ウィリアムとルシルの話
リリアンが馬車に乗るのを見送ると、ウィリアムはルシルをチラリと見て、ため息を吐いた。
「何とかなってよかったな。リリアンとまた友達になりたかったんだろ?」
ルシルはジロリとウィリアムを見ると、肩をすくめた。
「本当にリリーの知り合いだったなんてね」
その様子にウィリアムは不満そうな声を出す。
「お前も本当にリリアンの友達だったんだな」
ウィリアムはまっすぐルシルを見る。その目は彼女を責めているようだった。
「編入試験に間に合わせるために無茶な勉強して……平民のお前とリリアンはどういう関係なんだ?」
貴族の学園に入るための編入試験は、年に二回ある。ルシルはそれに間に合わせるために必死に勉強していた。ウィリアムはそれを知っていたため、あきれるしかなかった。
「言ったでしょう? ただの友達よ。……いえ、私にとってはとても大切で、かけがえのない友達」
リリアンを乗せた馬車が小さくなっていく。ルシルはそれを見ながら、頬を染めて、嬉しそうに胸の前で手を組んだ。
「もう会えないと思っていたわ。だから、あなたからリリーの話を聞いて、すごく驚いたの」
ルシルはそう言うと、ウィリアムの方を見た。そして、頬を緩めて微笑む。
「お人好しのあなたには、とても感謝してる。ありがとう」
ウィリアムはガシガシと頭を掻くと仕方なさそうにため息を吐いた。
「まったくだよ。一週間も学園通わずに、やりたいことをしてみたいって言って理解してくれた俺の親に感謝しておけよ」
ウィリアムの親はとても子どもに甘い。やりたいことがあるならやればいいと、無茶を言う息子の背中を押してくれた。父親の許しがなければ、リリアンの嬉しそうな顔を見ることはできなかっただろう。親に感謝しかない。
ルシルは可愛らしい表情でくすくすと笑う。
「素敵な親ね。感謝しているわ。でも、私は一週間ずっと付きっ切りで勉強を教えてくれたあなたに感謝しているんだけどね……まあ、いいわ」
彼女はそう言うと、自分の制服を見つめた。本来なら貴族だけが手を通す制服だ。それを平民が着るというのは、よほどの覚悟が必要だ。
「あの子が辛い思いをしてきたのを知っているわ。彼女の過去を知っているのは私だけ……今度は、私があの子を支えたいの」
彼女は唇を噛みしめて、グッと手を握り締めた。
「身分なんて気にしてられない。私はもう後悔をしたくないもの」
彼女の過去がどんなものなのか、ウィリアムは知らない。聞いていないからだ。
リリアンとどういう関係だったのか。どのように絆を築いたのか……それよりもずっと前に何を経験しているのか。
ウィリアムは軽く息を吐くと、ルシルの頭を軽く小突いた。
「私が、って言うな。あいつには家族もいるし、……俺もいる」
「そうね。一人じゃないわ。……頼りにしてるわよ、ウィリアム」
彼女はからかうようにそう言うと、眉を下げて笑った。
「……私がいなくなったら、リリーを支えてあげてね」
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2章はここまでとなります!
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