目覚めの瞬間
レンが15歳になったその日、世界が一変した。少年の平凡だった日常が、奇妙な出来事によって急速に崩れ去ろうとしていた。
彼が住む街は、科学と魔法が混ざり合った未来都市「リュミエール・シティ」。街並みには最新技術による自動運転の車や高層ビルが並び、空にはホログラム広告が浮かんでいる。だが、この世界にはそれ以上に異質なものが存在していた。それは、魔法。魔法は、科学技術と並んで、世界の一部となって久しかった。しかし、魔法が使えるのは基本的に女性のみというのが通説であり、男性が魔法を使うことなど決してなかった。
レンは普通の少年だった。勉強もそこそこ、運動も人並み程度。しかし、どこか自分に欠けているものを感じることがあった。友人たちと笑い合う日々も、どこか満たされない。だが、それが何かはわからなかった。
突然の異変
その日は、学校が終わり、自宅の部屋でいつものように勉強をしていた時だった。突然、レンの体に異変が起きた。胸の奥が熱くなり、次第にその熱が全身に広がっていく。
「なんだ…？これ…」
レンは思わず立ち上がったが、体がまるで自分のものではないかのように震えていた。そして、目の前に何かが見えた。透明な光の粒子が宙に浮かび上がり、それが一つに集まって彼の手に向かって渦を巻いていく。
「これは…？」
驚きと恐怖が交錯する中で、レンの手のひらから突然、青白い光が放たれた。その光はまるで生命を持っているかのように部屋中を照らし、そしてその瞬間、部屋の中の物がふわりと浮き上がった。
「な、なんだよこれ…！」
レンは息を切らしながらも、ただ驚くしかなかった。自分が、今、まさに魔法を使っているのだという現実に、彼は戸惑い、信じることができなかった。
不意に訪れた運命
翌日、レンの元に一本の手紙が届いた。差出人は、彼が聞いたこともない名前だったが、手紙にはこう書かれていた。
「司馬レン殿、貴殿の魔力覚醒を確認した。我々は貴殿をエルザ・アカデミア高等部に招待する。魔法使いとしての素質を、ここで開花させてほしい」
エルザ・アカデミア──それは、国内でも屈指の魔法学校だった。特に高等部は、魔法使いとしての実践的な訓練が行われる場所であり、通常、入学するのは女性ばかり。レンは困惑したが、すぐにあの不思議な現象が頭をよぎった。
「俺が…魔法使い？」
自分が魔法を使えるという事実に戸惑いながらも、彼の心の中には奇妙な期待感が芽生えていた。これまでの退屈な日常が変わるかもしれない。いや、確実に変わるだろう。レンは、手紙に書かれた案内に従い、魔法学校への道を進むことにした。
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