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45話 幼馴染の家でパーティーをしたpart3

 中原の誤解がようやく解け、俺はすやすやと気持ちよさそうに寝るクレアに毛布を掛ける。


 その隣で優奈は顔を真っ赤にし体育座りをして、涙を流しながら俺をじっと睨んでいた。その様子を見た俺はオドオドしながら、部屋を片付ける中原に問う。


「なー、俺は優奈のどこを触ってたんだ?」

「とりあえず、あんたの手は優奈のスカート中だったと教えといてあげるわ」

「嘘だろ……?」


 ツルツルとした布のような感触はパンツだったのか。じゃああのプニプニとした感触は……?


「友太の変態」

「ごめんって」

「久野原君の変態」

「お前もかよ」


 2人の女の子から、罵声を浴びせられるという拷問のような時間が終わり、俺は改めて正座をして優奈に頭を下げて謝る。


「本当にごめん」

「もう気にしてないから……。忘れよ?」


 涙を拭きながら、優奈はそう答えた。ぶっちゃく何を触っていたかすごく気になるが、もう気にしないでおこう。


「まぁでも、クレアさんにも少し非はあるかもね」


 中原はそう言いながら、机の下にあるチャラグミと書かれたお菓子の袋を拾い上げる。


「それグミか?」

「このグミ最近流行ってるのよねー。気分が上がるって言ってさ、でもアルコールが入ってるから酔う人は酔うのよね」


 なるほどな、そのグミを食って酔ったクレアはあんな奇行に走ってしまったわけか。

 

 てか子供のお菓子にアルコール入れるなよ……。


「あんたも兄なんだから、ちゃんと妹の買ったもの見といたほうがいいわよ?」

「これからそうします……」

「私、今日はスカートじゃなくて良かった」


 黒いスキニーのズボンをギュッと握りしめながら、中原はそう呟いた。


 これからはこう言う事がないように、随時クレアの買ったものはチェックしないと。


 中原にはセクハラ変態野郎って言う不名誉なあだ名も付けられてしまったし、もうこんな事はごめんだ。


「てかなんでお前ここに来たの?」

「そりゃ優奈に呼ばれたからに決まってるじゃない」

 

 「そうなのか?」と優奈に確認すると、首を縦に振る。


「人数はたくさんいた方が楽しいでしょ?」

「私は久野原君が、クレアさんと優奈にセクハラをしているところを見せられて、不愉快な気分だわ」

「いやマジでごめんって……」


 必死に俺は、機嫌悪く腕を組む中原に頭を下げた。クレアめ、本当に偉い事をしてくれた。





 暫くしてすやすやと寝ていたクレアが目を覚ます。

 

「うう……。私は何して……あれ?中原さん」

「大丈夫?クレアさん」

「ちょっと頭が痛いかもです……」


 どうやらまだアルコールが抜けきっていないようで、頭を抑えながら、クレアはゆっくりと起き上がろうとする。


「無理するなクレア。横になってろ」

「友太君ごめんね……」


 そう言いながらクレアは虚ろな目で俺の頭を撫でた。


「友太、冷蔵庫に麦茶あるから持ってきて」

「なんで、俺が……」


 勘弁してよという顔をして断ろうとすると、2人は蔑んだ目で俺を睨みつける。


「は?あんたがそんな事言える立場なの?」

「私のスカートの中を触った事、クレアさんに言っちゃっていいの?」

「それだけは……勘弁してください」


 いくら柔和クレアとは言え、そんな事を聞いたらどんな顔をするやら……。


「じゃあ行ってきてね、久野原君?」

「わかりました」


 脅された気分だ……。俺は部屋を出て、階段を降りてキッチンへと向かった。


 さて、キッチンに着いたはいいが麦茶はどこにあるんだろう?テーブルの上にもないし、とりあえず冷蔵庫を開けてみるか?


「あった」


 冷蔵庫を開けてすぐ、ドアポケットに麦茶が入ったアクリル冷水筒を見つける。そして戸棚を開けてコップを取り出して、麦茶を注ぐ。


 注ぎ終わった瞬間、急に後ろから誰かの視線を感じる。優奈かな?いや優奈なら普通に近づいてきて「あった?」と話しかけてくるはずだ。


 じゃあ誰だ?後ろを振り向くが誰もいない。

 

「気のせいか……」


 ほっとしてコップを持とうした瞬間、後ろから急に腕が体に纏わりついて来て、一気に後ろの方へと抱き寄せられる。


「うわあああああああああ!!!!」


 俺の悲鳴を聞いて、上の階にいた3人が急いで降りて来る。


「どうしたの?ゆ……友太……?」


 3人はキッチンで繰り広げられている光景を見た瞬間、3人は表情を凍らせる。


「ゆうくーん、会いたかったー♡」

「いだいいだい!!!」


 今俺は、キッチンの隅から飛び出してきた背が小さい甘い顔をした女の人に抱きしめられている。


 クレアと違って、相当な強い力を込めて抱きしめてきているので正直かなり痛いのである。

 

「ゆう君、寂しかったー。何でずっと会いに来てくれなかったの?」

「桃香さんが、こうやって抱きしめて離してくれないからですよ!!」


 そう言ってる間にも抱きしめる力は徐々に強くなってきていた。この人背が小さい癖に何で力は強いんだよ……。


「あはは……優奈さんのお姉さんすごく面白い人ですね……?」


 俺の悲鳴で完全に酔いが覚めたのか、冷静に愛想笑いをしながら優奈の問いかける。


「クレアさん。あの人、私のお姉さんじゃないの……」

「へ……?」

「あの人めっちゃ久しぶりに見たかも……」

「あら?中原さんは分かるけど、銀髪の娘は見慣れない顔ね……。誰?」


 驚いてる表情のクレアを見た桃香は俺から離れて、クレアに近づくと先ほどの甘い顔と違って、蛇が獲物を見つけた時のような目でにらみつける。


「わ、私はクレア・シルバーロックと言います。友太君の義理の妹です」

「妹?なーんだ。彼女じゃないんだー良かったー」

「ち、違います!」


 もう一度甘い顔に戻った桃香を見て、びくびくと震えていたクレアはほっと一息をつく。


「あの、ちなみに貴方は?」

「あは☆私、優奈の母の植野桃香(うえのももか)っていいまーす」

「え、優奈さんのお、お母さん!?」


 そうこの人が優奈の母の植野桃香だ。俺が今一番苦手な人でもある。少しぶりっ子じみた性格もそうだが、会えば毎回ものすごい勢いで飛んできてクレアよりものすごい力で抱きしめてきて最低でも30分は離してくれない。


 そんな事が災いして俺はこの人が苦手になっていた。正直クレアに抱きしめられるのがあまりよく思っていないのもこの人のせいでもある。まぁクレアはまだ優しいからましだけど。


 まぁでも、クレアが驚くのも無理はない。桃香さんは子供顔負けの大人とは思えない童顔な顔つきをしていて、さらにツインテールに結んでいるのも相まって、初見だと優奈のお母さんとは間違いなくわからない見た目をしているからだ。


「お母さん、今日は仕事じゃなかったの?」

「えへへ、今日は仕事が早く終わったの、それよりもなんで友太君がいるって教えてくれなかったのー?私今おこだよ」


 ぷんすかぷんすかと自分で擬音を発しながら、もう一度俺を俺を強く抱きしめる。


「友太が教えないで言ったから」


 ちょ、そんな馬鹿正直に言うか?確かに俺はお前の個人LINEでそう言ったけどさぁ……。


「ゆう君、本当なの?私の事嫌いなの?」


 抱きしめる力を強くしながら、桃香は上目遣いで泣きそうな表情をしながら問いかけて来る。


「うわぁ……。マジで引くわ」

「友太君?いくら苦手だからって流石にそれはひどすぎると思うよ?」


 2人も俺に向かって軽蔑の目を向けている。俺の気持ちも知らないで、好き勝手言いやがって……。


「お母さん、もう40近いんだからぶりっ子ぶるのやめて」

「うぐっ……」


 クリティカルヒットだ。蔑んだ目をした娘からの突然のカミングアウトに大ダメージを受けてその場に倒れる。


「優奈?それは言わない約束だよね?」

「最近また小じわが増えたのも知ってるよ?そう言えばシミも……」

「ぶふっ!!」


 今度もクリティカルヒット。口から血を流してまたその場に倒れる。


「はぁ、はぁ……もうやめてよ優奈……お小遣いあげるからね?」


 フラフラと立ち上がりながら、優奈に二枚の諭吉を差し出すが、優奈は受け取ろうとしない。


「そうそう、最近加齢……」

「ぐはぁ!!!」


 3回目のクリティカルヒットが被弾し、そのまま大量の血を吐いてKO。優奈の勝ちー。


「優奈、疲れたから寝て来る……」

「うん。ゆっくりおやすみー」


 ニコニコと笑顔を取り繕いながら優奈は、ふらふらと倒れそうになりながら自分の部屋へ戻って行く桃香に手を振った。


 この人、実の母親にも容赦ねぇなぁ……。

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