57話 6人で別荘に行った part7
ドーンという急な轟音に俺は叩き起こされ目を覚ます。
「なんだ今の音?」
ベッドから起き上がって外を見ると叩きつけるような大量の雨が降り注いでいた。
さらに、暫く見ていると黄色い閃光とともにゴロゴロという雷も鳴り響く。
「こりゃ明日は泳げなさそうだな」
そう呟き俺は部屋を出て、トイレがある方へ向かった。
それにしても広い建物だ。これだけ広いと迷子になってしまいそうである。廊下にはライトは付いているが、それでも薄暗い。
俺はスマホのライトで照らしながら進んでいると、ようやくトイレを発見する。
「ふぅ……。これ戻るのも一苦労だな」
もう一度スマホのライトをオンにして、来た道を引き返す。
少し進むと、なんとさっき来た場所にこちらへ来るときにはなかった黒い物体が小刻みに動いていたのだ。
「え、何あれ……?」
俺は一瞬にして恐怖感に襲われる。さっきまであんなのなかったよな?しかも小刻みに動いているし。
え?幽霊?いやでもそんなこと考えている暇はない……。さっきから雷の音も大きくなってきているし停電するまでには自分の部屋に戻りたい。
俺は意を決して、スマホのライトで照らしながら戻り始める。
少しずつその物体に近くとだんだんとそれが大きい物だという事がわかる。という事は幽霊ではない……?
それじゃぁ……。あれはなんだ?俺は恐る恐る近づいて、ライトでその物体を照らす。
「きゃああああああああ!!!」
「わああああああああ!!!」
照らしたと同時にその物体は女の子の声で悲鳴を上げ始め、俺も釣られて声を上げてしまった。
「友太……。びっくりするじゃない……」
「お前こそ……」
黒い物体の正体は優奈だった。廊下の片隅で座り込んでダンゴムシのように丸くなっていた。
息を整えてよく見ると、優奈は何かに怯えるようにブルブルと体を震わせていた。
「何やってるの?」
「別に……。ただ休憩してただけ」
ただ休憩してるだけなのに、なんで小刻みに震えてるんだろう?
もしかして部屋に戻れなくなってるんじゃ?
「本当か?」
「本当よ」
「部屋に一人で戻れるか?」
「戻れる。だから友太は安心して戻って」
なんか早く向こうへ行って欲しいと言ってるような感じがするのは気のせいだろうか?
まぁいいやここは優奈の言う事を聞くか。
「じゃあ、お前も早く戻れよ?」
優奈の言葉通り部屋に戻ろうとすると、近くに雷が落ちたのだろうか?凄まじい轟音とともに外が光り輝くと優奈顔を下に向けて。
「いやあああああああああ!!」
と大きな声で悲鳴を上げた。
「お前もしかして……。雷が苦手だったりする?」
俺がそう言うと、優奈は無言でこくりと頷いた。
なるほど、だからこんな所でうずくまっていたのか。部屋に戻れなかった理由分かった気がする。
「あー、だから部屋戻れなくなったのか」
「そうよ、悪い?」
「いや別に悪いとは言ってないけど……」
不機嫌な表情を優奈は俺に向けてる。
とは言え、優奈を放っておくわけにもいかないしな……。
「俺が一緒に行ってやるから、お前の部屋を教えてくれ」
ため息交じりにそう言うと、優奈は少し嬉しそうに「本当?」と言って立ち上がった。
「ほら、ずっと手握ってやるから、行くぞ」
「うん……」
俺が手を差し伸べると、優奈はすかさず手を握りしめる。気が付けばさっきより表情が柔らかくなっているかのように見える。
聞くところによると、どうやら優奈の部屋は俺の部屋から少し離れた場所にあるらしく、優奈だけ中原と一緒にルームシェアをしているようだ。
「なんで、中原と同じ部屋?」
「奈津季が、寂しいって言うから……」
本当かなぁ……。眉を引くつかせながら言う優奈に疑念を抱きつつも薄暗い廊下を進んでいく。
すると突然優奈は立ち止まり「ねぇ」と声をかけて来る。
「急に立ち止まってどうかしたか?」
「友太、もし私が友太意外の誰かと付き合うってなったらどうする?」
「え?優奈好きな人がいるの? てか急に何で?」
唐突な話題に俺は訳もが分からず 突拍子もない事を言ってしまう。
「ちがっ……。もしもの話よ」
慌てて優奈は、訂正して俺の手を握りしめる。
「まぁ、おめでたい事だなぁって思うけど……」
「ふーん……」
なんでそんな不満そうな顔してるんだろう?結局俺が悲しもうが、優奈が決めた事だしとやかく言う事でもないと思うんだけどなぁ。
そんな事を考えていると、優奈は思いっきり俺の手のひらを握りしめる。
「あいだだだだ!!!!!!」
「友太は私が、他の男に取られても良いんだ」
「だ、だって、お前が誰と付き合おうが俺には関係ないだろ?」
慌てて俺がそう言うと、優奈は今にも泣きそうな顔で俺の手を放した。
「最低……。返答次第では友太とつ……あ……ても良いかなって思ってたのに……」
不貞腐れた顔で呟いていたが、所々ぼそぼそ言っていたので、あまりよく聞き取れなかった。
「え?今なんて……?」
聞き返えそうとした瞬間に廊下の向こうから、誰かの声が響き渡る。
「優奈ー?大丈夫ー?」
中原だ。恐らく優奈がいつまで経っても帰ってこないので、心配になって探しに来たのだろう。
とりあえずこれで中原に優奈を引き渡せば一安心だな。
「あ、中原来たぜ?お……」
近づいてくる中原に声を上げようとすると、また近くで落ちたのか、凄まじい轟音とともに外が輝く。
「きゃあ!」
優奈が悲鳴を上げた瞬間、中原がこちらに気が付き。
「優奈?そっちにいるの?今行くねー」
走ってこちらに近づいて来ているのか、こちらへと歩み寄ってくる音が速くなる。
これで戻れると安心した時だった。優奈が突然俺の腕を引っ張り、近くにあった物置部屋へ引っ張りこんだ。
「ちょ……。お前何を……」
俺に何も言わせず、近くにあったマッドへ俺を押し倒す。
「いてて……。今日のお前なんかおかしいぞ?」
「おかしくさせたのは誰だと思う?」
少し不貞腐れたような表情をしながら優奈は俺の上に乗ると、パジャマを上着を脱ぎ始めた。
水色の花の模様があしらわれた布のようなものが見えたがそんなの事を気にしてる場合ではない。
「ちょ、ちょ……。脱ぐな!!脱ぐな!!」
「もっと私を見て……。私だけを見て……」
何かがおかしい、なんでこうなった……?あ、わかった。
「お前もしかして、チャラグミ食った?」
「食ってる訳ないでしょ……。素なんだけど……」
優奈は頬を膨らませながら、顔を近づけて来る。
このままだとまずい……。他の奴らがいるのに一線を超えてしまうかもしれない……。
「優奈、俺はお前の事ずっと見てるから……だからもうこんなことやめよう」
やめるように説得しようとするが、優奈は聞く耳を持とうとしない。
「やめない……。もっともっと私だけを見て欲しいから」
「お前だけを見る事は出来ない……。俺にはクレアもいるから……」
「やだ……やだ……」
駄々をこねるをように言う優奈は次にパジャマのズボンにも手をかけると、滑らかな肌をまるで川の流れのようにズボンが落ちていく。
本当にまずい……。俺は、優奈から逃げるように物置き部屋を出た。
「ちょっと!!友太いかないで!!」
ドアの当たりまで追いかけて来ているようだったが、全く見向きもせず自分の部屋へと戻った。
「はぁはぁ……」
自分の部屋と戻った俺は空気が抜けた風船のようにベッドへと倒れる。
「なんだったんだ……あれ……」
まさか……。あの時茂みが揺れたのは動物だと思っていたが優奈だったのか……?
いやそんなはずは……。もう考えるのはやめよういろいろあって疲れた……。
俺はそのまままた深い眠りについた。




