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時計職人

作者:コバヤシ
人びとの表情が消えた町で、ひとりの老いた時計職人が黙々と働いていた。
彼のつくる時計は正確無比で、町じゅうの家々や工場、学校の時間までもが、彼の時計に従っていた。

けれどその町には、どこか不思議な静けさがあった。
誰も笑わず、泣かず、怒りもせず、まるで感情というものが最初から存在しなかったかのようだった。

ある日、旅の詩人がその町を訪れる。
町の人びとの無表情さに驚いた詩人は、やがて時計職人の店にたどり着き、問いかける。

「あなたは、かつて感情を持っていたのではありませんか?」

時計職人はその問いを否定するが、詩人が見せた一つの止まった懐中時計が、彼の心の奥に眠っていた記憶に火をともす。

それは、かつて職人が手放した“感情”の象徴だった。
合理と正確さのために封じたもの、それが、再び時を刻みはじめたのだ。

やがて、職人の内部でもう一つの時計が、静かに動きはじめる。
それは機械ではなく、人間としての「心」の時を告げるものだった。
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