再会
イェニー達は電車に乗って空港まで向かう。
「ラリー、数日間ありがとう。本が見つかったらこの本タイ語で翻訳してくれるかしら?」
「その時はドイツ語が出来る翻訳家を探してみるよ。出版社で働いてたら嫌でも人と関わることになるから。」
「私達と出会ったのもあなたがタイ語が堪能で出版社に務めてたからよ。」
「母さん、良いこと言うね。」
ラリーはメアリーのために会話を通訳した。
「タイ語学んでなかったら、こんな綺麗なニューハーフを間近で見ることなんて無かったわね。彼氏がいるから惚れられても困るわ。」
「彼氏がいるから惚れられても困るわ。」
ラリーは彼女の体の動きや仕草まで再現した。さらに裏声をだした。
「ラリー、エンタメ系の通訳やったほうが良さそうだな。」
「今日も私達のこと死ぬほど笑わせるじゃん。」
全員ラリーがするメアリーのモノマネで笑った。
「そろそろスワナプーム空港よ。」
全員、電車から降りて、空港に向かう。
「チェックインカウンターはこっちだよ。」
チェックインカウンターまで向かった。
「ラリー、最後までありがとう。残りのタイの旅楽しめよ!」
ラリーは皆のことを見送る。そして出国の手続きを済ませた。
「タイバーツとウォンに両替したいです。」
紙幣を両替した。
「ここの両替所レートが良いな。」
「私が調べたのよ。」
フリアは事前に両替所を確認していた。
「登場まであと2時間はあるわ。」
「その間、コンビニで何か買って食べよう。」
メアリーは電話に出る。
「もしもし、イミグレ通過して、今出国ゲートにいるの。久々に会えるなんて楽しみだわ。愛してる。」
「そうか。無事で何よりだよ。俺も会えるの楽しみだな。」
彼氏からだった。
「俺もワクワクするな。持ってるよ。愛してるよ。」
お互い幸せな通話をした。そして通話は終わる。
「今の彼氏?」
フリアが英語で聞いた。
「うん。」
タイ語が分からなくてもフリアはメアリーが彼氏と電話してるのはすぐに分かった。
「ラリーからおすすめのタイ映画教えて貰ったけど、登録してる配信サイトにないな。誰かDVDとか持ってないか?」
「持ってないわ。登録してるサイト、ハリウッド英語ばかりね。アジアの映画あんまり無いわね。」
「久しぶりにイタリア映画見たいな。」
「イタリア映画?そんな有名な監督いる?」
「昔のイタリア映画は凄いんだぞ。カメラワークが今にはない魅力がたくさんある。フランス人の俳優とかもイタリア映画にはよく出てたな。」
話してる間に搭乗手続きが始まった。
「パスポートと搭乗券を見せてください。」
「これです。」
飛行機に乗った。
「またタイ行こうな。」
「今度は野良犬がいない旅が良いわ。」
バンコクの景色はどんどん消えていく。
「チャールズとエミリーは今頃何してるのかしら?」
「ベトナムで美味しいものいっぱい食べてるんだろう。」
「ベトナムの料理って健康的ね。去年行ったベトナム料理のお店フォーが本当に美味しかったわ。」
空を眺めてるうちにイェニーはうたた寝をした。
「起きて、もう着陸するって。」
仁川国際空港に到着した。
「到着ね。」
入国審査はかなり時間がかかった。
「もう行くよ。」
全員が揃ったので、移動した。空港の入口ではたくさんの人が待ち合わせをしていた。
「メアリー!」
「ソジュン!」
メアリーの韓国人の彼氏、ピョ・ソジュンはタイ語と韓国語で書かれたプラカードを掲げて彼女への愛をアピールした。
「ずっと会いたかった。」
二人は抱き合う。
「若い二人の恋、見守りたくなるわ。」
「昔を思い出すな。」
「プラカード何て書いてあるの?」
ソジュンは皆に答える。
「メアリーは世界一綺麗だ。彼女は俺の自慢の彼女だって書いてるよ。」
「そのプラカードかなりこだわったわね。」
「凄いロマンチックな事する人ね。」
「はじめまして、ピョ・ソジュンです。」
「私はイェニーよ。隣が旦那のエックハルト。」
「うちの息子のエックハルトで、隣が息子の元彼女。」
「フリアよ。よろしくね。」
全員ソウル市内に行く。
「韓国は初めてだわ。アジアって便利な国が多いわね。」
「そう言えば、あの本がまさか韓国までやってくるなんて思いもしなかったです。」
「私達も同じよ。元はと言えばヴェルナーが借りパクした所から始まったのよ。」
「それからどうなったんですか?」
「それがスペインに渡って、チェコに渡って、さらに国をまたいでタイに渡って、今韓国よ。」
「ソジュン君、君は旅行とか行くのか?」
「この前日本に行きました。」
「ソジュン、私も連れてって欲しかったわ。」
「今度一緒に連れてくから。」
メアリーは彼に寄りかかる。
「それにしてもメアリーって女の子にしか見えないね。」
ウェルナーが言った。
「俺の彼女は女の子です。誰が何を言おうと彼女は美しい女の子です。」
「何だかその言い方嬉しいわ。私の王子様ね。」
甘い雰囲気が静かな地下鉄に漂う。乗客はほとんど携帯を見るのに夢中だ。何も一言も言葉を発しない。
「日本のどこに行ったの?」
「東京です。」
「東京!私ずっと行きたいと思ってるの。」
メアリーは日本と韓国と台湾がものすごい好き。特にドラマとか漫画とかのコンテンツに興味がある。
「そうだ。メアリーにお土産がある。これコタツネコってキャラクターのパスケースだよ。」
「コタツネコ?私の大好きなキャラクターなの!」
「アートイベントで手に入れたんだ。」
「良いな。羨ましい。」
「今度、江南の方でもまたアートイベントがあるよ。行けるなら良いね。」
「連れてって貰えると嬉しいわ。」
イェニー達は民泊にスーツケースなどを置いた。
「仁寺洞のカフェで待ち合わせよ。」
「ここは私達だけで行くわ。フリアとウェルナーは周辺を観光してて。」
「分かったよ。母さん。」
イェニーとエックハルトはカフェに行った。
「こっちです。」
すでにソジュンとメアリーは座っていた。
「何頼みますか?」
「キャラメルマキアートにするわ。」
「私はコンパンナにする。」
「良かったら薬菓クッキーも食べましょう。奢るので。」
彼は注文をして、飲み物などを持って行く。
「薬菓ってドーナツみたいね。」
外を見ると、韓服を着ていた人達が歩いていた。
「それで私達の本、今返して貰っても良いかしら?」
「はい、もちろんです。」
「まさかあの本を韓国に送るなんて思いもしなかったわ。ソジュンに会えるから私は良いけど。」
ソジュンは鞄から本を取り出す。そして手元に渡す。
「これ、私達の本じゃないわ。」
カバーから本を出した。
「うそだ。これドイツ語の本だけど。あれ?よく見たら違う。」
彼は鞄を確認し直す。
「まさか!」
「ソジュン、どうしたの?まさかあなたまで本を誰かにプレゼントしたの?」
「イェニー、決めつけるのは良くない。話を聞かないと。」
「映画の話で夢中で人話聞かないあなたが言うかしら?」
「今はそんなこと関係ないだろ。」
「それで本はどうしたのかしら?」
「本は日本にある。」
「何だって?」
「どう言うこと?ホテルに置いてきたのか?」
「どこのホテルだ?」
「すみません。これは僕に責任です。」
彼は深呼吸をして話した。
「日本で友達にドイツ語の本をプレゼントしたんだ。だけど違うのをプレゼントしたのに気づかなかったんです。」
彼は本の一つ一つに必ずカバーをする。本を傷つけたくない細かい所がある。自分が細かいことももちろん自覚している。
「結局プレゼントしたのね!あなた、嘘をついてわけね!」
「待ってください!最後まで聞いて欲しいです。」
「ここは話を聞いたほうが良い。イェニー、落ち着いてくれ。」
彼は少し下を向き彼女の方を見る。
「その後、友達は好みの本じゃないから古本屋で売ったんだ。その時、僕も付き合った。」
「早く、その本屋に電話しないと!」
二人はかなり動揺した。コップを倒して、テーブルは水で濡れる。水滴がテーブルから落ちた。