第十二話 「疑念と実力」
ヴェスタリアの後だ。同じような魔法を放っても良いが、それではフランにも何か言われるかもしれない。と、考え体外魔力を使った魔法の中で初歩でもある属性変化を行った風魔法を使う事にしたアルディーナ。
「......詠唱はしない良いな」
小声で言い、全力を出すならば詠唱を行い威力を底上げするのだが今回は実力を見せるだけ。更に言えば〈手加減〉をしなければならない。
そのため、程よい魔力を体内に集め掌を的に向けたアルディーナ。正直、アルディーナにとってはこの程度の魔法はポッケに手を突っ込んだまま発動させることができるのだが、〈掌を的に向けなければ発動しない〉と誤認させるために態々ポーズをとっていた。
魔法は人によって、威力を始め
一度に撃てる量、発動までの早さ、魔法自体の速度。などなどが変わってくる。
当たり前だが、大量に撃てる、一瞬で発動、目にも止まらぬ早さの魔法なんてものは〈俺は最強だぜ〉と言っている様なもの。
アルディーナはそこを理解しているため、ゆったりとのんびり魔力を掌に集め発動させていた。そんなアルディーナをフランは特に見ておらずヴェスタリアにちょっかいをかけていた。
ヴェスタリアは元来の優しさから、強く拒否することもできずに苦笑いをしていた。
このまま放っておくと、フランはヴェスタリアにキスをするのではないか。と言うほどに近付きすぎていた。
流石に距離を取ろうかとしたヴェスタリア。その時にようやくアルディーナが「打つぞ、見なくて良いのかフランよ」と言ってくれたためホッと胸を撫で下ろした。
フランはその言葉を聞き、アルディーナの方向を向く。「いつでも良いわよ♡」と、一見するとふざけている様に見えるが先程のヴェスタリアの実力を看破したのだから観察眼は一級品であると、アルディーナは気付いていたため、気を抜かずに魔法を発動させた。
アルディーナの掌からは、風となった魔力が刃のように発射され藁でできた的をバッサリと斜めに切り落とした。縦や横に切り裂くのと斜めに切り裂くのでは難易度が変わり、縦、横の場合の方がより難易度が高い。
なぜなのかと言うと、この魔法〈ウインドカッター〉と冒険者が呼ぶ初歩の魔法はモンスターに対して絶大な威力を発揮するものではないため、牽制のために使う魔法。
牽制のために使えればなんでもいいため、縦か横からなんで気にしないので誰も縦、横に撃つ方法を研究していない。
言うなれば、芸術品のようなものだ。だからこそ、斜め切りが一般的なのである。
「......あら〜ん♡綺麗なウインドカッターね、惚れ惚れしちゃうわ〜ん♡」
一瞬目を細め、言葉に詰まっていたフラン。しかしいつも通りの雰囲気に戻りアルディーナを褒めていた。アルディーナを褒めた後「もちろん、ヴェスティちゃんも凄かったわ♡」と言い「こんなに凄いなら夜の方も...」とセクハラをかましていた。
そのセクハラを断ち切るようにアルディーナが話し始めた。
「そうか、お褒めに預かり光栄だ。それで、私たちは合格か?」
「もちろんよ♡...コレが冒険者の証であるペンダントよ、無くさないでね?♡」
そう言いながら貰ったペンダントは銅色のペンダントに〈Ⅳ〉と書かれていた。
冒険者組合でのランクは
下から順に〈銅→鉄→銀→金→白銀〉となっており、その中でも更に〈Ⅳ→Ⅲ→Ⅱ→Ⅰ〉となり細かく分けると〈20〉段階で分かれていた。
「それじゃあ、ありがたく」
「ありがとね、フランさん」
「えぇ、待ってるわ、いつでもいらっしゃい♡」
フランの言葉を背に受けながら中庭を出て行ったヴェスタリアもアルディーナ。
中庭に残ったフランは二人が壊した藁の的の片付けをしていた。
「とんでもない新人が現れたわね...隠しているようだけど、ヴェスティちゃんは完璧な魔力操作で的に穴を開ける。...いや〜ん♡今思い返すだけで興奮しちゃうわ♡」
片付けをしながらクネクネと、何やら気色の悪い動きをしているフラン。しかし、アルディーナの方の的に近付いた時には真剣な表情になっていた。
「ただ...アルディちゃんは...戦場に長らくいたのかしら...こんなに綺麗な切断面見たことないわ...これじゃあ、まるで殺すためだけの魔法だわ...」
悲しそうな表情をしながら、二人が出て行った扉を見ていた。




