーナを眺めていた。




