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七話 喧嘩

僕らは無事に三年に上がり、春海たちも二年生になった。


「ギリギリ三年になれたぜ〜!

しかも、今年もお前と同じクラスとわな!」


「そうだね。僕は運が良かったよ。」


「こっちこそだぜ、三年もよろしくな、秋!」


嬉しそうにそう言った誠一は、友達に呼ばれ、そちらへと向かった。


彼の背中を見ながら、僕は、学校へ来ることが楽しみになっていることに気づいた。


ーーー

一年の頃は孤立した存在で、誰も僕には近づこうとするものはいなかった。


いや、僕自身がそれを拒んでいた。


別に人と関わることが嫌いというわけではない。ただ、その頃は誰も信頼できなくなっていたせいで、周りとは距離を取っていたのだ。


そんな時に出会ったのが、安田 誠一だった。


彼は覚えていないと思うが、あの図書室で会う前に一度会っていたのだ。


それは入学式の日だった。


この時期から人間不信は悪化しており、僕は入学式をサボろうと、公園で本を読んでいる所に現れた。


「何してんの?入学式始まっちまうぞ?」


不思議そうに僕のことを見る誠一は、とてもまっすぐとして目をしていた。


「…何でもいいだろう…。

君こそ、入学式に遅れるんじゃない?」


「いやぁ~、めっちゃ寝てたんだよなぁ!」


恥を知らないのか、大声でそう答えた。


僕はヤバい奴に絡まれたと思い、鞄を持って、図書館にでも行こうと考えた。


しかし、なぜか彼はついてきて、ずっと何か話してくる。


少し面倒だったが、僕は仕方なく学校に向かった。


学校に着けば、勝手にどっかへ行ってくれると思ったからだ。


案の定彼は、僕の目論見どうり式へ参加しに行った。


僕は引き返そうとしたが、先生に捕まり、強制的に参加させられた。

この時は、絶対に彼とは関わりたくないと思っていた。

…本当に…。


ーーー

「なぁ秋、俺は何でモテないんだ…?」


昔のことを振り返っていると、いつの間にか昼食の時間になっており、隣でご飯を食べていた誠一に、突然相談を持ちかけられた。


「…そんな事ないでしょう。」


「それがそんな事あんのよ。」


残念そうに言う彼は、僕のことをじっと見つめてきた。


「なに?」


真剣な眼差してみてくる彼に、僕は狼狽えつつ、質問をした。


彼はしばし見つめた後、口を開いた。


「お前、カッコいいのに勿体ねぇよなぁ。」


「……はい?」


「いやだって、この髪をなんとかすりゃモッテモテだろ。」


話が180°ほど変わったことに軽く困惑しながら、僕は顔を背けた。


「別にモテたくない。

それに、僕の良さは特定の人に知ってもらえてればいいから、このままでいいんだよ。」


「特定の人ねぇ。いいこと言うじゃん!」


「…そうかな?」


相変わらず変な人だなと思いつつ、僕は弁当を食べすすめる。


そこへ、少し遅れて春海たちがやって来て、ちょっとしたことで盛り上がった。


ーーー

時間というのはあっという間に過ぎるもので、いつの間にか僕と春海は付き合い、春から夏へと季節も移り変わっていた。


「お前らが付き合うのは分かってたけどさ…。

最近俺蚊帳の外になってねぇか?」


久しぶりに会話した誠一は、少しだけ不満を口に出した。


「そうかい?

僕は今までと同じように関わっているつもりなんだけど…。

それに、今日だって、呼び出しに応じたじゃないか。」


「お前…、彼女がそんなに可愛いかよ…。」


「春海はいつでも可愛いよ。」


「自慢は良いんだよ!

…ただ、俺達の友情は、たった一つの恋愛ごときで崩れちまうなんて思ってなかったんだよ〜…」


誠一はアイスコーヒーを飲みながら、小さくつぶやいていた。


「…友情、か〜。

僕らの仲ってそんなに友情あったっけ?」


何も考えずに呟いたその言葉に、誠一は「まじか」と言い、うなだれていた。


「実際、友人というわけでもなく、ただの話し相手だろう?」


「……お前さぁ、それマジで言ってんなら、終わってるぜ性格。」


その言い方は、少し怒りが見え隠れするようなもので、僕も思わず言い返しそうになってしまった。


僕はぐっと我慢して、適当に謝罪をした。


誠一は不服そうだったが、彼もそれを受け入れた。


「ところで、僕を読んだのはいったいどういう理由なんだい?」


「…あぁ、それな…。

まぁ最初はどっか遊びに行ってもいいかなって思ってたけど…、気分ワリィから今日はもういいよ。」


「…なにそれ、ここまで来るのにも結構体力持ってかれたんだけど。」


険悪な雰囲気になってくのを感じながらも、僕はずっと隠していた怒りを表に出していた。


「……」


気付けば、僕と誠一の間には沈黙が流れていた。


「…悪い、ちょっと熱くなっちまった…。

今日帰るわ…。」


誠一は財布から千円札を取り出し、テーブルに置くと、店を出ていった。


取り残された僕は、目の前にあるアイスコーヒーを見ながら、少しだけ後悔をしていた。


彼がなぜ怒ったのかもわかっていなかった僕は、心の中を、モヤで覆い包まれる感覚になったのだった。

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