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75話 妹と体育祭の話をした

「ただいま……」


 雨に打たれてびしょびしょになった俺は誰も居ない家の中に挨拶をする。


 しかし「おかえりー」なんて返ってくるはずもない。クレアはバイトに行ってるし、恐らくエレナも部活に入ってるだろうし。


 早くお風呂に入って着替えよう、雨に濡れて凍え死にそうだ。そう思いながら脱衣所のドアを開けた時だった。


「え」

「え……」


 そこには俺と同じく、びしょびしょの制服を脱ごうとしているエレナがいた。


「あ、お兄さん覗きですか?」

「そんな訳ないだろ?てか鍵かけておけよ」


 目を逸らしながら、俺はそう言うと、ぴちょぴちょと音を立てながらこちらへとエレナが歩み寄ってくる。


「おい、こっち来るな」

「ねぇ……お兄さん?別に私の身体見ても良いんですよ?」


 誘うような口調で指を使って俺の体をなぞる。


 こ、こいつ本当に中学生だよな?


「と、とりあえず服を着ろ」

「えー……。本当に見なくていいんですか?超絶激カワイギリス人中学生ですよー?」


 指でゆっくりと俺の体にのの字を書きながら、話すエレナ。


 それはマジでやばいって……。


「馬鹿やめろって……」

「あ、照れてますねー?お兄さん可愛いー」


 確かに俺の顔は今赤くなっているが、決して照れてる訳じゃない。


 ていうかマジで離れて欲しいんだけど……。


「もうこのまま、一緒にお風呂入っちゃいますー?あとそれと……」


 意気揚々と喋っていたエレナが急に視線を後ろに向け、顔を青白くして喋るのをやめた。


 なんだ?後ろに不審者でもいるのか?と振り向くと……。


「友太君?エレナ?何してるのかなー?」


 笑顔で凄まじいオーラを体からもわもわと出し、手に買い物袋を持ったクレアが立っていた。


「ク、クレア?バイトに行ってたんじゃ?」

「今日はお休みだよ?それより私はエレナと何してたのか聞いてるの?」

「えっと、その……」


 いやいや、別に慌てる事はないじゃないか……。正直に話せば……。


 隣には、証言者も……ってもういない!逃げるようにお風呂に入ってやがる!!


「友太くーん?ここじゃなんだからあっちのお部屋に行って、2人でじっくりお話ししようかー?」

「クレア!先に着替えさせてぇ!!」


 俺の懇願も虚しく、リビングへと引っ張られて行ったのだった。

 

 その後、事情を説明して濡れた制服だけを着替える事が出来たのだが……。


「本当に間違えて入って、ただからかわれただけなんだね?」


 リビングの机に向かい合って座って、何度も馬鹿正直に説明したが、クレアはまだ半信半疑だ。


「本当だよ。第一俺が妹に手を出す奴だと思うか?」

「うーん……。それもそうかも……」


 納得した様子で頷く。


 ふぅ。こいつの頭がすごく単純で助かった。


「お風呂空きましたよー?お兄さん」


 頭をタオルで乾かしながら、リビングにパジャマ姿のエレナが入ってくる。


「おー。わかった」


 隣に置いてあったタオルと、自分用のお風呂セットが入った袋を持ち立ち上がる。


「というより、私とお風呂に入らなくて良かったんですか?」

「は?なんでお前と……」

「だってぇ……。私とお風呂に入りたいから入って……あいたぁ……」


 クレアの必殺チョップがエレナの額にさく裂する。


「調子に乗らない」

「あいたたた……」


 額を抑えながら、エレナはかなり痛そうな顔をする。


 ふん、ざまぁみやがれ……。


「お兄さんと一緒にお風呂へ入った事あるくせに……」

「な、何故それを!?」

「え、本当に一緒に入ったことあるの!?」

「ッ!?」


 しまったとクレアは口を抑えるがもう遅い。


 まんまとエレナの口車に載せられてしまったな……。


 エレナがニヤついた顔で「詳細はよ」なんて言いながらからかっていた。


「と、とにかく!!二人とも部屋に入る時はちゃんと確認する事!わかった?」

「「は、はい!!」」


 慌て顔でまるで子供に言い聞かせるように俺達2人は言いくるめられたのだった。





 俺がお風呂に入った後、3人でリビングの机に集まり夕飯を食べていた。


「そういえば、そろそろ体育祭だね」


 急に思い出したかのように、クレアはそう言う。


 もうそんな時期かと思いながら、俺は近くの壁に貼ってあったカレンダー見る。


 体育祭あんまり好きじゃないんだよね……。


「あー、そうだっけ……?」

「楽しみだね」

「うん、まぁ」


 興味なさげに返事をする俺に、クレアは頬を膨らませる。


「もう、なんで友太君はそんなに興味なさげなの?」

「あんまり好きじゃないからだよ」

「むー……。せっかくのお祭りなのにぃ……」


 もしかして、文化祭のような行事だと思っている?


「なぁクレア。体育祭は文化祭みたいな行事じゃないぞ?」

「え、そうなの……。文化祭みたいなものだと思ってたのに……」

「体育祭は、走ったりするから体力を使うんだ。だから好きじゃないんだよ」


 それに俺は運動が得意な方ではないというのがある。汗もかいて臭くなるしな。


「でも運動は少し得意だし、ちょっと楽しみかも……」


 目をキラキラと輝かせながらクレアはわくわくしていた。


「そういえば、うちの中学でも、もうすぐやるって言ってましたね。具体的にどんなことするんですか?」

「まぁ、走ったり、いろんな障害物競争とかあったり、いろいろだなぁ……」


 こちらも目を輝かせながら、俺の話を聞く。


 この姉妹、目を輝かせるのも似てんなぁ。


「それで、その……あれはあったりしますか?」

「あれって何?」

「えっと騎馬戦何ですけど……」


 思いもよらなかったワードに飲んでいたお茶を吹き出す。


「何で騎馬戦……?」

「アニメでよく見るじゃないですかー。だからちょっと憧れがあったんですー」

「あ、そうなの……」


 なるほど、アニメに影響された感じか……。


 あるあるアニメに影響されて憧れを持って自分もやってみたいってなるんだよな。


 それでいざやってみたら、全然想像してたのと違ってがっかりするって言う。


「期待してるところ悪いけど、現実はアニメ見たいなのじゃないけどな……」

「わかってますとも」


 うーん、本当にわかってるのかな?その隣でもクレアがスマホで体育祭の動画を見ながら目を輝かせていた。


 この姉妹マジで楽しそうで何よりです。

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