君と歩いた坂道
よくあるテンプレート展開です。
(春)
買い物の帰り道、君と手を繋ぎながら坂道を歩いていた。
「疲れた。しんどい・・・」
君と結婚してから、一緒に歩いていると、いつも家の前の最後の坂道に差し掛かるとよく言われる言葉がある。途中が平坦な道なので、余計辛いらしい。
僕は、君の後ろにまわって、腰を押して君を補助してあげる。
「了解、後ろから押すよ」
「やったー♪︎」
電気自転車の補助パワーのようなもので、以外と効果あるため、あの言葉を発せられたら、押してあげている。ただ、君の負荷が僕に代わるだけなので、辛いのは僕になる。まぁ、そこは惚れた弱みだね。君の重さを感じながら、家の前に着いて、最後は手を繋いで一緒に家に入るのがいつもことだ。
いつも押しているので、たまには押してほしいと提案してみた。
「今度は、僕を押してくれる?」
「おじいちゃんになったらね」
「そのときは君もおばちゃんだよ?」
「うん!」
どうやら、やらないと言いたいらしいな・・・・
(夏)
日差しは強いが、買い物は必要なのでいつも通り、一緒に歩いていた。
「疲れた。しんどい」
「後ろから押すよ」
「いや、大丈夫」
暑いので、服が汗に濡れているのがわかるため、恥ずかしいようだ。ただ、すこし歩いたら
「やっぱり、お願い」
「了解」
服は汗で濡れていたが、好きな人の汗なので気にならない。ただ、日を増すごとに少しずつ君が重くなっている感じする。僕も太ってきたので、お互い幸せ太りかな?
検査したら、本当に幸せ太りだった。その幸せは、子供が授かったことだ。
ちなみに、僕は単純に太ったようだ・・・
(秋)
お腹が大きくなっても、買い物は必要なのでいつも通り歩いている。
「疲れた、しどい」
「了解、押すよ」
「ありがとう♪︎」
君と赤ちゃんの重さを感じながら、押してあげると、辛さが幸せになるものだ。ただ、心配なので、
「二人の場合、そろそろ車で買い物行かない?いくら押すとはいえ、妊婦には負荷大きいよ」
「そうだけど、少しでも運動したいの!」
「妊婦とは言え、運動不足はダメなんだよ」
「ただ、この前事故しそうになったし、心配だよ」
「大丈夫だよ。気をつけて歩いてるから」
「事故にあったら、どうするの?」
「そのときは、赤ちゃんが無事ならいいかな!」
「まぁ、了解」
その選択するのは、僕なんだけどな・・・・
(冬)
仕事中、携帯電話が鳴った。君が事故にあった知らせだ。病院に駆けつけ、意識を失っている君の横で、お医者さんから言われた・・・
「申し訳ありませんが、かなり危篤の状態です」
「早めに決断してください」
「はい・・・・」
君か赤ちゃんかを選べと言われた。本当になるとは思わないかった。ただ、僕は君を選ぶよ。子供はいなくとも君といれる方がいいからね。君を選択することを決めたら、君が朦朧としながら目を覚ました。
「・・・・!」
「あ・・・な・・・た・・・・」
「大丈夫か!?どこか痛くないのか?先生呼んでくるな!」
「あ・・・か・・・・ち・・・・は?」
「赤ちゃんか?・・・・無事だよ?」
「よ・・・か・・・・・」
安心したためか、意識がなくなり、脈拍も減ったため、ピーと鳴った。
お医者さんが急いで来た。そして、どちらかを選択するか聞かれた。
僕は君と最後の会話できたが、赤ちゃんとは会話していないことに気づいた。君の身体をいつも押してたけど、心はいつも君が押してくれたね。
だから、僕も選択するよ。
「・・・・でお願いします」
(また春)
買い物の帰り道、君の代わりに娘と坂道を歩いている。
「はぁ・・・はぁ・・・・」
君とは違い、娘はすやすやとカート内で寝ており、体重は軽い。ただ、君がかけた命と思うと、実際の体重以上の重さを感じるよ。
この子は、これから君と同じぐらい大きくなって、この坂道を一緒に歩いたり、歩かないようになるだろう。ただ、約束したようにこの子が成長して、君が天国で僕を押してくる年齢まで頑張って歩き続けるよ。
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