八話 仲直りの手立て
喫茶店で喧嘩をして、早くも三ヶ月が過ぎようとしていた。
俺はあの日以降、アイツとは一切の連絡も取らず、学校でも顔すら合わせないようにしている。
「お兄ちゃんまだ喧嘩してるの?」
一人で弁当を食べていると、妹である、ライが心配そうに話しかけてきた。
俺はそっぽを向いて、答えなかった。
ライは小さくため息をつくと、俺の隣に座って弁当を食べ始めた。
「…お前もアイツらと食べたいんだろ?
だったらそっち行けよ…。」
野菜を口に詰め込みながら、素っ気なくそう言った。
「その態度が行けないんじゃないの?
…まるで昔のお兄ちゃんだよ。」
「…余計なお世話だよ。」
ライの言う通りだ。
今の俺は、昔の引きこもり時代と同じ態度になっていた。
だからあの日、俺はベンチで座っていたあの人を頼ったのだ。
「……お礼、してねぇな…」
俺は雲一つない空を見上げながら、そう呟いた。
ーーー
「誠一さんとは、まだ仲直りしてないんですか?」
突然そう聞かれた僕は、無意識に彼女である春海から目線をそらしてしまった。
「…もう、仲直りしないんですか?」
「……誠一次第かな…。」
心配そうに聞いてくる彼女に、僕はそう伝えたが、実際は一刻も早く仲直りしたいと思っていた。
いまだになぜ誠一が切れたのかは理解できていないが、それでも、僕にとって唯一と言っていいほどに、親しくなった人だったから。
「後悔、してるんですよね?」
「……後悔…、してない、とは言えないね…。」
春海は優しく手を握ってくれると、「大丈夫ですよ」と優しく励ましてくれた。
本当に善意からやっているんだと、春海の目を見つめながら、そう思った。
「ならこうしましょ?
私も、一緒に謝ります。誠一さんに、自分の気持ちをまっすぐ伝えるんです!」
その提案は、正直ありがたいものだったが、「自分の気持ち」という言葉に、少し困惑した。
「じ、自分の気持ち?」
「はい。
今感じてることでもいいんです。
大切なのは、相手にまっすぐ伝えるということなんですから!」
眩しい笑顔でそう言ってくれたおかげで、少しだけ気持ちが楽になった。
しかし、それでもまだ、僕の心の中はモヤがかかっているままだった。
ーーー
タイミングというのは、最も重要なものだ。
タイミングが合えば、全て上手くいく。
だが、タイミングが合わなければ、望まないことが起きる。
この世は全て、タイミングで出来ていると言ってもいいだろう。
そして、そんなタイミングを全て逃したのは、僕らだった。




