第二十三話 「予選直前」
大会当日。
ヴェスタリアとアルディーナの二人は、朝食を済ませ、大会が始まるのを待っていた。
派手なもの。どんなものが良いのか、二人は結局一睡もせずに話し合っていた。
それぞれ、一応の形はできたのだが、今までとかなり違うタイプの魔法を作ったため、イマイチ自信を持てていなかった。
「...アルディ、大丈夫と思う?」
「私に聞くな...」
逃げた勇者と逃げた魔王、肩書きを見ればヴェスタリアもアルディーナも情けない二人だが、実力はしっかりとある。
しかし、不安なものは不安であり、慰め合っていた。二人で会場の待機場所の隅っこで話していると二人に近付く者がいた。
「オイオイ、にぃちゃんたち、怖いならやめとけよ!」
二人が振り向くと、百六十センチほどの男が立っていた。その男は二人を見下ろしながらニヤニヤと煽り、勝ち誇ったような様子。周りの者もニヤニヤとしているだけであった。
「これは...」
「ふむ、分かりやすく新人潰しのようなものか」
二人でコソコソと話しながら、男を無視していた。すると、無視された男が顔を真っ赤にしながらアルディーナの肩を掴んだ。
「無視してんじゃねぇよ!」
そう叫び、アルディーナを無理矢理立たせる。アルディーナは百九十センチ近い身長があり、男との差は圧倒的。その身長に男はビビリ、もう一人の方、つまりヴェスタリアに突っかかる。
「て、テメェにも言ってんだよ!」
ヴェスタリアが立つが、ヴェスタリアも百八十半ばほどの身長。自身よりも高身長な二人に見下ろされ、恐怖からガタガタ震え、「覚えてろよ!」と叫び逃げていった。
「...なんだったのだ?」
「さぁ...?」
アルディーナとヴェスタリアの二人は、いきなり絡んできたと思えば勝手に逃げていった男を不思議そうに見ていた。
周りのニヤニヤしていた男は、今度は逃げていった男を嘲笑を帯びた笑いを起こしていた。
「見たかよ、あの男!」
「情けねぇ...」
「ってか、アイツら新人か?」
「見たことねぇな」
「そんなことより、逃げたアイツだよ!」
「チビったんじゃねぇか!?」
「違ぇねぇ!」
と、口々に言いドッ!、と笑いが起こっていた。それに対して、ヴェスタリアは不快そうな表情を見せるがアルディーナが首を振り何も言うなと、目で語っていた。
「こういう輩には何を言っても無駄さ」
「分かってるけどよ...」
悔しい、とは違うがそれでも何かは言い返したかったヴェスタリア。それをニヤリと笑いながら
「ま、絡んできたアイツが悪いんだ。それは、アイツの自業自得さ。だが、コイツらが唖然とするような魔法を見せてやろうぞ」
「...ふ、そうだな」
そんな、余裕綽々と言った二人に気づいている者は誰もおらず、時間は過ぎていった。
そして、大会のスタッフが選手の控え室にやってくる。人数を絞るために予選を行うと言い、グループ分けが行われる。
Aグループ、Bグループ、Cグループ、Dグループ。と、四つのグループに分けられる。ヴェスタリアはAのグループ。アルディーナはDのグループに分けられた。
皆はグループ分けを受け、同じグループの者たちを見ながら口々に話していた。
「うわ、アイツと一緒かよ」
「あっちゃー、今回は見送りだな。」
「お、本線にはいけるかな♪」
「あぁ...緊張してきた」
「...」
「おぉ...神よ...勝たしてください...!」
「神頼みかよ!実力を出そうぜ!!」
ヴェスタリアやアルディーナのように、初めて大会に参加した者もいるが何回もエントリーしている者もいる。この闘技場にある、戦士用選手登録。というモノを行うと、出場するだけで青銅貨一枚を受け取れるのである。
頑張り次第で、跳ね上がるがそれは大会や出場メンバーとの相性により変わってしまう。
閑話休題
グループ分けを受け、ヴェスタリアやアルディーナも話していた。
「おぉ...予選が別ということは、どちらかが確実に本戦にいけない。ということにはならないな」
「まだ、分からないけどね」
アルディーナの自信が少し滲んだ言葉に、ヴェスタリアは苦笑いしている。しかし、言葉や表情とは裏腹にヴェスタリアも余裕が滲んでいた。
「それでは、さっそくAのグループの方々は準備に入ってください!」
その言葉を聞き、ヴェスタリアは選手控え室から出て行こうとするとアルディーナが部屋から出ていくヴェスタリアに向け「お前ならできる」と声を掛けていた。
ヴェスタリアは少し微笑み、ありがとう。と簡潔に答えてそのまま出ていく。
大会を行う闘技場への入り口直前にて、スタッフが皆を止める。
「この大会はいつも、様々なことをテーマに行いますが、今回は予選でしてもらうのは『とにかく派手なこと!』」
「派手なことだと?」
「イエス!そこのハゲ頭正解!派手なことであれば、どんなことでもして大丈夫です!皆が目を奪われて、興奮すること!いいですね?」
ハゲ頭と言われた男は顔を真っ赤にして、額には青筋を浮かべ、スタッフの女性を睨みつけていたがここで暴れると失格になるかもしれない、と。意外と冷静な部分を見せていた。
「そして!予選を突破できるのは二人のみ!頑張ってくださいね!」
突破できるのは二人のみ。その言葉に、皆がやる気を滾らせていた。
「うし、いっちょ、やるか!」
ヴェスタリアもニヤリと笑い、右拳を左の掌に打ち付け、闘技場内に出て行った。




