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25話 妹とバイトを始める事にした

 家に帰宅した俺は「ただいまー」と声を出すが、クレアは出てこない。いつもなら「おかえりー」と言いながら飛びついてきたり、優しくハグしてきたりするのだが今日はいつもと様子が違う。


 玄関にはクレアのローファーも置いてあるので、家の中にはいるようだ。寝ているんだろうか?と思いながら俺は靴を脱いで、リビングへと向かう。

 

 リビングに入ると、クレアはソファーに座り、スマホをスタンドに置いて誰かと通話しているようだった。


「おかえりー。友太君」


 俺に気づいたクレアは、体だけを俺の方に向けて、出迎えた。


「ただいま。誰と話してるんだ?」

「植野さんと通話してたのー」


 携帯の画面を見ると部屋着姿の、優奈が画面越しに「やっほー」と言いながら手を振っていた。いつの間にビデオ通話するくらいの仲になっていたんだ?


 優奈に挨拶を澄ました後、コンビニで買ってきた醤油のボトルを台所に置く。


「これでいいか? クレア?」

「うん。ありがとうね友太君ー」


 そう言いながらクレアは俺を優しくハグする。


「馬鹿!! 優奈と通話してる途中なんだからやめろって!!」

「あー、そうだった……」

「派手に見せつけてくれるね……」


 スマホの画面を見ると、まゆを引くつかせて、ブチギレる寸前の優奈の姿があった。


 この間あまりイチャつかないでねと言われたばかりなのに、もう優奈に目の前で見せてしまうとは。


「ごめんね」


 クレアもスマホの向こうの優奈に謝る。優奈は「まぁ、いいけど」と不貞腐れながらも許してくれていた。


 さて……。俺は咳ばらいをしてクレアと優奈に喋る。


「GWなんだけどさ、もしかするとどこへも出かけられないかもしれないぞ……?」

「「なんでよ!?」」


 二人は声を合わせて驚く。


「お前のせいだよ。毎日、毎日ひっきりなしに買い物に行くから貯金が死にかけてたぞ?」


 俺はクレアを指差しながら、注意する。


 女の子をここまで叱るのは本当は気が引けるが、先に言っておかないと後で取り返しのつかないことになってしまう。


「だ……だってぇ……備えあれば患いなしって言うじゃん……」


 目に涙を浮かべながらクレアは俺に向かって必死に訴える。


 まずい……。優奈の前で泣かれるのはまずいぞ。いやでも負けるな俺!!ここで言っておかないと今後の生活が危なくなるぞ!


「それにも限度があると思うんだが?」

「そ、それに友也さんからの仕送りが!!」

「中旬、下旬になるんだってさ」

「え、嘘!?」

「だから今資金不足で怒ってるんだよ!!」

「えーん……ごめんなさい……」

 

 クレアは声を上げて、大粒の涙を流しながら泣き始めてしまう。


 さすがに強く言い過ぎてしまったかと、自分を戒める。


「友太、最低。また女の子を泣かせてる」

「そ……そんなつもりじゃ……」


 不機嫌そうに顔を近づけて優奈は俺を睨みつけていた。やばいこの目、あの時の中原より怖いよ……。


「それだから奈津希にも怒られるんだよ?」

「返す言葉もございません……」


 俺は優奈に何も言い返せず、ぺこぺこと何度も頭を下げた。


 またやってしまった……。俺は何度女の子を泣かせれば気が済むんだ……。


「ごめんね……友太君私明日からアルバイト始めるから許してね……?」

「へ……?」


 え?アルバイト……?急に出てきた言葉に俺はキョトンとする。


「クレアさん、私と同じお店で働くことにしたの」

「レストランなんだけど、すごく衣装が可愛いんだよ……?」

「へー」


 まさかメイド喫茶……?いやレストランだし違うか。植野はそんなオタク文化をあまり好き好んでいないし、性格上やらないだろう……。


 可愛いレストランの衣装かー、見て見たいなぁ。


「友太……、変な妄想してるでしょ?」

「私と植野さんの衣装がみたいなら、写真送るよ? もちろん2ショットでー」

「ちょっと、やめてよクレアさん。恥ずかしい……」


 スマホの向こうで顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。


 でも、クレアがアルバイト始めたとしても、給料が入るのは来月になるので、GWには到底間に合わない。なので根本的な資金不足の解決にはなっていないんだよなぁ……。


 格なる上は、いらなくなったゲーム機やソフト、漫画を売るか?そんなにいい値段にはならそうだけど。


「友太も始めれば?」

「俺がか?」


 アルバイトか……。人間関係とかめんどくさいから嫌煙していたんだよなぁ……。


「まぁ長期は今の友太には辛いだろうからさ、まずは短期からとか……」

「短期か……、それいいな」


 短期ならあまり人と関わらなくてもいいから楽かな。それで慣れれば長期でバイトすればいいし。


 しかも、早いうちにもらえたりするので、仕送りまでの資金不足の解消になる。それよりも問題は……。


「短期で募集してるとこなんて、この町にあるのか?」


 よくぞ聞いてくれましたとばかりに優奈は自信満々にスマホをいじりはじめる。


 都会なら、たくさんあるだろうが、俺達が住んでいるの田舎だ。そうやすやすと短期のアルバイトを募集してるとこなんてあるんだろうか?


 そんな事を考えていると、俺のLINEに優奈からの通知が来る。開くと一枚のチラシを写した、写真が送られてきていた。


 写真には喫茶ファンタジアGW短期アルバイト募集、高校生大歓迎と大々的に書かれている。


「明日行ってみたら?」

「あぁ、行ってみるよ。でもなんでこんなの持ってるんだ?」

「ふふん。行ってみたらわかるよ」


 何か含みのある笑みを浮かべる優奈。なんだよその顔……めちゃくちゃ怪しいんだけど?


 正直あまり乗り気ではなかったが背に腹は代えられない。


「良かったね。友太君」

「ああ。なんとかこれでGWは出かけられそうだな」


 クレアは嬉しそうに「うん」と言う。


「とりあえず、クレアは自分の給料が入るまで買い物禁止な」

「わかった。そうする」


 クレアは少し不貞腐れながらも、承諾する。良かった、良かったこれで資金不足に悩まされなくて済みそうだ。


 さて、バイトの面接なんて初めてだな。短期とはいえ、すごくドキドキする。でもそれよりもやっぱり。


「なぁ、優奈。なんか俺ハメられてないよな?」

「な、何言ってるの? そんな訳ないよ?」

「……分かった。信じるぞ」


 気を紛らわせようと口笛を吹こうと優奈は口をとがらせるが、音色は出ていなかった。


 なんかすごく怪しいんだよなぁ……。まぁ嫌な予感はするが、このチラシに書いてある喫茶店へ行ってみるか。

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