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第四話「魔法と剣術」

しつこく聞いていたら殴られ気を失ったヴェスタリア、果たしてどうなるのかーー。


頭を殴られ、気を失っていたヴェスタリア。しかし、さすがは勇者候補の指導役に抜擢されただけのことはあり、わずか1分程で目を覚ましたヴェスタリアに、メルル改めて説明を始めた。


「...体内魔法に関しては、自分自身で見つけなければならないからな。まずは体外魔法。ほとんどの者は微弱な魔力を体内に取り入れ行使する。お前も見たことがあるだろう」


「はい!村で、火を起こしたり......洗濯のための水だったり」


「その通り、一般的に”生活魔法”と呼ばれるものだな。...戦闘用の魔法は、生活魔法の延長線上にあるものと認識されているが、実際は全く違う」


その言葉に疑問を抱くヴェスタリア。”微弱”な魔力を体内に取り入れ使うのが生活魔法ならより多くの魔力を体内に取り込めば良いだけなのではないかと。

しかし、ヴェスタリアの疑問を感じとったのかそれとも説明の途中だったのか、メルルは話し出した。


「確かに、扱おうと思えば戦うための魔法を扱えるだろう。だが、戦闘においてしっかりと”戦力”として扱えるのは”精霊の加護”を持っていることだ」


「精霊の加護......」


「あぁ、この加護を持っていないと満足に魔法を行使できない。......お前が持っている”勇者の権能”とはその加護を含め、ありとあらゆる力が内包されている。......まぁ......その権能を十全に扱えた者は約二百年前の勇者だけだがな」


その言葉を聞いて驚き、自分がその権能をちゃんと扱えるか不安になった。

この権能を持てば誰でも勇者のように戦えるようになる。と思っていたが違うとのこと。さらに、権能を扱えたのが二百年も前の人物だと言うこと。

自分がそのような権能をしっかりと扱えるのかと不安になってしまう。


「......扱えても扱えなくても、大丈夫だ。どうせ、王も気にしないからな」


「へ...?」


「...お前以外にも勇者候補がいる。それに、さっきも言った通り、二百年間もの間に勇者の権能を持った存在はいたが、一人も能力を使えなかった。それだけでなく今代の...つまり、今の魔王は穏便派なのか、あまり魔族共が暴れていないからな」


「...そう、なんですね」


安心と言えば良いのかは分からないが、自分が使えないからと言って罰則があるわけではないと分かり、肩の力が抜ける。

しかし、肩の力を抜いたヴェスタリアに気付いたのか少しだけ目を鋭くさせながら語りだす。


「...が...お前が権能を使えるようになれれば、魔族を滅ぼすことも可能だ。あまり暴れていないと言ったが全く暴れていない訳ではない。つまり、魔族からの攻撃での被害はそれなりにある」


「!」


「...権能とは、それほどの力を宿しているんだ。ビシバシいくぞ」


その言葉に対して、ヴェスタリアは「はい!」と力強く返す。

満足気に頷き返すと、魔法の説明に戻る。

体内魔法、体外魔法。

それぞれの説明をしたが、具体的にどうすれば良いのかを教える。


「...まず、体外魔法を扱うには空気中に存在する魔力を体内に取り込むこと。次に体内に存在する魔力と混ぜ合わせ、魔法を発動させる。ここまでは良いな?」


「はい!」


その、返事に満足そうに頷き返し

説明を続ける。


「...体内魔法については、教えることができない。というのも、人によって違うのだ。能力も数も」


「......数?能力については分かりますけど......数って......」


「...言葉の意味のままさ。1つだけの体内魔法の者もいれば、複数の体内魔法を扱う者もいる。だからこそ、体内魔法については自分自身で模索するしかないのさ」


「......自分、自身で......」


自分の手のひらを見ながら、呟く。

メルルはそのヴェスタリアを見ながら、丸太を用意する。

丸太は魔法を当てる的として使うものだ。

用意が終わり、ヴェスタリアを呼んだ。


「それでは、あの丸太に魔法を放つ。まずはそれを見ていろ」


「はい!」


その言葉の後

メルルは右の手のひらを丸太の方へ向けて構える。そうすると、涼しい風が周囲に流れ

メルルの手のひらの部分へ集まり始めた。

風が集まっている箇所から火花が走り、火の玉へと変わる。


「...」


「す、スゲェ...」


メルルは無言のまま、丸太を見つめる。

そのメルルを見て、大興奮しつつも「絶対に目を逸らさない」決めて目を見開き、凝視する。額に汗を流しているがそんなものを気にせずに魔法を見つめる。

魔法を見ていた時に、思わずこぼれ落ちた感激の言葉。


その直後、手のひらから火の玉が発射され丸太へと一直線に飛んでいく。

丸太に当たり、丸太の真ん中に拳大の穴が開き、穴の周りが焼けこげていた。


「...まぁ、こんな感じだな。私は肉弾戦の方が得意だ。魔法は苦手だが...最低でもこのレベルまでは使いこなせなければ戦場には立てないと思っておけ」


「...コレが、最低レベル......」


「そうだ、次は剣術...まぁ、肉弾戦に移りたいのだが魔法について何か質問はあるか?」


「...詠唱とかはないんですか?」


「詠唱か...良く知ってるな。詠唱を使うと、より魔法の精度や威力は上がるが、発動に時間が掛かってしまい実戦向きではないからな。大体は省略されている」


「なるほど...」


「まぁ、省略されている理由としてもう一つ。詠唱とは自分で考えないといけない。簡単に言えば、その人のイメージを落とし込んだ詠唱をしなければならないからな」


それを聞き、男心と言うべきか

厨二心とも言うのか

自分だけの詠唱をいつか絶対に作ろうと考えるヴェスタリアなのであったーー。



「では、剣術だが...まずは木刀を持て」


「はい!」


「...実戦あるのみだ」


「はい!......はい??」


両者共に、木刀を構え三メートルほど離れた。そして、メルルが石を放り投げ、地面に落ちた瞬間、ヴェスタリアの目では影すら見えない速さで真っ直ぐに突っ込み、木刀を腹部に叩き込む。


「ガハッ!?」


何が起きたか分からず、そのまま十メートルほど吹き飛ばされるヴェスタリア。

体勢を整える前に、メルルはヴェスタリアに追いつき足を掴む

そのまま上に投げる。投げられたヴェスタリアは身動きが一切取れずに空を見る。


澄み切った綺麗な青空だーー。

なんて、呑気な考えが浮かんだ瞬間

視界に『真っ赤な髪』が広がる

そう、メルルが跳んでヴェスタリアの上をとり、木刀を叩き込む。


そのまま地面に叩き落とされ小さな陥没ができた。


「...っ...うぐ...」


「...ふむ」


「...ふむじゃないですよ!殺す気ですか!?」


「...何を言っている。殺す気だったら既にお前は死んでいる。そうして騒げている時点で大丈夫だな。二戦目、行くぞーー。」


「や、やめーー。」


そのまま、三戦目、四戦目とボコボコにされるヴェスタリア。傷だらけになり、その日の訓練は終了し、休むことにした。

食事の前にお風呂に行くヴェスタリア。


「ハァ〜...やっていけるかなぁ...」


弱音を吐いているヴェスタリア。

その背後にある扉が開き、慌てて振り返るとそこには師匠であるメルルが立っていた。顔を認識した瞬間、目を思いっきり瞑って見ないように後ろを向いた。


「な、何してるんですか!?」


「...師匠としてお前の身体を洗ってやろうとな」


「だとしても!!ふ、服を着るとか!」


「??何を言っている。服は着ているぞ」


「へ...?あ、本当だ...」


「...婚前だからな。見せるわけないだろう。それに、安心しろ私も目を閉じているからお前の裸を見ることはない」


その言葉通り、メルルはずっと目を閉じていた

魔法の応用で、周囲の地形を含めて感知することが可能なのだ。


「は、はは......はぁ...」


こうして、ヴェスタリアの修行一日目はメルルに振り回されていたが仲良く終わったのであるーー。





「.........メルル師匠」


「...どうした?お前の身体を洗っているんだ動くな。......かゆいところがあったか?」


「いえ、かゆいところは......その、メルル師匠はお風呂に入りましたか?...少し、汗臭いですよ」


「...戦いだけでなく、女性の扱いも学んだ方が良さそうだな」


「あいたっ!?殴った!?」


「当たり前だ!」


...仲良く??――。


読んでいただきありがとうございます。

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