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4.新たな仲間

 4.新たな仲間



「レスフィナが、あの南にある実験区域都市を壊滅させたあの遥か闇なる世界の黒神子、英雄殺しのレスフィナがこの北の区域都市に来ているのか。情報の混乱や逃げてきた民間人達のあやふやな証言だけでは容量が掴めなかったがどうやら本当に一大事のようだ。分かった迫り来るレスフィナを迎え撃つ為に今ここにいる全ての兵士達を現場に向かわせよう。それと民間人達の保護も同時にやるぞ。今このCエリアには観光客や仕事に準じる関係者達が約三千人ほどいる。そして俺達の兵士の数はざっと百人くらいだ。この戦力で黒神子レスフィナの脅威から民間人達を守らないとならない。だからここからはCエリアの区画の警備を任されている我らの指示に従って貰うぞ」


 ここは、Cエリアを守る正門から約二キロほど離れた兵士達が駐在する施設の拠点、その建屋の中に今俺達四人はいる。


 俺達の話を聞いた所長らしき中年の男性は北の都市区画を守る防衛システムを突破し内部への侵入を容易く実現させたレスフィナの圧倒的な力に酷く驚いていたが、Cエリアを守る為に民間人の数と今戦える兵士達の人数を惜しみなく伝える。


 アサルトレーザーライフルを所持している事で兵士の一人だと勘違いされた俺は、ヘルミナ、一ノ瀬、二ノ宮の三人と共にその場で話を聞くと素直に上の命令に従う。だがレスフィナに戦いを挑むという意見には猛反対の俺達は必死にCエリアの所長の早計な判断を止めたが意見は却下され、Cエリアを守る百人中、約九十人の兵士達がレスフィナを倒すべくCエリアの端にある第二防衛扉の正門の前に派遣される。


 民間人達を守る、残り十人の兵士達と共にDエリアへの誘導係りを命じられた俺達四人はこれからレスフィナを迎え撃つ事になる兵士達の安否を本気で心配するが、どこか楽観的に考えているのか、今はまだCエリアを守る兵士達の表情に恐怖や不安はないようだ。

 速やかに行動を開始する約九十人もの兵士達の動向を目にしながら俺は隣にいる一ノ瀬の腕を静かにつつく。


「一ノ瀬さん、Cエリアの兵士達には黒神子レスフィナの危険性を話す事ができたんですから、ここからは民間人達と共にいち早くDエリアに向かう事に専念しましょう」


「そうだな、Cエリアを守る兵士達の身は心配だが、俺達は民間人達と共にDエリアを目指すか。取り敢えずは大型の移動バスをあるだけチャーターしよう。民間人達三千人の速やかな移動はハッキリ言って簡単ではないが、区画内の中に緊急用の放送を流せばできるはずだ」


「その前に俺達にはレスフィナの足を止める事のできる、より強力な武器が必要です。武器が保管されてある武器庫に行きましょう」


「レスフィナの歩みを止める事のできる、より強力な武器か。だがその大半は先程レスフィナの元に向かったCエリアを守る兵士達が根こそぎ持っていったんじゃないのか。もしそうなら俺たちが武器庫に行ってももう使える武器は殆ど残ってはいないと思うんだが」


 あきらめ気味に話す一ノ瀬の言葉に、話を聞いていたヘルミナが自分の意見を述べる。


「私はそうは思いません。ここの所長もそうですが、どうもCエリアにいる兵士達は皆、黒神子レスフィナの強さを甘く見ている節があります。私達の必死な警告と助言を聞いたにも関わらず、持ち出した武装は通常武器のアサルトレーザーライフルですし、ハッキリ言って死ににいくような物です。であるならば恐らくはまだ使える強力な武器が幾つかはある物と推察されます」


「まあここで考えていても仕方がないか。取り敢えずは武器庫に向かうぞ。そこで戦える武装を調べるんだ」


 武器庫にいく事を決断した一ノ瀬に従う俺、ヘルミナ、二ノ宮の四人は速やかに近くにある武器庫に向かうがその移動の途中で思わぬ人物たちと出くわす。すれ違ったのは俺と同じくこの修学旅行に来ている三人の学生の生徒達だ。皆クラスは違えど顔を知っている俺は思わず呼び止めると、無事である事を喜びながらも学生三人がなぜこの兵舎内にいるのかを問い質す。


赤目(あかめ)白鳥(しらとり)黒沢(くろさわ)じゃないか。よく無事だったな。もしかしてお前たちもこのCエリアに逃げて来たのか」


 顔を知ってはいるが高校内では殆ど話した事のない三人に向けて俺は限りなくフレンドリーに接するが、当の三人はまるで部外者を見るような感じでめんどくさそうに話す。


「名前は知らないが、確かお前はB組の生徒だよな。B組の生徒は運悪く皆死亡したと聞いていたがまさか生き残りがいたとは正直驚いてるよ。よくあの化け物と相対したにも関わらず生き残る事ができたな」


「運良く拾った命だ、まあ精々これ以上災難に遭わないようにするんだな」


「ちょっと辛辣になり過ぎよ、気が立ってナーバスになっているのは分かるけど、何もB組の生徒に当たる事はないじゃない。まずは彼にも修学旅行生達が集まる避難先を教えましょうよ」


 ぶっきらぼうに話す赤目と黒沢という男子学生とは対照的に明るい笑顔を見せるその女子生徒は軽く会釈をすると、兵士でもある一ノ瀬と二ノ宮に向けて挨拶をする。


「私の名前は白鳥英子です。高校内では副会長を務めています。私の父はこの都市の研究所に勤めている博士号を持つ有名な研究員でその関係で私はここを訪れています。そしてその隣にいるのが……」


「俺は生徒会長を務める赤目零時だ。俺はこのCエリアに逃げ延びた他のクラスの生徒達をまとめ上げて待機をさせているんだが、その後の保護と助けはいつ来るのかを聞く為にここを訪れた次第だ。引率の先生たちとはぐれてしまった今、軍の指示を仰がないと俺達もどう行動していいのか分からないからな」


「俺は会計を務める書記の黒沢竜也です。未曾有に危機に奮闘するそんな会長の助けになればと思い、ついて来ました。どうぞお見知りおきを」


 三人の自己紹介に一ノ瀬と二ノ宮が礼儀正しく応えていると、ヘルミナを見た白鳥英子が物珍しそうに彼女の瞳を見つめる。


「あなた、うちのお父さんのチームが作り上げたファテマシリーズの一つ、ガイアエレクトロン社製の人工生命体ね。製造番号は8116番型か。ならこの近くにある研究所のある施設に行ったら、もしかしたら攻撃用の拡張パックをダウンロードできるかもね。まだ研究段階で色々と問題点は多いけど、背に腹は代えられないわ。幸い私はこの異世界に来る前に父から予備の研究所の内部に入れるカードキーを内密に借りているから、施設内に入ることができるわ。そこにはまだ実験段階の様々な運用予定の兵器が収納されているから、地球に帰還ができるEエリアに向かう助けくらいにはなるはずよ」


「つまり、武器庫にではなく、白鳥さんの父が設計し作り納めている実験段階の強力な兵器の数々を持ち出す為に俺達に協力しろという事か」


「そういう事よ。本当はこの兵舎にいる所長にEエリアに向かう移動手段の手配を頼むつもりだったけど、なんだか忙しそうだし、取り合ってもくれなかったからね。だから予定を変更して私の父が勤めている研究所にあなた達を案内する事に今決めたの。ガイアエレクトロン社製の人工生命体でもあるファテマシリーズの機械人形がいれば、この子に新たな強大な能力を付与する事が可能よ。その力があればもしかしたら、今現在このCエリアに迫りつつある、あの災厄をもたらす黒神子レスフィナにも対抗できるかも知れない」


「ただの観光ガイド用に作られた人工生命体のヘルミナにその拡張パックとやらの新たな機能をダウンロードすれば、ヘルミナはただの観光用のガイドから新たな能力と力を宿した生体兵器に生まれ変わるという事か」


「まあその認識で概ね間違いはないわ。だからファテマシリーズの機械人形を従えているあなた達を研究所に招待するの。実は私達の各クラスにもガイアエレクトロン社製の人工生命体のガイドはいるけど、どれも拡張パックが装備できるファテマシリーズの機械人形じゃなかったわ。何かのミスなのか、なぜ拡張パックをダウンロードができるファテマシリーズの機械人形がまぎれていたかは分からないけど、その機械人形は恐らくは三年B組の生徒を守るように命令を設定されているはずだから、今の彼女は津田博次くん、あなたの命令しか聞かないはず、だからあなた達を連れて行くの。今の段階では本社の上層部に連絡する事もできないし、命令を書き換える事もできないからね」


「そうか、だから一緒に来てくれという事か。でも当のヘルミナの意見も聞かないとな。頭や体の中を勝手にいじられて、人体兵器にされてしまうのは、ヘルミナ自身だからな」


 緊急事態とはいえ、人間の都合でいいように使われるヘルミナの境遇になんだかやるせない思いを募らせる俺はヘルミナの意思を確認するべく彼女の意見を尊重する。


「ヘルミナ、お前はそれでいいのか。もし嫌ならこの申し出は断るが」


 限りなく人ではないが、なぜかヘルミナの事を心配する津田博次の優しさに応えるかのようにヘルミナは気遣う笑顔を向ける。


「私の事は心配いりません、私はただあなたを無事に目的地でもある地球に無事に帰還させるように最善を尽くすだけです。その為に力が必要なら、私は喜んでその拡張パックとやらの追加装備を受け入れます。人間に尽くし、安らぎを与え、人々の笑顔を守る。そう人々の安全と生命を守る事が私が作り出された存在意義なのですから」


「人間を守る為か。ファテマシリーズだったか。その言葉の通り、まるで女神だな」


 力強く言うヘルミナの言葉に感銘を受けた俺はこの美しい少女のような機械人形の言葉や行動に信頼と好感を抱いていく。そうまるで清廉潔白な美しい者に恋焦がれる初恋のように。

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