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逃げる本  作者: ピタピタ子
15/18

行方不明

彼らはまた空間に行った。

「今年は空港に行く回数が多すぎるわ。」

「バンクーバー行きのカウンターはあったか。」

「こういう会話にも何か慣れてきたわ。」

綾斗が皆に手を振った。

「また遊びに来て!」

「また来るから。」

そして彼は離れていく。

「毎回手荷物検査も大変ね。」

「これも何回もしたから慣れてきたね。」

飛行機に乗って、バンクーバー国際空港に行く。

「やっと空港着いたわ。チェックインフリーだったら楽だったのに。」

「いちいち荷物受け取って、何度もチェックインするなんて面倒すぎるわね。」

「無事に着けて何よりだよ。」

全員ターンテーブルからスーツケースを取った。

「皆、荷物は大丈夫か?」

「もう大丈夫よ。」

そのまま、中心地に移動した。

「何だか、飛行機乗り継ぎしてたから疲れたわ。」

日本で本を購入したアビゲイルという女性と待ち合わせをした。

「改めて、アビゲイルよ。」

「私はイェニーよ。隣が旦那のエックハルトよ。」

「二人とも仲睦まじい夫婦ね。」

「アビゲイル、あなた泣いてない?」

「何?ちょっと眠かっただけよ。」

「それで本、返して貰えないかな?」

「その本だけど鞄ごと盗まれたの。お気に入りの鞄だったのに。」

「待って、鞄の中に本が入ってたってこと?」

「取り返さなかったのか?」

「それは駄目!相手は刃物とかを持っている可能性だってあるんだよ。もちろん、泥棒だって叫んだけど誰も捕まえられなかったわ。」

アビゲイルはウェルナーの方を向いた。

「あなた、名前何て言うの?」

「ウェルナーだ。」

「帽子がよく似合って素敵ね。今晩一緒にお酒でもどうかしら?」

「ウェルナー、邪魔しちゃいけないわ。アビゲイルはイェニーと話してるのよ。お互い大切なものが盗まれて大変なの。」

フリアがアビゲイルとウェルナーが話してる所を邪魔した。

「ちょっと何、今はウェルナーと話してるのよ。邪魔しないでくれる?」

「でもイェニーがあなたと話したそうよ。」

「イェニー、二人とも何か緊迫した雰囲気じゃないか?」

「何が起きてるのか言わなくても一目瞭然よ。わざわざ私に聞かないで。要するに好きなのよ!」

「あなたウェルナーの何なのかしら?」

「ただ話してただけなんだけど。」

フリアとアビゲイルの間には不穏な空気が漂う。

「アビー、それで泥棒はどんな人だったか覚えてる?」

「全身黒尽くめで顔は分からないけど、身長は175cmくらいね。」

「泥棒ならなおさら警察に行かないと不味いな。」

「待って、この人数で行くの?人数多くてもかえって混乱するだけよ。」

イェニーの手を引っ張って、フリアが言った。

「それなら俺は観光するよ。」

ウェルナーはフリアのもとに寄った。

「ちょっと、待って!私からも話があるの。ウェルナーもついてくるなら警察署に行くわ。これでどうかしら?」

アビゲイルは言う。

「4人も必要ないの。ウェルナーは私と観光するのよ。」

「あら、ウェルナーは二人の息子だからいたほうが二人が心強いと思うんだけど。」

ウェルナーは二人を交互に見る。

「ウェルナー、どっちなの!はっきりしてくれない?」

ウェルナーはアビゲイルとフリアに迫られる。

「ここは父さんと母さんについて行くよ。」

「そう言うことだから。じゃあね、フリア。」

彼女はニヤつきながらフリアに手を振る。

「ウェルナー、もう良いわ。」

フリアは振り返らず、速歩きで角を曲がった。


「ここが警察署よ。」

アビゲイルとイェニーは警察署で事情を話した。

「こちらの方が鞄を盗まれて、その盗まれた鞄の中にこちらの方の本が入ってるってわけですね。」

警察官は聞いた話をメモした。さらに鞄を盗まれた通りの写真を見せて、住所も言った。

「鞄の中には本以外に何が入ってましたか?」

「財布と携帯、飲み物が入ってました。」

「盗まれた時刻は?」

「11時頃です。」

メモを取る鉛筆の音、イェニーとアビゲイルの声が響く。

「携帯には追跡アプリを入れてますか?」

「はい、連携してます。」

写真などはタブレットで撮っていた。

「Wifiのパスワードを教えてください。」

彼女はタブレットを接続した。


その頃、フリアは一人で歩いていた。そしてエミリーに電話をする。

「フリア、久しぶりね。元気かしら?」

「そうでもないわ。」

「またあの老夫婦に振り回されてるの?」

「そうよ。」

「今どこにいるの?」

「バンクーバーよ。」

「また遠い所にいるのね。」

エミリーはチャールズとベッドで抱き合いながら電話をした。

「今チャールズとお取り込み中なのね。」

「電話しながらするのも悪くないわ。ちょっとスリルを感じるし。」

「それは良かったわね。」

「私の性癖を聞くために電話したのかしら?」

「そうじゃないわ。」

「そうじゃなければウェルナーのことね。」

エミリーはチャールズの頭を撫でる。

「そうよ。私、ある女に嫉妬してるの。」

アビゲイルと知り合うまでのきっかけを話した。

「ライバルの登場ね。面白い展開になってきたわ。」

「どこがよ!あの女憎たらしいのよ。すぐ色目を使って自分のものにしようとするのよ。機転が利く所だけは褒めてやっても良いわ。」

「振り向いて欲しい相手なら誰だって色目の一つや2つ使うもんだわ。私もそうでしょ?チャールズ。」

エミリーはチャールズの首をくすぐる。

「それでウェルナーとはどうしたいの?もう一度やり直したいの?」

「少なくとも近い関係でいたい。あの女がいる限り、近い関係では入れないわ。ただ私も一時的な感情で人を殺すような馬鹿な生き物じゃないから。」

「あんたがそこまで馬鹿じゃないのは知ってるわ。あなたは本を手放さない知性の塊だから。」

「今、彼はその女と一緒なのよ。彼はまんまとその女とついて行ったのよ。」

「邪魔が入ったわね。このまま深い関係になるじゃないかしら?」

「あくまで盗難にあった物を取り返しに行ってるだけよ。それに彼の両親だっているわ。たまたま彼の両親の本がバッグの中に入っていたのよ。」

「もっと自分の気持ちに素直になって彼と距離を詰めなきゃ。その女と関係が結ばれるのも時間の問題よ。」

フリアはメールでバーに行かないか連絡を入れた。


「携帯で男の居場所が分かったわ。」

警察官に場所を見せる。

「男はシアトルにいるのよ。」

「また国をまたぐわけ?」

「ずいぶん移動したわね。」

「どうするつもりなんだ?」

「犯人は国外に逃げたから現地まで行ったほうが良いわ。そっちの警察に対応してもらえば話は早いわ。」

「待ってください。監視カメラの証拠も残っていて、さらにあなたの携帯にはGPS機能までついている。こちらである程度は何とかすることが出来ます。」

親切な警察官だった。

「対応してくれたのがあなたのような警察官で良かったわ。大体警察ってまともに対応してくれない場合もあるから話がスムーズに進むなんて運が良いわね。」

警察に捜査を依頼した。


フリアはウェルナーに断られたので一人でバーに行く。するとウェルナーをたまたま発見。

「あれ?何でここにあんたがいるのかしら?」

アビゲイルが登場する。

「あら、私達先にここに集まる約束してたのよ。」

「約束したのは私も同じよ。」

「それは断っただろ。それにもう君に未練をぶつけるのはやめようと思ったんだ。」

彼はグラスを置いた。

「そう言うことよ。彼は新しい冒険を楽しみたいの。ちょっとそっとしてあげられないのかしら?」

フリアは唇を噛んだ。

「ああ、そうなのね!それならこっちも綺麗さっぱりあんたのこと忘れられるわ。何度も言うけど、あんたと一緒なのはあくまで両親のためなのよ。」

涙を流した。

「もういいよ。」

「フリア、待って!」

呼ばれると、走ってお店を出た。

「もうこれで終わりなのよ。だから私と楽しい時間を過ごしましょ。」

「アビー、悪いがここで俺は帰る。」

彼はお金を置いて、バーを出た。

「ウェルナー、待って!クソ!」

彼女はグラスを叩きつけた。


「そろそろ、本が戻って来る頃ね。」

「そう言って、また本がどっかに行くかもな。」

「あなたやめてよ!そんなこと言ってると本当になるかもしれないのよ。」

イェニーとエックハルトは本が返ってくるのを待った。

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