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逃げる本  作者: ピタピタ子
17/18

逃亡

男達は車をハイジャックした。

「私達が追って来た時のあのビビリ方は何かしら犯罪をしてるわけね。」

「ナンバーは分からなくても、女一人の顔はよく見えたわ。」

グループの女性の似顔絵を書いた。

「輪郭はこんな感じね。」

「待って、車が見えなくなった。」

パトカーがすぐ近くまで来た。衝突した社内を調べると、一見何も無いように見えたが、細かい所に保管庫があって、中には覚醒剤や合成麻薬がたくさん検挙された。

「これが男達の似顔絵です。」

「これは操作で使います。」

アビゲイルは警察官に似顔絵3枚を渡した。

「あいつ等早く捕まると良いね。」

「二人ともありがとう。まさか二人にそんな才能があるなんて思ってもいなかったわ。」

イェニー達はウェルナーの元に戻った。

「ウェルナー、待たせたわ。」

「結局、あいつ等は捕まったわけ?」

「車をハイジャックして逃げたわ。覚醒剤を所持していた証拠もあるし、アビーが描いた似顔絵も警察に提出したから、捕まるのも時間の問題よ。」

「後のことは警察に任せよう。これ以上我々が関わっていくのは危険だ。」

レストランに入った。

「今日は散々な一日だったわ。」

「今日もよ。忙しない日々が続くんだから。」

「シャブリ、お持ちしました。」

ワインがテーブルに置かれる。

「それでいつから似顔絵を描いてたわけ?」

「10歳の時から。自画像だけじゃ満足しなかったから、友達の顔をよく書いたわ。」

「アビー、凄いな。今度俺のこと描いてくれる?一枚いくら?」

「あなた達の通貨だと50ユーロね。背景とかつくともっと高くなるわ。」

「絵がかけるなんて本当に尊敬するよ。」

ウェルナーはアビゲイルに感心した。

「ふーん、似顔絵くらいなら私も描くわ。」

フリアは不満そうだった。

「これがウェルナーの似顔絵よ。」

携帯で彼の似顔絵を見せた。

「あら、私はこんな風に描けないわ。どうやったらこんなレベルの絵を描けるのかしら?」

「必ずしもあなたのハイレベルだと思ってる絵が評価されるわけじゃないのよ。」

「どっちの絵も素敵よ。」

「そうだよな。」

「どっちが凄いとか勝負するもんじゃない。もうこの話、おしまい。」

「この前、エミリーと電話したわ。」

フリアは話題を変えた。

「あの二人元気にしてたか?」

「ちょうどベッドでお取り込み中だったみたいよ。邪魔しちゃったわ。」

フリアは何を話したか詳しく話さなかった。

「相変わらずあの二人は馬鹿なことしつつも結構仲の良い夫婦だわ。」

「それは良かったな。」

アビゲイルはとっては共通の話題じゃなかったのでつまらなそうだった。

「それでこの前の取り調べの時、バッグくまなく確認したけど、何も取られなくて良かったわ。」

「良かったな。」

アビゲイルもすぐに話題を変えた。

「携帯には二人の記念写真もあったから盗まれなくて良かったわ。」 

アビゲイルはウェルナーと撮った写真を皆に見せる。

「楽しそうでしょ。」

フリアはウェルナーに対する気持ちが復活した。


翌日、アビゲイルのもとに電話が来た。

「もしもし、どちら様でしょうか?」

警察署からの電話だった。警察署に問い合わせた所、男女4人の密売グループは朝、警察に連行された。イェニーとエックハルトの探してる本は見つからなかった。

「アビー、どうだった?」

イェニーは彼女に電話した。

「4人の麻薬密売グループは捕まったけど、本は見つからなかったって言ってたよ。」

「残念ね。見つかると思ってたのに。」

「誰も、犯罪に巻き込まれなくて何よりよ。」

二人は電話をきった。


ウェルナーは一人で街を歩いていた。するとフリアが男性と歩いてるのを見た。

「ちょっと待った。もう相手が見つかったのか?」

ウェルナーはまだフリアのことが気になっていた。

「久々ね。元気にしてたかしら?」

「こっちじゃ中々友達にしないからフリアに会えて良かったよ。」

ウェルナーは二人を尾行する。

「フリアとあの男はどんな関係なんだ?」

ついて行こうとしたが、いつの間にか二人はいなくなってしまった。

「俺がどうこうする問題じゃないな。あいつが幸せなら見守るしか無いな。」

ウェルナーはタクシーに乗った。


5人はまたレストランに集まった。

「もう本の手がかりはどこにもないな。」

「今までがミラクルの連続だったのよ。」

「君の勘だと、本はどこにあるんだ?」

「残念ながら、私の勘はもう働かないの。」

イェニーはワインを飲んだ。

「こうなったらもうドイツに戻るしかないわ。」

「そうかもう帰国しよう。でも楽しい旅行になったのは間違いないよ。」

「そうね。夫婦でこんなに海外の国に行くなんてそんな頻繁じゃなかったらね。」

「アジアやアメリカ行けたのも良い思い出だ。本が良い機会を与えてくれたんだよ。」

エックハルトは落ち込むイェニーに言った。

「あんた、良いこと言うね。」 

二人は見つめ合って、キスをした。

「あなたの言う通りね。本が存在したことに意義があったのよ。」

彼女は現実を受け入れようとした。

「私もベルリンに行くわ。」

「アビーはもう大丈夫よ。」

「ベルリンに興味あるのよ。」

ベルリンではなく、ウェルナーに興味があるのは分かりきっていた。

「私も一緒にベルリン行くわ。」

フリアもついて行くことになった。

ウェルナーとアビゲイルが二人きりになった。

「ウェルナー、今日私の部屋に来て。」

「アビー、それは出来ない。」

「舌入れてキスまでしたのに、その先はしないのね。私といたらもっと楽しいのに。」

彼の耳元に息を吹く。

「そう言うことじゃなくて、君とは深い関係にはなれない。」

ウェルナーはアビゲイルのもとを離れた。

「母さん、元気?」

イェニーとエックハルトは長女のハンナと電話していた。

「元気よ。本を探しまくって、今はシアトルよ。」

「そんな遠くまで行ったの?」

「そうよ。」

「もう、本の管理くらいしっかりして。」

「そればかりはハンナの言う通りね。孫は元気かい?」

「子供達は相変わらず元気よ。上の子は試験勉強頑張ってるし、下の子達もよく勉強してるし、家のことも率先して手伝ってくれるわ。楽器や絵のコンテストを控えるわ。」

「それは良かったわ。いよいよ、ベルリンに戻るのよ。」

「やっと帰国するのね。本は見つかったの?」 

「結局見つからなかったわ。だけどあなたの父さんと楽しい一時を過ごしたわ。」

「お母さん達が充実した時間を過ごせて良かったわ。それに本当に無事で何よりよ。」

「帰国したら、また連絡してね。」

電話をきった。

「誰と電話してたの?」

ウェルナーが聞く。

「ハンナよ。」

「なんだ。ハンナのやつか。」

次に二人はブルーノに電話をかけた。

「ブルーノ、私達帰国するわ。」

「戻って来たら、迎えに行くよ。」

「本当?楽しみにしてるわ。」

電話を切った。

「帰国の準備をするよ。」

スーツケースの荷物を各自整理した。

「カナダとプラグ違うのね。変換プラグ準備しといて良かったわ。」

「あんた準備が良いのね。」

ドイツではプラグはCタイプだ。

「こんな丸いプラグ使ってるのね。」

「それ私の乳液よ。メイク道具も私のよ。」

「あら、悪いわ。」

荷造りをしているうちに一日は終わる。

次の日になると皆、ホテルを出て、空港に向かう。

「カウンターはあっちね。いよいよ帰国ね。さみしくなるわ。」

「また海外旅行しよう。」

「約束よ。」

飛行機に乗っている間、エックハルトはずっと映画の話や、映画の音楽について語っていた。

「あんたの父さん、誰も聞いてないのにマニアックな映画の話するのね。」

「たまに名作教えくれるから、良いけどね。」

飛行機を乗り継いで、ベルリン・ブランデンブルグ国際空港に到着した。ロビーにはブルーノの家族とハンナの家族がいた。


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