五話 ファッションセンス
あの日助けた女子と、再び会うことになった僕は、ファッションセンターへ来ていた。
「…なんでお前の服を俺が決めなきゃならんのだ…」
もちろん一人でこんな所へ来ることはできない為、誠一にも一緒に来てもらった。それと、彼の妹にも。
「まさかお兄ちゃんのお友達だったなんてねぇ。どんな偶然なのか…。」
「そうだね。まさかだったよ。」
「あれ、お前ら知り合いだったのか?」
誠一が困惑するのもそのはず。僕と妹は、あの日女子を助けようとした二人組なのだから。
「…そんな事あったのかよ…。俺を呼べばよかったのに…。」
少し羨ましそうに誠一がそう言った。
妹は適当に愛想笑いをして、僕の方へ向き直った。
「改めて言うね。あの日は、助けてくれてありがとう、秋さん。」
あの時とはまったく雰囲気が違い、こっちが素なのだとすぐに分かった。
適当な会話をしながら、さっそく服を選ぶことになった。
しかし、始まってすぐに分かったことがあった。誠一は、僕が思っていた以上にファッションセンスが低い。
持ってくるもの全てが、中学生並みのものばかりで、あまりにも幼稚なものばかりだった。
一方、安田 律はというと、素晴らしいセンスだった。
持ってくるものすべて、僕によく似合うものばかりで、僕らしさを考えながら揃えてくれていることがよくわかった。
この際、毎度兄妹の軽い喧嘩に巻き込まれたのは、また別の話。
だいたい三時間ほどが経ち、ようやく決まった服は、カジュアルスタイルでまとまった。
「うん。普通だね。」
「かっこいいけど…、なんか普通だよなぁ…?」
この兄妹は本当にデリカシーが無い。
僕は少しイラッとしながら、長い髪をいじった。
それを見た二人は、声を合わせて「それだぁ!!」と叫んだ。
…四日後
待ち合わせ場所に一時間早く着いた僕は、僕よりも早く着いていたその子に困惑していた。
僕は一度深呼吸をして、意を決して頭を下げながら、彼女の近づいた。
彼女は僕に気づくと、嬉しそうに笑い、こちらには手を振ってきた。
「…すみません、待たせちゃいました…。」
一体いつからいたのか分からないが、こうして待たせてしまったことは事実であり、少し申し訳なく思いながらそういった。
「あ!いえ、実は私も、今来たところなんです!」
「…ほ、本当です…?」
「…ほ、本当…、ですよ…。」
恥ずかしそうにそう言いながら、帽子、キャノチエを深くかぶり顔を隠そうとした。
その行動が、僕は無性に可愛く見えて、思わず笑ってしまった。
「な、なんで笑うんですかぁ…!」
顔を赤らめながら、彼女は恥ずかしそうに怒った。
しかし、その怒った顔すらも愛おしく、笑うことを我慢できなかった。
「ご、ごめんなさい…。でも、可愛くて…!」
つい口を滑らせてしまい、僕は咄嗟に口を手で覆った。
恐る恐る彼女の顔を見る。
完全に赤面して、頬を膨らませてこちらを見ていた。
「…私、怒ってます…!」
怒っても可愛いのは反則だ。と思いながら、その日は謝罪から始まったのだった。




