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54話 6人で別荘に行った part4

「疲れた……」


 最初にいた岩場は見えなくなっていたが、思いのほかクレアの乗ってるアヒルの形をした浮き輪が重すぎて、俺の疲労は限界を迎えていた。

 

「友太君、すごーい!行け行けごー!ごー!」


 こいつ……。人の苦労も知らないで、浮き輪の上でジュース飲んで満喫しやがって……。浮き輪をひっくり返してやろうか?


「ごめん、ちょっと休憩」


 俺は、一息を付きながら浮き輪にもたれかかる。


「はい、友太君。ジュース」


 そう言いながら、浮き輪の上から封が開けられていない、ジュースの入ったペットボトルを渡してくる。


「おう、サンキュー」


 キャップを開けてジュースに口を付けようとすると、「ねぇねぇ聞いて」と肩を叩いてくる。


「どうした?」

「優奈さん今日、すごいエッチな下着履いてた」

「ぶーッ!!」


 突然のカミングアウトに、口に含んでいたジュースを海に吹き出してしまった。


「いきなり、何言ってんだよ」

「凄かったよぉ……。お尻の方が……」

「だー!!言わなくていい!!」


 いたずらっぽく微笑むクレアの口を抑えようとすると、クレアは笑いながら、冗談だよと言う。


 この前優奈が「履いちゃおうかなー」と言っていたので、クレアの言う事が冗談だとは思えなかったのだ。まぁクレアが冗談だと言うなら違うんだろうな。


 俺は安心して、一息を付きながらもう一度ペットボトルに口を付ける。


「というか、優奈さんと何かあったの?」

「まぁちょっとな……」

 

 ジュースを飲みながら、浮き輪にもたれかかっていると、クレアは浮き輪の上から俺の顔を覗く。


「何があったの?話して?」


 まぁクレアにならいいか。


 俺はバスの中でクレアが眠っている間にあった出来事を話した。


「多分、優奈さんは友太君に好きな人がいるって思ってるんじゃないかな?それで怒ってるんだと思う」

「そんなんで怒るかなぁ?」

 

 今まで優奈がそう言う事で怒ってるとこ見た事ないけどなぁ……?

 

「怒ると思うよ?だって幼馴染なんだし……」

「幼馴染だから、別に好きな人が居たら怒るものなのか?」

「そうじゃないの?」


 あれ?この人もしかして??いやいやそんなはずはないよな……?


「もしかしてお前、男女の幼馴染は絶対付き合うと思ってる?」

「そうじゃないの……?」


 まるで知能が0になったように、間抜けな顔をするクレアにため息を付く。


 やっぱりどこかの少女漫画みたいな勘違いをしてたな……。


「はぁ……。別に幼馴染だからって絶対付き合うもんじゃないよ……。多分それでアイツは怒ってるんじゃないと思う」

「じゃあ何だと思うの?」

「多分中原が出した心理テスト、俺がやばい項目を選んだからだと思う……」

「それってどういう回答だったの?」


 すごく興味津々で聞いてきているが、いざ俺の口から言うと恥ずかしい。


 俺はクレアの耳に小声で問題と4つの項目を言い、回答とその意味をクレアに伝える。


「わぁお。友太君欲求ふ・ま・ん」

「ちげーよ!!」

 

 ニヤついた顔で僕の背中を何度も平手打ちするクレア。


 宴会とかでよくいるおばちゃんみたいな事してるぞこいつ……。


「だって、その答えをしたから、友太君はそう言う人間って事なんでしょ?」

「だから違うって……。心理テストなんてワイワイ楽しむための遊びみたなもんだし、絶対にそうとは限らないよ」

「ふーん。まぁそう言う事にしておく」


 ダメだ。全くわかっていないようである。


 まぁでもこれ以上言っても無駄だろうし、もういいや。


「そうしてくれると助かる……」

「後でちゃんと謝ってね」

「わかった」


 休憩を十分取った後、浮き輪を押すのを再開する。暫くすると、心配そうにクレアを探している優奈達が見えてきた。


 クレアを送り届けると、皆安心した表情を優奈達は見せる。しかし優奈はまだ俺の事許してくれていないのか、まだ口を聞いてくれなかった。


 これ謝れるかなぁ?










 先ほどの岩場に戻ると、小原が待ってくれていて「ご苦労さん」と声をかけてくれた。


「あぁ、すげぇ疲れた……」

「で……さっきの話の続きなんだが……」


 先ほどの続きを話始めようとすると、後ろから三瀬川と優奈がやってくる。


「先ほどお弁当が到着したのですが、お昼にしませんか?」

「あぁ……。ちょっと俺達は話したいことがあるから、後で行くわ」

「ちょ……小原」


 小原は俺を引きずり近くにあった林へと引きずる。


 三瀬川は「はーい」と言いながら手を振っていたが、優奈は険しい表情で見つめていた。


「別に昼飯食ってからでも良かったんじゃないか?」

「いや、早い目に言っておかないと俺忘れちゃうから」

「あぁ、そうなの……」


 すげぇ、単純な理由だと、呆れた顔をしていると、小原は一度咳ばらいをして改めて話始める。


「あの後いろんな奴に聞いて回ったけど、やっぱりあの噂はガチだった。しかもマジでやべぇことになってる」

「マジでやべぇ事って何だよ?」

「植野さんのファンクラブとクレアさんのファンクラブが団結して、お前を排除しようとしてるいるみたいだ」

「待て待て、優奈は分かるがなんでクレアまで?」


 意味が分からなかった。優奈は分かるがなんでクレアのファンクラブまで出て来るんだ?


「なんかクレアさんのファンクラブの間で、お前とクレアさんが住んでるんじゃないかって?噂になってるらしい。それで植野さんのファンクラブの話を聞いて、利害が一致したんだろうな」

「それ何処から漏れたんだ?」

「わからん……。多分誰かがお前の家に入って行くのを見たんだと思う……」


 確かにその可能性が高いか、バレない方がおかしいもんな……。いつかはバレるとは思っていたがこんなにも早いとは思ってなかった。


 だがまだ妹だとバレていないだろうし、一緒に住んでいると確定したわけじゃない……。


「けど、排除なんて……どんなことを……」

「まぁ嫌がらせとかそんなんだろうな……。けどそれで済めばいいだろうけどな」

「どういうことだよ?」

「優奈の方のリーダー、あの学校で有名な不良集団のボスと仲がいいらしい。そいつらを動かされたらお前もただじゃすまないかもな」


 たった一人の女の子を振り向かせるために、そんなしょうもないことを……。


 ぶっちゃけ優奈から、離れればいい話ではあるが。アイツをもう一人にさせないと決めたからには守ってあげないと。


「本当にしょうもないな……。告白するなら真正面から想いを伝えに行けばいいのにな」

「お前、優奈さんを取られても良いのかよ」

「まぁ別にアイツが誰と付き合おうが、俺の知った事じゃないがな……」

「いやいや、良くないだろ!!」


 と小原が叫んだ瞬間、近くにあった茂みがガサガサと激しく揺れる音がした。


「うお、なんだ?」

「多分、狸か兎だな。俺の大声でびっくりしたんだろうな……」

「ふぅ……。びっくりした」


 俺はその場に座り込んでしまった。優奈か誰かに聞かれてたかと思った……。


「まぁ、何かあったら俺にすぐ言えよな。かならずどうにかしてやるから」

「わかった」


 本当にこういう時だけ頼りになるんだよな。


「あ、後ベレー帽の女の子だったな」

「あぁそうだったな」


 言われるまで俺はその事をすっかりと頭から抜けていた。そういえば頼んでたな。


「Fクラスの松原胡桃(まつばらくるみ)。覚えあるか?」

「松原……」


 覚えがあるような、ないような……。でもどこかで聞いたことがあるような……。


 名前を聞いてもピンと来なかった。


「すぐに思い出せないって事は、別に何てことのないただの同級生ってだけじゃないのか?」

「多分……」


 本当にそうなんだろうか?なんか違うと俺の中でそんな気持ちが巡っていた。


「ていうか、早く戻らねーか?」


 スマホの画面をチラチラと確認しながら小原そう言う。


「おう戻るか」

「さっきから三瀬川の早く来いって言う通知がうるさいんだ」


 顔面蒼白になりながら小原は急いで戻って行った。


 あー怖い、お母さんみたいだ。俺と小原は急いで戻るとかなりご立腹の様子の三瀬川とクレアが待っていたのだった。


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