電話
イェニーとエックハルトは電話をかけようとした。
「お店の電話の番号は?」
「直接電話するより僕を通して連絡したほうが良いです。日本にいる友達に電話してもらった方が電話代もそんなにかからないですから。」
ソジュンはメアリーに話していたをことを教えた。
「本が日本にあるけど、一緒について行く?」
「私、これ以上お金は出せないわ。」
「僕が出すよ。」
「ここはソジュンだけが行ったほうが良い。この問題は私には関係ないわ。」
「そうか。また別の機会で日本に行こう。」
「気を付けて。」
イェニーとエックハルトは二人で観光に行った。
スジュンとメアリーはウェルナーとフリアと合流した。
「メアリー、あなたどうやって彼と出会ったの。」
「話すと少し長いけど教えてるわ。」
メアリーはある日、出会い系サイトで彼氏を探していた。トランスジェンダーの女性と男性が出会うためのサイトだ。その出会い系サイトは海外のユーザーがほとんどなので中々タイ語を話せる人はいなくて困っていた。
「この人、長い英語で話しかけてきた。読めなくてわけが分からないわ。」
ほとんどが英語でやり取りすることがあるがあまり理解が出来ないので、やり取りが続かないことが多かった。
「そろそろこのサイトアカウント消そうかしら。」
「私が良い人紹介しようか?」
メアリーは同じトランスジェンダーの友達と話したいた。
「あんたが紹介してくれた人長く続かないわ。私一人で探すつもりだわ。」
「この人よ。あんたにピッタリだと思ったけど。」
「断るわ。同じことの繰り返しだから。」
辞めようと思った時、あるプロフィールを見つけた。今の彼氏のピョ・ソジュンのプロフィールだ。プロフィールは韓国語と英語とタイ語で書いてあった。
「この人、タイ語出来るのね。」
「私にも見せてよ。」
「自分で見つけたからあんたになんて見せないわ。」
「そんなにイケメンなの?」
「タイ語が出来て、見た目が王子様のような人だから見せられないわ。」
「ちょっとくらい良いのに。」
自分からは連絡せずにプロフィールだけ見た。
「何か連絡来た?」
「見ただけよ。」
「積極的じゃないのね。」
次の日、彼から連絡が来た。少し長めの文が来た。
「ウソ!これはチャンスかも。」
彼女は自分の部屋で浮かれていた。
「こんな感じの写真が良いかしら?」
彼にだけ見せる写真を撮った。何通がやり取りしてるうちに連絡先を交換することになった。
「そう言えば何で君はメアリーって名前なの?」
「どうせなら英語名の方が良いと思ってメアリーにしたのよ。私、海外ドラマとか凄い好きだから。」
「僕も海外ドラマは良く見る方だよ。」
見ているドラマが同じようなものが多かったので、二人の会話はかなり盛り上がった。
メアリーはソジュンに会いに行くために、韓国に行く準備をした。
「メアリー、あんたそんな遠距離してて続くの?騙された人何人か見たことあるわ。」
「確認するのよ。実際に会ってみればどんな人か分かるはずよ。」
「あんたがそうするなら私は止めはしないけど。」
彼女にとっての初めての韓国だった。
「この辺りかしら?」
彼女は突然酔っ払いの男性に絡まれた。
「来ないで。」
「テメー、何見てんだよ。ぶっ殺すぞ。」
男性はメアリーに殴りかかろうとした。
「やめろ。」
ソジュンがタイミングよく現れて、メアリーを助けた。男性は背負投げで気絶した。
「ありがとう。」
「大したことじゃない。ピンチ駆けつけない彼氏なんていないだろ。」
「ありがとう。大好き。」
彼女は彼に抱きついた。
「怖い思いしたけど、大丈夫?」
「平気よ。」
酔っ払いの男性が起き上がった。
「てめー何しやがる。」
「こんな歳でこんなことするなんて情けないですね。お酒を飲んだからって何でもして良い理由なんてどこにもないんですよ。これ以上彼女を傷つけるのなら、容赦はしませんよ。」
「うるせー!覚えてろよ!」
男性は逃げて行った。
「何が起きたの?」
「自分より弱い人間を見つけなきゃ気がすまない可哀想な人だよ。自分より強いと思った相手にはすぐ態度を帰るタイプの人間。人間って優劣とかあるわけじゃないのにね。」
「下に見られてたわけね。別に気にしないわ。」
「君は弱い人間なんかじゃないよ。本当に弱い人って誰かを傷つけて、地位や名誉にすがってなきゃ自分を作れない人のことだよ。力なんかじゃない。何でもかんでも力で相手にもの言わせるのは弱いからだよ。君はそんな人じゃないから、弱くないよ。」
彼は彼女の頭を撫でた。
「そんなこと考えながら生きてるのね。すごい大人っぽいわ。」
「人生、肩書とかブランド物とかに目を惹かせて、その人や物がどう言うふうに誕生したのか考えない人が多い。でも君は違う感じがする。」
「少なくてもお金目当てではないわ。よくそう勘違いする人が多いけどね。」
「その肩書がなくなったら結局何も残らない。世間が大量生産してる感動体験を共有するロボットにはなっちゃいけないよ。君でいなきゃ。」
「私は十分個性前回で生きてるわ。」
「ますます好きになるな。」
ソジュンが後ろから抱きついた。
「こういうのは好き?」
「もちろんよ。」
振り返って彼に口づけをした。お互い肩に手を置いてゆっくりと触り合う。
「ねえ、どうしてあのサイトで彼女探してたの?」
「どちらかと言うとトランスジェンダー女性の方が惹かれるんだ。」
「セクシーだから?」
「僕が変態に見える?」
「変態じゃない人なんていないわ。」
「それはどうだろうね。」
「肉体的な意味で惹かれるの?」
「少なくてもそう言う意味で近づいてるわけじゃないし、誰でも良いわけじゃないよ。あのサイトでお金目当てだったりする人もいたけど、プロフィールとかを見たり、今までのやり取りで違うと思ったんだ。」
「ソジュンが私を信じてくて浮き立つ思いだわ。もう悪い人に振り回されたら私が怒るわ。」
幸せな気持ちに二人は浸る。二人の足は交差する。
「家族はあなたが私のような人を好きなのは知ってるの?」
「知らないよ。特に父親は偏見を持ってるから君を傷つけたくない。それに言ったら君が遠い存在になってしまう。」
「今日は遠かった存在から一気に近い存在よ。」
そして二人は身体だけではなく、心までも近い存在になった。
「会ったこと無いけど、あなたのお父さんを責めるつもりはないし、擁護するつもりもない。あなたを無事に育ててくれたことにはあなたのお父さんに感謝するわ。」
ソジュンとメアリーは南山公園に行き、二人の写真をたくさん撮った。それからも一緒に韓服を着て景福宮を回ったりした。一緒にいる時間は終わってしまう。
「今度はタイに来てくれる?」
「もちろんだよ。」
「もちろん、私の所に泊まってよ。結構綺麗な所よ。ルームメイトにはあなたのこと話してるよ。家族とかにも言ってるから。」
「いつか君の家族とも会いたいね。」
「もううちの家族にも言ってあるわ。いつかさ、一緒に同棲できたら良いなと思ってる。」
「君が望むなら何でもするよ。」
「今度はいつ来てくれる?」
「2ヶ月後とかになりそうだけど、どうかな?」
「大丈夫よ。」
二人はきらめく川の近くで熱く抱き合った。
「そろそろ、チェックインの手続き始まるわ。また会おうね。」
「今度会いに行くから。」
それからも二人で会うこともあった。
「好きな出会いね。出会いのきっかけが近距離でも上手くいかないこと多いのに、遠距離でそれほどの関係になれるのは流石ね。中には詐欺とかだってあるのに。」
フリアはずっとメアリーを見ながら言った。
「本当に勇気のある二人だな。」
本を眺めながら、ウェルナーは言った。
「上手くいってるのはお互いの相性よ。どんなに高級食材をかけ合わせたっていい料理が出来るわけじゃないし、ヘアのインテリアを全て高級家具にした所で良い組み合わせになるわけじゃない。人だって同じよ。世界中が憧れる美男美女がくっついた所でお互い許容出来ないことがぶつかり合えば上手くいくわけじゃないわ。」
「趣味が一緒でも相性が合わなければ修復は難しいよ。」
景色を見ているうちに次の旅にうつる。