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21話 妹と幼馴染が言い合った

 友太と話した後私はスクールバックに教科書を詰めて帰る準備をしていた。気づけばほとんどの生徒が教室からいなくなっていた。私も早く帰らなくては……。


 それにしても、大方予想通りで、私の反省しているように見えないは間違っていなかったようだ。友太は心の奥底でこのまま謝らなければ、友達が1人減ってせいせいできるとか考えているんだろう……。それでなければ放課後まで引っ張らなかったと思う。


 でも放課後になってようやく謝る決心がついてくれたようで良かった。帰ってきたらぎゅっと抱きしめて頭を撫でてあげようかな?と頭の中で友太に対するご褒美を妄想していた。


 帰りにまた何か買って帰ろうと考えていると、先ほどまで静かだった教室が騒がしくなる。急に何だろうと教室を見渡すとそこには植野が睨みつけるような眼差しで私の後ろに立っていた。


「あの? どうかしました?」

「クレアさん。少し話したいことがあるの」


 わたしはすぐにその話した内容を察した。間違いなく友太の話だろう……。


 丁度良かった。私も植野と話したいことがあったんだと思い出した。


「ここじゃ話せない事ですか?」

「そうね」


 植野は首を縦に振る。やっぱりそうかと確信する。ならば……。


「それじゃあ場所を変えましょうか」




 やってきたのは学校の屋上だ。お昼には多くの生徒たちが昼食を取ったり、談笑したりと賑わっていたりとこの学校の人気スポットらしい。


 少しの間、お互い黙っていたが、植野の方から話を切り出してきた。


「単刀直入に聞くんだけど、久野原とは本当に妹なのよね?」

「そうですよ? 義理ですけど……」

「兄妹にしては、随分いちゃついてたようだけど……」

「私がただいちゃつくのを好きなだけですよ?」


 呆れたような顔をして聞いてくる植野に対して私は冷静に答える。


 まぁでも、いちゃつくのが好きなだけというのもおかしいな話か……と植野に「そ、そうなの?」と驚いた表情で返事をされた後に気づく。もうちょっといい答え方があったかな……?


「兄妹仲が良いのは良い事ね」

「ええ、だから植野さんが思っているような仲ではございませんので安心してください」

「そう、わかったわ。ごめんなさい時間を取らせてしまって……」


 植野はぺこりと軽く頭を下げると屋上から去って行こうとする。


 あれ?以外と呆気なく終わってしまったなと少し物足りなさを感じてしまっていた。


 この絶好の話し合うチャンスを逃すわけにはいかない……。私は意を決して話しかける。


「私からも1ついいですか?」

「何?」


 立ち止まって私の方を向く植野。


 向こうは、何を私に話すつもりだ?と考えているのか私をじっと睨みつけていた。


「植野さんはなぜ友太君に友達を作ってほしくないと思ってるんですか?」

「なんで……。あぁそっか久野原の家に料理作りを作りに行った時いたんだね。それでなきゃ久野原はあんな慌てなかったし……」

「ごめんなさい。盗み聞きするつもりはなかったのですが……。」


 良かった。友太君から聞いたという事を言う手間が省けてと安堵する。だけどまだ安心はできない。

 

 それにしても植野はとても頭の回転が速いな、少ない情報から私が優太の家の中にいたってわかるなんて……。


「久野原の黒い噂知ってるでしょ?」

「はい。聞いたことありますよ」

「まぁちょっと膨張しすぎてるけど、あれは本当の話で……」


 簡単に昔の出来事を話し、自分のせいで友太が友達を作らなくなってしまったんだと説明する。


 だから植野は友太にはもうあんな思いをするくらいならもう二度と作ってほしくないと思っていると力説した。


 でも私は友太や今の植野の話を聞いていて少し違和感を覚えていた。


「それは本当に貴方のせいでしょうか?」

「どういうこと?」

「友太君は、植野さんが悪いとは全く思ってないと思います」

「何でそう言えるの?」


 急に植野の顔つきが変わった。私から予想だにしていなかった言葉が出てきて、怒らせてしまったんだろうか。それでも構わない続ける。

 

 ごめんね友太君。私は今から友太君との約束破っちゃうね……。


「多分友太君は自分の事で誰にも迷惑をかけたくないから、友達を作らなくなったと思うんです。だから貴方を遠ざけたのも友太君の優しさだと思いますよ」


 唖然とする植野を無視して私はさらに続ける。


「それに私は友太君には友達を増やしてほしいと思ってます。だってこのまま友達がいないまま孤独に終わるなんてかわいそうですし、みんなには友太君がとても優しい人なんだって知ってほしいから……」


 意気揚々と友太から絶対に言うなと言われていた事を植野に話していると、聞いていて我慢ができなくなったのか、どんどんと表情が険しくなっていく。


「友太の事を何も知らないくせに勝手な事言わないで!!」


 植野は私に今にも殴りかかりそうな勢いで近づいて言い返す。


 正直とても怖くて逃げだしたい気持ちだったが、ここまで来て逃げるわけにはいかない……。


「勝手な事を言ってるのは貴方ですよね? 友達を作らないで欲しいって……」

「それはそうだけど……」


 意表を突かれた植野は少し戸惑った表情で顔を下に向ける。


 この様子だと植野の奥底にも勝手な事を押し付けているという自覚はあったのだろう。それでも何か自分の気持ちを抑えきれなかったんだろうと思う。それじゃなきゃ彼女はあんな表情をしないだろう……。


「植野さんは友太君の事を縛って何がしたいんですか?」


 ついに奥底にしまっていた本音を漏らしてしまう私。正直自分でもこんな事は言いたくなかったのだが……。それでも言わない手はなかったのだ。


 それを聞いた植野は、私の言葉についに我慢ができなくなったのか、植野は怒り狂った獣のように勢いよく私の制服を掴み上げる。


「さっきから聞いてれば、あれやこれや勝手な事言って……。最近友太の前に現れた分際で知った口を聞かないでよ!!!」

「わ……私は友太君の妹だから……」

「妹? 笑わせないでよ……。義理でまだ日本にきて一週間も経ってないのに……」

「それでも私は……友太君の妹だから!!!」


 まずいこのままだと私は噴火した植野さんに何をされるかわからない……。


 友太のためとは言え、少しやりすぎてしまったみたいだ……。ごめんね友太君私調子乗りすぎちゃったみたい……。


 怖い……怖いよ……助けて……友太君……。恐怖で目から涙流れそうになったその時だった。


「お前ら何やってんだ!!」

「友太君!?」

「久野原……」


 願いは通じるものなんだ……。屋上のドアが勢いよく開いたかと思うとそこには息を切らして立っている友太の姿があった。

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