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九話 タイミング

俺はライに連れられ、神社で行われる祭りに来ていた。

ライは祭りを楽しんでいるようだったが、俺は素直に楽しむことができなかった。

その理由は、隣にいるアイツのせいだった。


「……」


「……たこ焼きあるぜ。」


「…そうですね。」


「……」


微妙な距離感を保ちつつ、俺たちは歩く。

ライと春海は俺たちを置いて、二人で楽しんでいる。

それを見ながら、俺たちはずっと顔を合わせずにいた。


「…あのさ。」


先に口を開いたのは、アイツだった。


「…なんだよ。」


俺は素っ気なく反応を返した。

アイツはそれでも話した。


「…僕は後悔してる、んだと思う。」


「後悔?」


その言葉に反応して、俺はアイツを見た。


「っ」


アイツは俺のことをしっかりと見ていて、思わず顔をそらしてしまった。


「…正直、僕はまだ、なんで君が怒ったのか分からないんだよね。

…でも、君がいない生活をして、少し物足りないと思ったんだ。」


恥ずかしげもなく、ただ素直に気持ちを伝えるアイツは、俺なんかよりも男らしく思えた。

俺は、アイツの目を見ないように、顔を見る。


「…僕は、あの時助けてくれたこと、今でも感謝してるし、それからいっぱい話しかけてくれたこと、本当に嬉しかったんだと、思う。」


「だから」と言い、アイツはその言葉を発そうとした。


その時、運が悪いことに雨が突然降り始めた。

皆が建物内へと移動を始める中、俺と秋也は、離れていたライと春海を探した。


「こっちにはいなかった。そっちはどうだ?」


「こっちにもいないよ。

…いったいどこに行ったの、春海。」


アイツは相変わらず春海のことしか見ていない。

俺は、何かに引っかかりを覚えつつ、ライのことに集中することにした。


ーーー

秋也さんたちとはぐれた私とライは、少し大きな木の下で雨宿りをしていた。


「…お兄ちゃん、仲直りできたかな?」


ライが少し心配そうにそう言った。

私は彼女の手を取り、「大丈夫ですよ」と声をかけた。

彼女は「そうだよね」と少しだけ安心したようにそう言うと、力が抜けたように横に倒れた。


「…ライ?」


少し心配になり、私は呼びかけた。

しかし、彼女からの応答はなかった。


「…ライ?……っ!?」


彼女に触れてみると、熱を発していることに気づいた。

滝のように汗をかき、呼吸が荒くなっていた。


「ライ!しっかりしてライ!!」


呼びかけに弱々しく反応を見せるが、徐々にそれすらも遅くなっている。

私は辺りを見渡し、助けの見込みがないことを理解する

焦る気持ちを落ち着かせ、私は今できることを…


ーーー

雷が鳴り始めても、二人は避難所へ来ていなかった。

僕たちは大人に止められ、捜索は祭り運営者たちが引き継いでくれたが、安心はできていない。


「…ライちゃん、春海…」


スマホで何度も電話をかけてみるが、応答はない。

メールを送っても、既読すらつかない状況。

誠一はずっとウロウロと、落ち着かない様子を見せている。

捜索に出ていた大人たちが戻ってきた時、僕と誠一は、そこに二人の姿がないことにすぐ気づいた。


「クソッ…、こんな祭りになんかこなきゃよかった…」


誠一は頭を抱え、その場でしゃがみ込んでしまった。


「……。」


こういう時、僕は何か言うべきだったのだろうか…?

しかしこのとき、僕の頭には誠一の事は一切入っていなかった。

僕は大人たちが見ていない窓を見つけ、無意識にそちらへ向かっていた。


「君、窓は危ないから離れなさい。」


一人の大人が僕に気づくと、注意をしながら歩いてきた。

僕は手に持っていた水を、大人に投げつけた。

大人は突然のことで怯み、その隙を見た僕は、窓を開けると外へ飛び出した。


「戻ってきなさい!!」


大人たちの制止が聞こえたが、僕は構わず走った。

そして、再び神社まで戻ると、できるだけの大きな声で名前を呼んだ。

その呼びかけに応えるものはなく、この付近にはいないとすぐに分かった。


「……ん?」


ボッーと雨を眺めていると、草むらに道らしきものがあることに気づいた。

その道はほとんどが草に覆われて、道と呼べるような状態ではなかったが、かすかな違和感を感じた。

僕はその違和感を解消するため、その道に近づいた。


「っ!!」


どうやら僕の感はちゃんと働いているらしい。

近づいたその道の道中に、春海のスマホが落ちていたのだ。

それを拾い上げ、僕はその道を走って進んだ。


雨のせいで滑りやすくなっていたが、そんな事も構わず、僕は全力で走った。

やがて開けた場所へ出た僕は、一つ大きな木を見つけることができた。

その木に近づくと、横たわるライの姿を見つけた。


「ライちゃん!」


僕は彼女に近づき、脈を測る。少し脈が遅いように感じた僕は、彼女を抱え上げると、神社まで戻ろうと考えた。

しかし、それをライに止められた。


「ライちゃん!もう大丈夫だよ!すぐにみんなの所に行こう!」


「…秋さん…、春海…、春海があっちに…」


ライは力無く指差すと、そう言った。

指された方へと目をやると、神社への道とはまた別の道があった。

僕は嫌な予感を感じたが、ライを置いていくわけには行かないと自身を制止した。

心配と不安が僕の足を動かそうとしない。

そんな僕を見たライは、「行ってあげて」と言ってくれた。

僕はしばし考え込んだ末、自身が持っていた荷物をライに託し、春海の入った道へと向かうのだった。


ーーー

俺は見てしまった。

アイツが起こした混乱を利用し、俺もライを探すために走り回っていた。

偶然見つけた道は、俺に希望を見せた。

急いでその道を抜けると、大きな木と、ライを置いて一人反対方向へと走っていくアイツを見た。


「…はっ?」


脳が理解を遅れ、すぐに意識をライに戻し、ライのもとへと向かった。


「ライ!ライしっかりしろ!」


返事をしないライを抱き上げ、俺は急いで避難所へと向かった。


避難所に着くと救急にライを頼み、無事を祈った。

雨は約五時間ほど続き、ようやく雨がやみ始めた頃に、春海を背負ったアイツが姿を見せた。


俺はアイツを見た瞬間、怒りが込み上がり、春海を救急に預けたアイツに殴りかかった。


「テメェ!!ライを見捨てて自分の女のほうが大事か!?」


俺は怒りに任せてアイツを殴った。

アイツはすぐに俺を蹴飛ばすと、何か言い訳をしようとしていた。

だが俺は、そんな言い訳なんて聞きたく気などなかった。


「ライに何かあったら、お前のせいだからな!!

このクズ野郎!」


「……誠一…」


このとき、俺は必死だった。

俺にとってライは、唯一の家族だったから。

だから俺は、アイツが許せなかった。

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