第十九話 「巣穴」
三体のゴブリンを灰にしたアルディーナ。しかし、報酬を得るためには身体の一部。もしくは、肉体そのものを持っていかないといけない。なので、ゴブリンをもう少し探すことにして森を歩き回っていた。
「ふむ、ゴブリンが三体いたならば近くに巣穴があると思うのだがな」
「...そうかな、ゴブリンの生態系は調べきられてないから...って、そうか。アルディは魔王だったな」
苦笑いを浮かべながら、人類と魔王で魔人であるアルディーナの知識差を思い出すヴェスタリア。
人類は、敵であるモンスターとの戦闘は出来る限り避けている。だからこそ、未だにモンスターについては分かっていない部分も多くある。
強さに関しては、今までの冒険者たちの証言から分かったとしても、どうやって暮らして生きているのかなどはまだまだ未知の世界。ただ、アルディーナは魔王であるからこそモンスターたちの生態系を含め、詳しいのである。
「...っていうか、今更だけどさ...アルディは良いのか?」
「なにがだ?」
「スライムの時は僕が倒したけど、ゴブリンはアルディが倒しているだろう?」
「なんだ、そんなことか。自分で倒すのもそこまでなにも思わん。気にするな」
モンスターと一括りにしているから分かりにくいが、別々で見るべきなのである。例えば、ゴブリンとスライムには仲間意識は薄い。別種族であるからだ。
同じ『魔王軍』に入り、交流を深めれば情が湧いてしまい、殺すことはできなくなる。しかし、関わっていないのであれば、人と同じ感覚のようなもの。分かりやすく人にとって言うと、虫を殺すような感覚。何も感じなかったり、むしろ、邪魔だなと思う程度。
と、アルディーナはヴェスタリアに説明していた。ヴェスタリアは「へ〜」と、興味があるのかないのか分からない反応を返しながらゴブリンの巣穴を探していた。
「ヴェスティ...お前から聞いてきたのに、なぜそんなに淡白な返しなのだ...」
「いや、興味深いし聞いてて面白いけど、どっから襲われるか分からないだろ?」
「いや、まぁ...そうなのだが...」
いじいじ、といじけて唇を尖らせるアルディーナ。「さっきから、店でも今でも子どもか!」とヴェスタリアに鋭く言われさらに落ち込むアルディーナ。
そんなやり取りをしながら歩いていると、洞窟が見えてくる。
洞窟を見ながら、アルディーナが説明を始める。
ゴブリンと一言で言っても様々な生態系を築いており、洞窟内で生活している部族。藁などで使った家を使い、村のようにして暮らしてる部族。
そのようにして、別れているのだが
より高度な文明になっている部族は要注意であり、ゴブリンの中に特殊個体がいる可能性がある。
「......と、こんな感じだな。分かったか、ヴェスティ」
「...うん、分かった。けど...」
「どうした?」
「...もしも、より一層知能が高ければ、わざと洞窟に棲みつき、人を殺すゴブリンとか...」
「いや、それはない。これは『魔物』の特性なのだが、魔物は己の力を誇示したいのさ。......しかし、魔人となるとまた変わってくるがな」
その言葉に身を引き締め、洞窟を見るヴェスタリア。洞窟内にはゴブリンの生命反応が複数あり、確実に棲みついているのが分かる。
ゴブリン相手に緊張などはしない二人だが、油断も慢心もなく構えて洞窟の近くまで行き、魔法の発動を行う。
「...さっきはアルディがやったから僕がいくよ。...『ホーリーレイ』」
『ホーリーレイ』、魔族に対して絶大な効力を発揮する『勇者専用』の魔法。
両手を洞窟に向け、手のひらに魔力を集めると魔力が光り輝き、聖なる力が宿る。
洞窟内に光線が飛んでいき、一瞬にしてゴブリンの気配が無くなる。しかし、ヴェスタリアは手加減をしており、入り口から見える範囲内にゴブリンの死骸が見えていた。
「ふぅ......アルディ、行こう......ん?アルディ?」
「......私も、魔族なのだが......?」
「あ...ごめん...」
笑いながら謝るヴェスタリア。
魔王だからこそ、少し具合が悪くなるだけで済んでいるが並の魔族なら近くにいるだけで消し飛んでいた。
「...うぅむ...」
「どうしたんだよ?アルディ?」
「いや...聖なる力が満ちている洞窟に入るのに、少し抵抗が...」
「あ......」
そう言われ、ヴェスタリアは一人で洞窟内に入り、ゴブリンの一部を集めアルディーナの元へ戻ってきた。
「じゃあ、帰るか」
「うむ、そうだな」
ヴェスタリアとアルディーナは大量のモンスターの死骸を持ち、大金が入るだろうとワクワクしながら帰路に着くのであった。




