ルシルとウィリアムの話
初めてリリアンを見たとき、彼女は愛された子だと思った。
友達に囲まれて楽しそうに笑い、取り合いをされて困ったように笑っていた。母親とは血が繋がっていないと聞いていたが、家族全員に愛されて彼女は本当に幸せそうに見えた。
その姿がお嬢様に似ているような気がした。
自分は剣を一人で振るい、友達がいなかった。彼女はそんな自分に話しかけてくれ、笑いかけてくれて、優しくしてくれて……少しずつ彼女のことが好きになっていった。
彼女の存在が大きくなってきたころ、彼女は姿を消した。どこに行ったのか、彼女の両親は口を開かなかった。そのとき、なんとなく彼女は神のもとへ行ったのだと思った。
突然現れた御使いはリリアンのことを知っていた。彼女に会える。これは奇跡だと思った。
久しぶりに会ったリリアンは少し消極的になっていたけれど、優しくて、温かくて……笑顔をくれる人だった。
彼女はお嬢様に似てなんかいなかった。
とても大切で特別な……唯一の存在。
「俺は……リリーの特別になりたい。それで、彼女の助けになりたい」
リリアンが教会に行くことになり、学園に来なくなった。そんなある日、ウィリアムがそう零した。彼の表情は真剣で、彼女のために何かしたいと必死に考えていた。
いつの間にか変わった呼び名にルシルは目を細める。
彼がリリアンに特別な感情を抱いているのは知っていた。学園に転入してくる前から、彼はいつもリリアンのために行動していた。そうでなければ、自分はこの学園に入ることはできなかっただろう。
面倒見が良くて、たとえ損な役回りだったとしても、相手のことを考えて行動ができる。ウィリアムはそういう人だった。……そういう人だから、リリアンを託すことができる。
「そう。あなたなら、きっとなれるわ」
最後の思い出作りのつもりだった。死ぬ間際には、リリアンたちから離れて、一人でこの世に別れを告げるつもりだった。だけど、この命に使い道があるのなら……
「でも、そう思っているのはあなただけではないわ。リリーを助けるのは私の役目よ!」
そう張り合って言うと、彼は目を瞬かせた。そして、顔をくしゃっとして笑う。
「何言ってんだよ。二人で助ければいいだろ?」
彼はそう当たり前のように言った。……残された寿命が短いとわかっていて、そう言ってくれている。
「……そうね。その時が来たら、一緒に」
ルシルはそう言ってから、ウィリアムの方に目を向けた。
「ねえ。私のワガママ、聞いてくれる?」
きっと、自分は綺麗に死ぬことは叶わないだろう。だが、それは自分が望んだことだ。……自分が望んだことなんだよ、リリー。
きっと、彼女は自分の死に泣いてくれるだろう。
誰にでも心を砕く優しい子だから。
でもいっぱい泣いたら、その分だけ……いや、それ以上に笑ってほしい。
あなたの笑顔はいつだって、美しいのだから。
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6章はここまでとなります!
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