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逃げる本  作者: ピタピタ子
2/18

隠し事

二人は高速列車でパリについた。

「やっと着いたわ。ウェルナーは来てる?」

「そろそろ来ると思うけど。」

駅の構内は旅行客や通勤で使う人でごった返しだった。

「久々のパリね。何年ぶりかしら?」

「4年前くらいだな。」

「ちょうどウェルナーがパリに移住した時だったわね。」

「連絡が来た。そろそろ着くみたいだ。」

二人は駅の出口の方に行った。

「あの車だ。」

「やっと来たわ。」

「お待たせ。車に乗って。」

二人は息子の車の後ろの席に座る。

「今度はまたどこかに移住することはあるのかしら?」

「それはないな。」

「次移住するなら?」

「スペインだな。」

「スペインね。あなたのガールフレンドの国ね。ガールフレンドにはちゃんと私達が来ること言ってあるんでしょうね?」

「それだけどちょうど実家に帰省してるんだよ。だからしばらくは帰って来ないんだ。」

「それも初めて聞いたな。」

「挨拶したかったわ。」

「残念だった。」

話してる間に彼の住んでいるアパルトマンに到着した。二人はソファーに座っている間に息子はお茶とお菓子を用意した。

「マカロン美味しいわ。」

「最高だな。」

3人はお菓子とお茶を飲んでゆっくりした。

「あっ、今すぐ私達の大事な本を返してくれる?」

「分かった。」

ウェルナーは本を取りに行った。10分が経った。

「時間かかり過ぎだな。」

「ウェルナー、何してるの?」

「本が見つからないんだ。」

「何だって!?」

「最後にどこに置いたのか忘れてしまったんだ。」

「冷蔵庫の上とかに棚の奥とかは見たの?」

「今探してるんだ。」

「私も探すわ。」

「俺も探す。」

「父さんと母さんは何もしなくて良いよ。一人で探すから。」

「そんなことしてたらいつまでたっても見つからないわ。」

「あー、余計な事するな。」

3人で探した。30分は経ってしまった。

「こんなに見つからないのおかしいわ。本当に忘れたの?」

「だから本当に分からないんだよ。」

「なにそれ?変よ。」

「まさか捨てたのか?」

「あー、ムカつく。俺はそんなことしないから!父さんと母さんと違って判断力はある方だから。」

「何その言い方。」

両親と息子は喧嘩する。

「待ってこの前ぎこちなかったのってあの本のことよね?」

「それは母さんが勝手に解釈しすぎだよ。」

「見れば分かるわ。普段と感じが違うんだから。」

「つまり資源ゴミとして捨てたか、失くしたってことなんだよな?」

二人はウェルナーを問いただす。

「どうなのよ?」

ウェルナーはため息をついた。

「分かったよ。正直に話すよ。」

流石に嘘を突き通すことは出来なかった。

「まずあの本は失くしたんじゃなくて、彼女のフリアに貸したんだ。」

「え?人から借りた本を誰かに貸したわけ!?フリアはどこなの?」

「そうだ本をどうにかしろ!」

「二人とも落ち着いて聞いて。まだこの話には続きがあるんだよ。」

カップのコーヒーを置いた。

「フリアが実家に帰った話は嘘なんだよ。本当はこの前フリアと喧嘩してそのまま別れたんだよ。詳しい内容は話さないけど。」

「それで彼女は今どこにいるわけ?」

「フリアはスペインに戻った。スペインのどこにいるかもよく分からない。」

「ウェルナー、どういうことなんだ?」

ウェルナーはしばらく黙った。

「ウェルナー…?」

彼はどこかに行った。

「まだ話は終わってないよ。」

「俺、アイツと別れたんだ。」

ウェルナーは悲しげな表情だった。

「聞いて悪かったわ。」

「すまない。」

「まだアイツのこと好きなんだ。」

「次の人探せと言いたいところでもあるが、彼女とは連絡取れるのか?このまま放置されてると本が捨てられている可能性がある。」

「すでに捨てられてるかもしれないわ。」

「連絡先はブロックされてる。」

「電話は?」

「つながらない。」

「他のソーシャルメディアとかは?」

「どれもブロックされてる。」

「実家はどのへんか分かるわけ?」

「実家はバルセロナのあたりだ。」 

3人で地図を見た。

「ちょっとは絞れてきたわね。」

「何とかして本を取り返したい。」

「それなら最初から言ってくれれば良かったのに。」

3人はお茶を飲み終わる。

「しばらくここには自由に泊まって良い。本を探してる限りはここで待機したほうが良い。」

「そうさせて貰うわ。本のことは諦められないの。」

本に対する情熱も夫婦仲も冷めることはなかった。

「その本がどうしてそんなに大切なんだ?その本でどうやって二人は出会ったんだ?」

「それは本を見つけてから話すわ。まずは作戦をたてないと。」

「作戦?」

「そうよ。」

イェニーは80代だが携帯を使いこなしていた。

「母さんそんなに電子機器使えるんだ。」

「あなたの父さんからたくさん教えて貰ったのよ。」

「イェニーは物覚えが早い方だけどな。」

「ソーシャルメディアは全てブロックされてるのよね?他に連絡出来る手段はある?彼女の実家の番号とか?」

「何度も言うようだがそれはない。」

「それならどれか一つでもアカウント名とか思い出せる?」

「インスタグラムなら覚えてる。」

「それなら私のアカウントでコンタクト取ってみるわ。」

「待って!そんなことして反応なんて絶対しないよ。」

「ウェルナーの母親だってバレなければ良いのよ。」

「そもそも何も縁がない人といきなりのメッセージって抵抗あるでしょ。」

「それに家族でアカウントフォローしあってるから家族だとバレなくてもウェルナーと関係ある人物ってことは絶対バレる。このやり方は俺も賛同出来ない。」

「彼女はまだ相手がいない。そろそろ、次の相手を探してる頃よ。」

「何でそんなことが分かるの?」

「何回か会ってたら彼女がどんな人か分かるわ。今の若い子ってネットで出会いを見つけるのが当たり前なのよね?」

「そうだな。俺達の世代はあまり抵抗ないし、オープンさ。」

老夫婦からしたら40代は若者だ。

「そしたらウェルナー変装でもするか?」

父親が提案する。

「変装って、あのタイプの女子はそう言うの好きじゃないわ。」

「イェニー、それなら他に何があるんだ?」

「うちの息子をもっとイケメンにメイクするとか?」

イェニーは不思議な提案をした。

「それもなし。それならバレるぞ。」

「そうだ!父さん母さん良いアイデアが思いついた!」

「おお、聞かせてくれ。」

「教えてよ。」

二人は興味津々に聞こうとした。

「母さんを使うんだよ。」

「え?どういうこと?」 

「母さんの写真を使ってマッチさせるんだ。」

「フリアってバイなのかね?」

「そういう事じゃなくて、とにかくここに座ってじっとして!」

イェニーは椅子に座った。

「父さん、そこにいると邪魔だよ。撮るぞ。」

ウェルナーは母親の写真を撮った。

「そんな写真を撮って何をするつもりなのかしら?」

「ここからが面白いんだよ。」

「何だか何やってるか分からないわ。」

「まずはアプリで母さんを若返らせる。」

「昔のイェニーそのものだ。こんな面白い加工が出来るのか。最近の技術はすごいな。今のイェニーも綺麗だけどな。」

「シャッツ。」

二人はキスをした。イェニーを40代の加工にした。

「確かにかなり正確だわ。昔の私を見てるみたいだわ。」

夫婦は感激していた。

「その写真をアイコムにする気?」

「まだまだ。ここからが面白い所だから。ジェンダースワップはどこにあったっけ?」

「ジェンダースワップ?」

「あった!」

さらにイェニーの写真を男性化した。

「えっ!すごいわ!私が男性化してるわ。」

「カッコいいな。」

「まだまだ終わらないよ。所々不自然な所があるから修正する。特に手が恐ろしいことになってる。」

「そうね。加工だって一瞬でバレるわね。それにしても男性化した私イケメンね。まああなたには負けるけど。」

イェニーはエックハルトに抱きついて、少し唇が触れるようにキスをした。

「あと少しだ。」

ウェルナーが作業してる間に二人は料理をしていた。

「材料これしかないけど作ってみるわ。」

「俺は野菜を切る。」

二人は料理を作り、あっという間に完成した。

「ちょうど出来た!」

「完璧ね。」

「ウェルナー、ご飯食べろ。」

3人でご飯を食べた。

「二人ともありがとう。」

「私達料理が好きだから大したことじゃないわ。」

「まさかこんなことが出来るなんて。立派なデザイナーに育ったわね。」

「まさかこんな形で役に立つと思わなかったな。」

「プロフィールは俺が作る。」

エックハルトはプロフィールを書いた。

「どれ?見せて。」

「好きな映画監督はジャン=リュック・ゴダール、フリッツ・ラング、ジュゼッペ・トルナトーレ。好きな映画はショーシャンクの空に、東京物語、メトロポリス、戦艦ポチョムキン、ターミナル、まだあるわけ?映画のことしか書いてないわ。」

「これだと誰もプロフィールなんて見ないよ。私に任せて。」

イェニーはプロフィールを書いた。

「どれどれ?ようこそ、レディー達、ジャックのプロフィールへ。僕はスマートでオープンな男です。趣味は映画鑑賞と世界旅行。特にスペインがこの上なく好きです。タイプの女性は自分をよく持ってる人が僕は好きです。気軽にメッセージ楽しみましょう!」

「まあ悪くないな。これで設定完了だな。」

「よし、決まりね!」

「あと身長はウェルナーの身長より少し大きくしてみた。」

親子で出会い系アプリのプロフィールを作るのはとても異様な光景だった。

「他にも写真が必要だと思うわ。一つだけだとイメージがつかめなくて不安を抱く女性もいるわ。だからあと私の写真を2枚撮って。」

ウェルナーはまた写真を撮った。そしてさらに加工する。

「ここからが編集だ。」

両親はその間、ウェルナーの持ってる本を勝手に読んだ。

「スペイン語の本があるわ。何書いているのかさっぱり分からないわ。」

「よく分からないな。」

「この本はレシピ本ね。」

「映画の本が一つもないな。」

しばらくすると写真は完成した。

「これで完璧ね。」

出会い系アプリのロケーションをバルセロナにした。しばらくすると彼女のプロフィールにたどり着いた。

「よし、母さん、何か魅力的な文章を書いてくれ。」

イェニーはフリアにメッセージした。

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