第十五話 「帰宅。心配性」
アルディーナとヴェスタリアは、アルディーナが勝手に名付けた〈マリモジュース〉を二人で分け合いながら帰っていた。
小さい割にかなりの量のジュースが出たため、満足していた二人。
ジュースが無くなり、用の無くなったマリモみたいなボールはアルディーナが森に投げ飛ばしていた。「ストライクッ!」とおじさん臭く言っているアルディーナをヴェスタリアは「おっさんくせぇ...」と思っていた。
「うーむ、遠いな。王国は」
「魔力で一気に行けば速いけど、目立つから仕方ないさ」
「分かっている。私が言っているのは距離もだが、森に行く事が多いのだから、街道を作り、馬車などを通せば良いだろう?」
「あー、確かに...」
「この国の王は、暗君なのか」
アルディーナの容赦ない言葉に苦笑いを浮かべるヴェスタリア。こんなことを言って大丈夫なのか、と思われるが王国までまだまだ遠く、周りには誰もおらず。また、魔法での盗聴などもないため、自由に喋っていた。
「私ならば、すぐにそうするがな」
「いや、でも...もしかしたら、魔物が入りにくくするためとか...」
「ふむ、逆に聞くが魔物が今私たちが歩いている道では王国まで行けぬと思うか?」
アルディーナの質問に口を〈ぎゅっ〉と閉じ、目を逸らすヴェスタリア。アルディーナはそれを見て快活に「はっはっは!」と笑いながら続きを話しはじめた。
「つまりだ、魔物とかは関係ないということ。だからこその暗君なのだ」
その言葉に納得しかけたヴェスタリアは何か否定の言葉を言おうとしていた。ヴェスタリアは別にこの国に対して愛国心がある、なんてことはないのだが
同じ人間として、庇護したいと思っていた。しかし、良い言葉が思い付かずに王国に到着。そのまま、冒険者ギルドに向かう二人。王国の出入り口の門の近くに冒険者ギルドはあるため、ギルドにはすぐに着く。
ギルドの扉を開け、入っていく二人。
その時、アンナが二人の元へと急いで走ってくる。その顔には焦りが見える。
「お二人とも、大丈夫でしたか!?」
アンナのかなり焦った表情にどうしたのか、と。二人で目を合わせるアルディーナとヴェスタリア。そして、二人でアンナの方を見ると焦っていた訳を話し出した。
「お二人が受けた、薬草集めの依頼。その薬草が生えている森にてスライムなどの魔物の目撃情報が多数上がっていましたので...」
焦りも落ち着き、アンナが冷静に話す内容はシンプルなもので魔物の目撃情報があったため二人を心配していたのだ。
「お二人がお強いのは聞いていますが、それでも...万が一と言うことがありますので、心配で...」
その言葉にヴェスタリアとアルディーナは微笑みながら返事をした。
「大丈夫だよ、アンナさん。僕たちはちゃんと強いから」
「そうだぞ、アンナ嬢。私たちは大丈夫だ」
二人が話していると、奥の方から艶かしい声が響いてくる。なんだ、と二人が声のした方を見るとフランがクルクルと回転しながらこちらに向かってきていた。
「あは〜〜ん!♡お二人とも、無事だったのね♡まぁ、二人なら大丈夫よね」
二人なら大丈夫よね、と言いながらウインクをするフラン。流石に慣れたのか悪寒が走る事はない二人だが、ヴェスタリアは苦笑いをし、アルディーナはゲンナリしていた。
「二人は戦っていないのかしらん?♡」
「いや、スライムを一体だけ倒した」
「ありがたいわ〜ん!♡スライムの被害はいつも頭を悩ませているの♡一体でも倒してくれたのなら最高よ♡」
フランの言葉に二人は苦笑いを浮かべる。人類圏に住んでいる者にとっては、スライムの情報は重要だが、転々と旅をし続けているヴェスタリアと、魔王のアルディーナにとっては、イマイチピンと来なかった。
スライムは数が多く、最も被害が出る魔物。その情報を知っていても体験しているかどうかでは理解度に差が出るのも仕方がない。
「とにかく、お二人がご無事で良かったです...」
健気な態度で、涙目なアンナ。かなりの心配性であり、ギルド内ではフランは姉御として慕われているがアンナは妹的存在として好かれていた。そんなアンナに対して、ヴェスタリアは爽やかに返答していた。
アルディーナはその横で...
「やはり、異世界...最高ッ!!」
と、アンナをドン引きさせていた。




