第六話 「逃避と出会い」
➖ヴェスタリアが旅に出てから半年後➖
丘の上に王城があり、存在感を放っている。『ファーミラ王国』
ファーミラ王国は、人間族だけが暮らす国の中では最も栄えている。そのため、仕事を求めた亜人族が出入りする姿も少しだけ見かけることがある。
「やすいよー!」
「さぁ!買った買った!」
「買わないなら帰れ!」
「あそこのお店の方が安いよ!」
「王様が変わってから景気も良くて嬉しいわ!」
つい先日、王様が変わったかのように暗君と言われていた王様。しかし、人が変わったかのように画期的な政治を取り入れていき、名君と呼ばれるようになったのである。
活気に溢れた街。さまざまな所から声が聞こえて、平和なのだと実感するこの国にて一際目立つグループがいた。
「ゆ、ゆ、勇者さま〜!ど、どこですかぁ〜!」
少し震えた声で勇者様と呼ぶ女の子。ふわふわとした金髪で、垂れ眉、タレ目。どこかオドオドとした雰囲気をしているのが僧侶の『ララメラ・キスショット』
「ヴェスタリアさん!どこですか!?」
凛とした、通る声でヴェスタリアさん。と呼んでいる女性。サラサラな黒髪で、どこかの令嬢を彷彿とさせる彼女は『メリッサ・アルバード』
「ヴェスちゃ〜ん!おーい!」
間延びした語尾でヴェスちゃんと読んでいる白にも見える金髪で、スラリとしたスタイル。露出が高い服を着ている。しかし、全身から魔力が漏れ出した不思議なエルフは『ユリアラン・フェスティード』
彼女ら三人はヴェスタリア・ヴァリエンテと共に魔王軍討伐に冒険に出た勇者パーティ。
「勇者様はどこに行ったんでしょう...」
ララメラが不安そうに二人に尋ねる。
メリッサもユリアランも少しだけ眉を下げ、首を振る。
「分からないです...私たちに何か、不満などがあったのでしょうか...」
「うぅ...ヴェスちゃん...」
「二人のせいだ...二人が、ちゃんとしないから!」
ララメラが二人を責める。
「メリッサは距離がありすぎる!勇者様が委縮してしまうんだ!それに、ユリアランも!”おばさん”のくせに魔法で若作りしてるから勇者様がどっか行っちゃったんだ!」
メリッサは責められ、どうするかユリアランの方を見る。しかし、ユリアランは俯いており、話ができない状態。
ならば、自分がどうにかするべきだと考えた。
ララメラは最年少。そのため、自分たち二人がしっかりしなければいけないと律して、ララメラの目を見る。
「...確かに、私はヴェスタリアさんと距離があったかもしれません。けれど、ララメラ?貴女も”勇者様”と、距離がありますよね?」
「うっ...」
「なので、距離じゃないんですよ」
「じゃ、じゃあ...ユリアランが...」
話を振られ、どうしようか悩むユリアラン。実は先ほどのおばさん発言にて
涙目になっていたのだ。
「...うぅ......おばさんじゃないもん...十九歳だもん...」
「百九十歳でしょ、ユリアラン」
百九十歳と指摘され、固まるユリアラン。瞳が揺れ瞳に涙が溜まる。
「それに、なに?その姿。”魔法”でスタイル良さそうに見せてるだけで...実際は太ってて小皺だらけのくせに!!」
その一言により、ユリアランはぶわっ
と涙を流し震えだす。
そして...
「ララちゃんのばかぁ〜!」
そう言い残し、ユリアランは走って人混みの中に消えていった。
「あっ、ユリアランさん!!ララメラ!そんなこと言っちゃダメでしょ!」
「だって、事実だし...」
「...うぅ......ヴェスタリアさ〜ん!!早く来てくださ〜い!!」
メリッサの悲痛な叫びが、王国中に響いたとか響かなかったとかーー。
『王国外れの森の中』
「ん?今、呼ばれた...?気のせいか...」
ヴェスタリア・ヴァリエンテ。今代の勇者の一人。
彼は今、森の中を慎重に歩いていた。
「はぁ〜...戦い戦い戦い...そりゃあ、戦う覚悟はもってたけど...ちょっとぐらい休みたいよ...」
半年間、毎日戦い漬けと言ってもいいほどに戦い抜いたが、平穏な日々がほしいとパーティ仲間にバレないように逃げ
王国から離れようとしていた。
「ここからなら...研国が近いかな...」
次の目的地を呟きながら歩いている。
すると、森の様子がおかしい事に気が付いた。
「やけに、静かだな...?」
ここの森はいつもなら
鳥の鳴き声を始めとした、様々な動物の声がするのだが今はどの動物の声も、虫の声も聞こえてこなかった。
そのことを不思議に思いつつ
警戒だけはしつつ、どんどんと進んでいくヴェスタリア。
すると、進んでいる方向にて
ガサガサ、と音がした。動物の気配も何もしないのに音がしたということは
掌をそちらに向け、警戒する。
「なんだ......?」
小声で呟きながら、徐々に近付いていく。
「...ふぅ、なんとか逃げ切れ...た...」
草木の中から眉目秀麗な
サラサラの銀髪、赤い目の男が現れた。
しかし、一番の特徴は『頭の角』
角がある存在は総じて『魔族』と呼ばれる存在。
「ま、魔人...」
「え?」
目線が交わった時、二人に電流が走る。
『勇者だ』『魔王だ』
と、直感的に分かったのである。
理解したと同時に二人は即座に行動に移す。
「ぎゃあぁァァ!」
「いやあぁァァ!」
背中を向けて、一気に走りだす。
が、こんなことをしていても勇者と魔王、相手の動きを感じとり動きがゆっくりになり振り返る。
二人して逃げていたことに気付き困惑する。
「な、なんで魔王が逃げるんだ...?」
「い、いやいや...勇者だって...」
「「え?」」
➖十五分後➖
「いやぁ〜、まさか魔王が”魔王の仕事”から逃げてくるとは…」
「勇者だって、逃げてるじゃないか」
自分の責務から逃げてきたことを知り意気投合した二人。
「魔王は、なんで逃げて来たの?」
「魔王のやる事って、書類整理を始めとした事務作業ばかり!…なんて言うのかな、ずーっと、社畜で…”前世”から…あ、いや…」
「前世…!?も、もしかして、魔王も前世の…生まれる前の記憶があるの!?」
「え?…勇者も?」
その言葉にヴェスタリアは激しく上下に頭をふる。完全同意だと言う風に。
「驚きだな…勇者も前世を覚えているとは…」
「いやぁ、本当に驚き…あ!」
「どうした?」
「逃げ出したなら、一緒に旅に出よう!」
「旅…?」
「そう!この異世界を何の責務を背負わずに遊び尽くそう!勇者と魔王で!」
「はは、二人でか…うん、面白そうだ」
こうして、勇者と魔王は
二人で旅に出るのであったーー。




