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逃げる本  作者: ピタピタ子
9/18

旅立ち

イェニーとエックハルトは飛行機でバンコクまで向かう。スワナプーム空港に到着する。

「ウェルナーがこの辺りにいると思うけど。」

彼女はウェルナーを探す。

「イェニー!」

エミリーと合流してハグをした。

「迷わなかったかしら?」

「私は平気よ。」

「イェニー!ウェルナーは来たか?」

チャールズも来て、彼女に聞いた。

「まだよ。」

「ラリーも連れてきたんだ。」

「ちょうどタイで休暇取ろうと思ってたからな。」

「あなたが通訳してくれた方ね。」

「ラリー・スペンサーです。ラリーと呼んでください。宜しくお願いします。」

「こっちこそよろしく。」

ラリーは老夫婦と握手をした。

「それじゃあ、電車に乗ろう。」

全員電車に乗った。彼らはサイアム駅に向かう。到着して駅から出るとかなりの大都会だった。

「凄い建物がありすぎてどこ行ったら良いのかしら?」

「イェニー、ここは私達に任せて。」

太陽の暑さとビルから漂う暑さ、地面から湧き出す暑さ。全てが彼らの体力を奪う。スーツケースまでも熱くなった。

「あと2分で着くからもうちょっと待って。」

ホテルに着くと、涼しさに癒やされる。寒くらいだ。

「私達はこっちよ。」

男性3人部屋と女性3人部屋に別れた。

「早速着替えるわ。」

「ちょっと何するの!」

フリアがエミリーに虫除けスプレーをかけた。

「虫除けしないと危険よ。」

「別に頼んでないわ。私、持ってるの!」

エミリーはフリアに見せた。

「余計なお世話だったようね。」

フリアはそう言って、シャワーを浴びる。

「タイ人の一家は何時くらいに合流出来そう?」

「住んでる所がこの辺みたいだけど、16時くらいには合流出来そうだわ。」

イェニーは写真を落とす。

「これは家族の写真?」

エミリーが拾う。

「そうよ。3人とも小さかった頃の写真よ。」

「この子って、もしかしてウェルナー?」

「そうよ。この時とても可愛かったわ。そう言えばウェルナーは昔から変わり者だったわ。家族の集まりでもずっと一人で絵を描いてるし、人が集まるの所が好きじゃない子だったの。家族で旅行行ってもすぐいなくなったすることが多かったから心配になることも多かったわ。そんな子も今は40代よ。」

「物を返さない癖も昔から?」

「言われてみればそうだわ。借りたことを忘れてることが多かったわ。こっちから言わないと基本返してもらえないわ。そんな感じだから他の息子や娘はウェルナーに何か貸すことはしないわ。」

イェニーは写真を見ながらベッドに横たわった。写真を優しく抱きしめた。

一方エックハルト達はスーツケースを広げていた。

「どうやったらこんなに散らかるんだよ。足の踏み場がないぞ。」

物を足で動かした。

「それ、私の服だ。足をつけるんじゃない。」

床にはウェルナーとエックハルトの私物でいっぱいだった。

「何で映画のDVDがこんなにあるんだ?」

チャールズが数枚のDVDを発見する。

「これは私のだ。丁重に扱ってくれ。」

「見ただけどな。」

「父さん、映画マニアなんだ。映画の話をしない日なんてないよ。」

「ターミナルって映画は見たことある。」

エックハルトはDVDを手に取りながら語った。

「母国が消滅して帰れなくなった主人公が空港で生活をする話だ。トム・ハンクスの演技がかなり面白い。これはフランスの空港で17年暮らしていたイラン人男性がモデルになっている。空港で働いてる人の魅力や空港がいかに色んな国の人が行ったり来たりしてるか象徴してる映画でもある。多少無理ある設定だが、私はこの映画好きだな。」

「この映画腑に落ちない点は多いけど俺も好きだな。俺の場合は俳優目当てで見た感じだな。」

「ウェルナー、今度一緒に見よう。」

「言われなくても、気がついたら一緒に見てるから。」


全員約束の時間に集まった。

「ラリー、今日は頼む。」

「ここからは俺が通訳するよ。」

タイ人の一家がやって来た。

「私はソムです。ニックネームはカノムよ。カノムって呼んで。ニックネームは旦那はキエトって言うの。ニックネームはダムよ。隣が旦那の一度家で話したいです。」

「分かったわ。ニックネームは何か意味あるのかしら?」

「私は親がお菓子大好きだったからカノムって名前なのよ。」

全員、その家族のマンションに向かう。

「すぐ着きますので。」

割と綺麗な高層マンションだ。

「今日は私達から夕ご飯を用意するので後で食べてください。」

かなり親切な一家だった。

「これ、映画のDVDプレゼントします。」

「父さん、タイ語の字幕ないDVDなんてプレゼントしないで。あっても困るだけだよ。」

「せっかく家に迎え入れてくれたからちょっとしたお土産あった方が良いだろう。」

「私からはドイツのお土産よ。このお菓子美味しいから絶対食べて。」

子供達はお菓子を見てかなり喜んだ。

「私と一緒に遊ぼう。」

エミリーは英語を教えながら子供達と遊んだ。

「それより、今日は本を返してもらいたいから来たけど、返してくれるかしら?」

ラリーは全ての会話を通訳した。

「今探します。」

タイ人の夫婦は探しに行った。

「やっと私達の本が見つかるわ。」

「長い冒険がそろそろ終わるな。」

待っている間にお菓子を食べた。

「凄い親切な人達ね。」

「悪いやつとかの手元に本が出回らなくて良かったな。」

「不幸中の幸いね。」

しばらくしても戻って来なかった。

「もしかしてまた誰かに渡したのか?」

「まさかそんなことあるわけないわ。ちゃんと他の人に渡すなって言ったのよ。」

しばらくするとタイ人の夫婦は戻ってきた。

「カノム、ダム、本はどうしたのかしら?」

「それが見つからないんだ。」

「何だって。」

チェコにいた時のようにその場にいた全員が動揺した。

「本当に誰かに渡してないの?」

「渡してないわ。」

「ちゃんと探したの?」

「イェニー、あまり問い詰めるな。タイで口論すると後々かなり面倒なことになるぞ。」

「探したわ。私は本当に誰かに渡してなんかいない信じて。」

カノムが大声で言った。

「それは分かったけど、本が見つからないのには解決しないわね。」

「子供部屋も探してみます。うちの子供がいたずらしたかも。」

子供部屋をくまなく探しても本は見つからなかった。

「他に考えられる理由は何だと思う?」

「さあな。」

ラリーが口を開く。

「夫婦が渡していないのであればもしかしたらあの家族以外に誰かが家にいたのかも。」

「え?泥棒ってこと?」

ラリーは夫婦に質問する。

「この家で僕達以外を招待しましたか?もしかしてメイドを雇ってますか?」

「先週、少し小さなパーティーを開いたんです。それとメイドは雇ってないです。」

「もしかしたらその人達の誰かが本を持ってるかもしれない。何人くらいでやったんですか?」

「私達含めて12人くらいよ。」

「彼らと連絡取れますか?」

「はい。確認します。」

夫婦はパーティーに参加した人に確認した。

「ラリー、ありがとう。お前いたからすごいスムーズだ。」

「大したことじゃない。」

「今まで都合良くお前に頼み事してたけど、今日のお前誰よりもカッコいいぞ。」

「お前らしくないことを言うな。困っている人を助けているだけ。」

ラリーはほんの少し笑っていたが、無表情を貫こうとした。

「ラリー、喜んでるんだな。素直に笑って良いんだぞ。」

「笑ってなんかいない。」

しばらくするとご飯が出来上がった。

「今日は皆、来てくれたからご飯を作ったわ。皆食べて。」

「美味しそう!これはガパオライス?」

「そうよ。」

「やっぱりイギリスより食事は美味しいな。」

「イギリスの名前を出して比較するな。」

チャールズはウェルナーに言った。

「アジアの料理はあまりハズレがないわね。好みだわ。」

ご飯を食べて、イェニー達はホテルに戻ろうとした。

「ラリーはこの辺に泊まってるのか?」

「フアランポーン駅のすぐ近くに泊まってる。」

全員、タクシーに乗って、ワット・アルンを眺めようとした。

「この辺は野良犬いない?大丈夫?」

「大丈夫だ。」

夜なので光に照らされて綺麗に映る。グラスにいっぱいになった飲み物を飲みながら、景色を眺めた。周りの建物の光も主役かのようにワット・アルンを照らす。少し川にお寺が映る。

「ここに来て良かったわ。」

窓越しで風景を見てイェニーとエックハルトはキスをした。光が綺麗な夜を過ごした。

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