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23話 幼馴染と妹がとても仲良くなった

 月日は変わり5月。クレアが日本にやって来てから早いもので2週間が経ち、完全に学校に溶け込んでしまっていてクレアの事を噂する者も少なくなっていた。


 屋上で言い争っていた植野とは俺が付き添いでもう一度謝罪したのもあってか、今日までわだかまりもなく、来ることができている。


 これで、また平凡な学校生活が戻ってくる……。と思っていたのだが……。


「クレアさん、昨日おすそ分けしてもらったおかずとても美味しかったです」

「それは良かったです。また余ったらお渡ししますね」


 俺の机で仲良く近所の主婦のような会話をしながら弁当を食べるクレアと植野の姿があった。


 なんだ。ただ俺の机に集まって話してるだけで別に、なんてことないじゃないかと思うかもしれないがこれは今日に限った話ではない。付き添いで謝罪した次の日から今日まで毎日昼休憩は俺の机にこうして二人で集まっているのだ。


 クラスの男子からの視線も毎日俺の机に集まっている事もあり、日に日に鋭くなってきていた。ごめんなさい男子の皆さん……。僕が一緒に食べよう?って言ってるわけじゃないんです。この二人が勝手に集まってるだけなんです許してください。


「なぁなんで俺の机に二人で集まってるの? しかも毎日……」

「悪い?」

「悪いの?」


 一斉に俺の顔を睨みつけるように振り向く二人に戦慄が走った俺は「い、いやそんなわけじゃ……」と萎んでしまう。


「私達友達同士なんだからいいでしょ?」

「だよね? 友太君?」

「まぁそうだな……」


 まだ友達という言葉に俺は慣れない……。あの時すっと言葉に出なかったのもいつの間にか俺は友達という言葉を嫌煙するようになっていたのかもしれない。


 こういう時以外なら友達という言葉はすっと出るんだけどなぁ……。その違いはなんなんだろうか?


「友太?」

「友太君?」


 複雑な表情をしていた俺を見て心配したのか二人は案じ顔で話しかけてくる。それに対して俺は「なんでもないよ」と返す。


 あれ?そういえば植野って俺の事名前で呼んでたっけ?前まで苗字だったような……。なんで急に名前呼びに……?


「植野さん。いつの間にか名前呼びになってますね」

「うん。せっかく名実ともに友太の友達になれたんだし苗字なんていう堅苦しい呼び方はちょっとね……と思って」

「ですよねー。そうだ友太君もこの際植野さんの事を名前で呼ぼうよ」

「「えぇ!!??」」


 二人の驚嘆した声が重なり合う。いやいや植野の事名前で呼ぶなんて……。小学生の頃でも名前で呼んでいなかったのに……。


 多分向こうもお互いを名前で呼び合うということに俺と同じようにドキドキしてるのだろう。顔を真っ赤に染めて俺の顔を見つめていた。


 男久野原。勇気を出して植野の方を向く。


「優奈……」

「友太……」


 俺と植野……いや優奈はお互い顔を赤くしてお互いの名前を呼びあっていた。クレアを呼ぶときはドキドキしなかったのに……。


 隣にいるクレアの方を見るとしてやったりというような顔をしていた。くそぉクレア覚えてろよ。



 

 話は変わって5月の大型連休の話になっていた。


「クレアさんはGW、何か予定はありますか?」

「私は特に予定がないですね……」

「そうなんですね。イギリスでは何してたんですか?」

「うーん。適当に友達の家に集まってパーティーとかやったり、一緒に出掛けたりとか」

「へぇー楽しそうー」

「日本でもそういうことやりたいんですけどねぇ」

 

 女子同士やっぱり大型連休の話は盛り上がるよなぁと、弁当のおかずを食べながら聞いていた。


 そういえば今年のGWは9連休だったな。俺は何をして過ごそうかな?


「それなら、一緒にどこかへ出かけて、その後パーティとかしたりしませんか?」

「いいですね。いつにしましょう?」

「前半は私、バイトがあって無理なんだけど後半当たりなら……」

「じゃあ日程はまたその辺で決めましょう」


 クレアと優奈はいっしょにお出かけかしてパーティかー。女の子同士遊びに行くって言う事は服とか一緒に買ったり……、カフェでだべったりとかするのかな?


「友太君も来るよね?」

「え!?」


 突然誘われたことで情けないえっという声が出てしまった。しかも周りの男子も一斉にこちらを振り向いて、嫉妬の眼差しを向けている。


「何? 友太、嫌なの?」

「私達と行きたくないの?」

 

 言い寄ってくる二人。まぁ別に行くのは良いんだが周りの男子の視線が……。

 

「えっと……」

「「どうなの!!??」」

「わかった。行くよ!!」


 そう言うと二人は顔を見合わせてやったーと嬉しそうに手を取り合っていた。はぁ……皆俺に嫉妬の眼差しを向けないでくれ……。

 

「どこへ出かけますか? クレアさん」

「そろそろ新しい服が欲しいので、アパレルショップとか行きたいなーって」

「いいですねー。せっかくなので、友太に選んでもらいましょうか」

「え……?」


 マジで言ってます?ファッションに微塵も興味がない俺にそんな事を押し付けるんですか?

 

「それいいですね。友太君はどんな服が好みなのか気になっていたので」

「友太。選ぶまで帰さないからね……」

「わかったよ。選べばいいんだろ?その代わり俺センスないからな?」

「いいよ別に。友太が選んでくれたってだけで嬉しいんだから」

「そうそう」


 本当に良いのかなぁ?めっちゃダサい服を選んで怒られないか心配だ。


 俺も久しく服を買ってないし、この機会に服を何着か買うか……。なんか三人で出かけるのちょっと楽しみになって来たな。


「それでパーティはどうしますか?」

「アパレルショップ行った帰りでいいんじゃないか?」

「帰り遅くならない?」


 アパレルショップ行った帰りだと朝から行けばお昼には帰って来られそうではあるが、問題は場所である。


「植野さんの家とかどうですか? 私達なら多少遅くなっても、うちの家には親がいないので」

「あー……。優奈の家か……」

「何? 私の家嫌なの?」

「いやそう言う訳じゃないんだけどさ」

「大丈夫。GW中は夜遅くまでお仕事だからいないよ?」

「なら、良かった」


 クレアが不思議そうに首を傾げる隣で俺はほっと胸をなでおろす。優奈の家には俺が小学生時代から苦手だった人がいるのだ。


 できればその人とは会いたくなかったのだが、家にはいないという事なので安心して優奈の家に行ける。


 というか優奈の家に行くのって何気に初めてじゃないか?小学校時代でも一緒に遊ぶときは外が多かったので行く機会はなかった。まぁ俺の苦手な人がいたからって言うのもあったのだが……。


「じゃあ決まりだな。日程は植野のバイト次第か……」

「うん。また連絡するね」

「私、楽しみですー。こういう風に日本の友達と遊ぶの」

「私もー」


 二人があれをしたい、こうしたいと楽しそうに話をしていると、昼休憩の終わりのチャイムが鳴り、優奈は自分の教室へと戻って行ったのだった。


「友太君。楽しみだねー」

「おう、そうだな」


 クレアも機嫌よくスキップをするように自分の机へと戻って行った。

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