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62話 妹の妹がやってきた

 三瀬川達との別荘でのお泊り会が終わり、自宅に帰ってきた次の日、俺はベッドに倒れ込み思い悩んでいた。


「俺はどうすればいいんだ……」


 優奈からの突然の告白……。俺は優奈の前では、その場しのぎでこう答えた。


「少し考えさせてくれるか?絶対返事するから……」


 一瞬不機嫌そうな顔をするが、ため息を付いてすぐに機嫌がよくなり優奈は俺に近づく。


「わかった。いい返事待ってるね……」


 マジでどうしよう……。思えば中原はこれがあることを分かっていてクレアを俺から遠ざけて二人きりにしたのかな?


 はぁ……。最初から仕組まれていたんだな……。


 優奈から告白を聞いてからは、せっかくの綺麗な花火も楽しく見れなかったし、次の日の朝飯味がしなかったし、電車の中でもぼーっと窓の外を眺める事だけしかしていなかった。


「返事どうするかなぁ……」


 変に返事をして悲しませてしまったら悪いし……。


「友太君」


 なんて返事すればいいかわからねぇ……。


「友太君!?」

「は、はい!!」


 起き上がると、いつの間にか後ろにはクレアが立っていた。


「なんかお泊り会から帰って来てからおかしいけど大丈夫?」

「あ、あぁ大丈夫だよ」


 あの後花火大会が始まってクレア達とは何事もなく合流することができたため小原たちには怪しまれる事はなかった。


 だがやはりクレアだけは、俺が分かれる前と後で雰囲気が違う事にすぐに気が付いたようで、こうやって少し心配そうに気にかけてくれていた。


「なんか、すごく心ここにあらずって感じだけど……」

「ちょっといろいろあって疲れちゃって……」

「そっか……、なんかあったらすぐに話してね?」


 言えないよなぁ……。優奈から告白されたなんて……。話したらどんな顔されるやら。


 いやでもクレアは幼馴染とは付き合うって思ってたし、正直話しても何も問題ないのでは?


 だめだ。逆に話したら、話したでなんか小原みたいにからかわれそうだ……。


「ところで、これ返さなくていいの?」

「何が?」


 そう言ってクレアが見せてきたのは、綺麗に洗われた中原からもらった煮物が入っていたタッパーだった。


「あ、やべ。忘れてた」

「はぁ……。ダメだよ?ちゃんと返さなきゃ」

「そうだな。その内返しに行くよ」

「今から用事があるから、私が返しに行ってくる。どうせ友太君はまた忘れそうだし」

「ありがとう、助かるよ」


 足早に「お大事に」と言いながらクレアは俺の部屋から出て行った。別に病気じゃないんだけどな。


 起き上がって窓から外を見ていると、クレアがマイバッグを持って出ていくのが見えた。


 どうやら買い物に行くようだ。


「さて……。もうちょっと寝るか……」


 と二度寝しようとベッドに入ろうとすると、スマホの通知音が鳴る。


『私のタッパーいつ返してくれるの?』


 画面を見ると中原からの個人LINEだった。


 すかさず俺はトーク画面を開き、返信をする。


『今、クレアがタッパー持って中原の家に向かったぞ』

『そう……。わかった』


 正直ここで話を終わらせようかと思ったが、まだ聞きたいことがあったので続けることにする。


『優奈の件、お前最初からわかってたのか?』

『答えはノーよ。私だって優奈が貴方の事を好きだってわかったのは当日』

『そうなのか?』


 この文面を見る限り嘘をついているかはわからないが、なんとなく嘘は言ってない気がする。


 『人生ゲームで部屋を出た後、私は優奈から聞いたの。もう我慢ができないし、今のこの気持ちを伝えたいから友太からクレアさんを引き離してくれともね』


 なるほど、花火大会の最初の時からわかっていたという事か……。


 あの「近づかないで」って言うセリフは、まだもう少し気持ちの整理が付いていなかったのかな?


『それに久野原君、返事保留してるんでしょ?』

『それも知っていたのか……』

『だって、優奈から聞いたから。あんまり待たせちゃダメだよ?』

『わかってるよ』


 未だにどう返事すればいいか迷ってる俺には無理な話だ。


 突然の告白だったし、正直かなり困惑している。


『何を悩む必要があるの?久野原君は今フリーでしょ?』

『まぁそうだけど』

『なら即決しちゃいなさいよー。優奈ほどの女の子はそうそういないよ?幼馴染だしいいじゃん』

『それもそうだけど……。幼馴染だからこそ悩んでるんだよ』


 早く即決しろと、こいつ簡単に言ってくれるな……。俺の気持ちも知らないで……。


 もし告白をオッケーしてしまえば、これからの関係は一変してしまう。それが良い方向に動くか悪い方向に動くかわからない。正直俺はそれが怖い。だからこうやって悩んでいるのだ。


 幼馴染から告白されるなんて微塵も思っていなかったしな……。


『言っとくけど、泣かせたら許さないから』

『無茶言うなよ……』

『あ、クレアさん来たわ。じゃあまたね』


 それから返事は帰ってこなくなった。泣かせたら許さないって、承諾するしかないって事じゃないか……。勘弁してくれよ。


 はぁ……。悩み過ぎて頭が痛くなってきた。よしこういう時は寝るに限る。そう思いながらベッドへ向かおうとすると、今度はインターホンが鳴る。


 無視して寝ようと思ったが、何度も何度もインターホンが鳴らしていたのでよっぽど急ぎの用事なのだろうと思い玄関へ向かう。


「めんどくさいなぁ……行くか」


 玄関へ急いで向かっている間にも何度も何度もインターホンが押されていた。


 二階から階段を降りて、ようやく玄関に到着し、玄関のドアを開ける。


「何か用ですか?」


 機嫌悪く扉を開けるとそこにいたのは……。


「ハロ~ハロ~。貴方が久野原友太君ですか?」


 長い白銀の髪の毛、つり目ではあったが、それを除けばクレアと同じように整った顔立ちの女の子だった。


 てか、マジでクレアそっくりなんだけど……。


「誰……?」


 真っ先に出た言葉がそれだった。


 いやいやマジで誰?何で俺の名前知ってるの?


「あれ?お姉ちゃんから聞いてないの?」


 首を傾げる白銀の髪の毛の女の子は「おかしいなぁ。ここであってるよね?」なんて言いながらスマホの地図を確認していた。


「聞いてねぇよ……。てか今お姉ちゃんって言った?」

「あー自己紹介がまだでしたね。エレナ・シルバーロック、クレアお姉ちゃんの妹。以後お見知りおきを~」


 エレナと名乗る白銀の女の子は、ふんぞり返ったポーズをして笑いながら「えっへん」なんて言っている。


 嘘だろ?アイツの妹?という事は、俺のもう一人の妹って事か?


 聞いてねぇぞ……。クレアに妹がいたなんて……。

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