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48 倒れる

欠落がありましたので同日11時台、再度載せ直しましたm(_ _)m

 最早町だ。たった1週間で町ができてる。


 そう、ポムエット公爵家に大勢の獣人が現れてから一週間。

 獣人達はルトルヴェール王国、近隣にある未開の島に町を築いていた。

 魔法で構造物を作り、そのスピードは目まぐるしい。

 “使徒様のお屋敷” と言って中心には“城”のような見たこともない豪華な建物まで出来上がっている。


 彼らは“結界(シールド)”という魔法を使い、魔物と戦わずして陣地を確保することができた。ただし、その力は一時的なもので長くは続かず、広範囲には及ばない。


 先見隊が島へ転移し現状を確認すると、彼らはまず土魔法が使える者達で頑丈な壁を作った。

 その範囲を少しずつ広げ、中に紛れてしまった魔物だけ討伐し、押し出し方式で少しずつ領土を広げる。

 この作業に一番時間がかかったという。

 ルトルヴェール王国、王都程の敷地が確保できると、今度は魔法で家を作り始めた。

 食べ物は塀の外で、魔物を狩っているという。

 もう1週間肉ばかり、彼等は満足そうだが畑作りは急務だろう。


 彼らが人間に封印されていたって?


 獣人村の村長の話が信じられない程、彼らは様々な魔法を知っており、またその魔力量も強大だった。


 属性に頼らず魔力のみで使える魔法など、現代では失われている。


 しかし長く封印されていたせいなのか、その前後の記憶は曖昧で、獣人の国は滅びたことしか覚えていないそうだ。

 まずは衣食住、だと言うことで急遽この大掛かりな町造りが、白い声によってポムエット家に転移させられた獣人全員、総力を挙げて取り組んでいるーー。





 その間、ルトルヴェール王国としても、遊んでいたわけではない。



 まずーー

 私は疲労から倒れた。


 そう、庭に大勢の獣人がいる状態で、全て投げ出し倒れてしまったのである。


 意識のない間も、レオンがラーダと一緒にずっと面倒を見てくれたそうだ。

 目覚めた時、二人に抱きしめられた。

 レオンが泣いているところを、初めて見た。

 私は3日間も眠っていたらしい。

 レオンの目の下は青紫色をしていた。


 私が目覚めたと聞き、すぐにカミーユ様がいらした。

 “過労”と“心労”も相当なものだと診断され、よく栄養をとって休養するように言われたのである。

 お父様とお母様も心配した表情で駆けつけ、二人とも何か言いたそうだったが“今はよく休みなさい”と柔らかく微笑んだ。

 話さなきゃいけないことは沢山ある。

 もう陛下から聞いてしまっただろうか。

 でもこの世界で大切に私を育ててくれた両親に、例えもう知っていたとしても、他人からの言葉でなく自分の口から話したい。

 受け入れてもらえないとしても。

 自分で言わなきゃ。


 怪我なら魔法で治せるのに、心はどうしようもない。


 こうして部屋に隔離され、外からの情報を遮断された。

「獣人さん達はどうなったの?」

「今は休め、彼らは大丈夫だ」

「ちょっとだけ外にでてーー」

「お嬢様! 怒りますよ! 今はベッドから出てはなりません」

 こっそり抜け出そうとすればーー

「ほら、テレシアこっち来い。特別に添い寝してやる。療養中だからな。尻尾触ってもいいんだぞ」

 そんなやり取りで、最終的にベッドで魅惑的に尻尾を揺らめかすレオンの誘惑には勝てない。


 一週間、部屋の中、しかもベッドからすらほぼ出してもらえず、本ですら読んでいいのは創作物のみ。調べごとは駄目。

 “魔王だと断罪された宮廷魔導士は二度目の人生で最強優良魔王になる“

 なんてファンタジー本を読破してしまった程だ。

 "膨大な魔力を持った主人公が人生をやり直す"という部分が自分と似ていて、思わずハマってしまった。この物語りを綴った人物は転生者なんじゃないかと思った程だ。


 そんな日々を過ごし、一週間ぶりに部屋の外へ出たら獣人達に捕まり、突然転移と転移を繰り返し、ここへ連れてこられたと言う訳だ。






「あ、あんなに難航していたのに、こんなにあっさりと獣人さん達の安心安全な暮らしが手に入るなんて……」

 隣には、今日もレオンがいる。

「数が数だからな」


 そして“七尾の賢者”ーーその内の5名も。

 封印されていた獣人の中に、“七尾の賢者”と呼ばれる者がいて、彼らがこの開発の指揮をとっていた。

 1人1本ずつの尻尾が7本で7尾。

 7本の尻尾が交差しているところ想像すると、中々可愛らしいネーミングである。

 あの日、庭で最初に私を“使徒様”と読んだのも、サーチを使用したのもこのメンバーだったらしい。

 “使徒様”とは、彼等にとってそれほど大きな存在なのだろうか。

 わからないことばかりだ。


 “使徒様のお屋敷”として建てられた城まがいの建物から程ない距離には、立派な神殿も建てられている。


 彼らは、産まれながらに自身の属性の魔法を全て使いこなし、その魔法を後世に伝えていく役割を担っているのだとか。

 “七人の賢者”が一人でも欠けると、その瞬間次の賢者がどこかで誕生するーーと。

 そんな重大な役目を担った人物が封印されてしまっては、そりゃ魔法も廃れる……と話を聞いた時思った。


 残り2人の賢者が誕生していないことから、どこかで生きていのだろうと言う話だったが、フリアンディーズ領にいた獣人達のように、薬漬けにされてしまっていると、隷属契約のように記憶を奪われていると、自身のことがわからなくなっているだろうとのことだった。



「それだけではございません。獣人達の知恵により、各国獣人達の隷属契約解除、及び獣人達の魔力測定も行われることとなりました」


「カミーユ神殿長……」


 相変わらず白いベールを顔にかけた彼は、表情が読めない。


「テレシア様がお休みの間、異例の各国主要人物での会合があり、その末端に私も加えていただきました」


 “末端”と言いながら、唯一の神が信仰されるこの世界で、実質トップであることを知らないものはいない。しかしカミーユは、神の意思である事項以外ではその権威を振るわないが故好ましく感じるのかもしれない。

 そういえば、私とカミーユ神殿長の婚約ーー?

 その話はどうなっただろう。

 当のカミーユは、もう聞いているのだろうか。当然ながらその表情は読めない。


「獣人達の契約が解除されたら、“結界”はどうなるんだ? 特に小さな村は困るんじゃーー」


 レオンが口を開く。

 本当だ。

 ぼーっと、獣人さんが隷属契約解除されるならよかったなぁなんて思っていた。

 彼の方が頭の回転が早そうだ。


「獣人達の安全がわかったところで、一旦ルトルヴェール王国へ戻りましょうか、テレシア様。レオンさん。陛下も、騎士団長方もテレシア様にお会いしたがっております」


 もちろん、休憩を挟みながら。とカミーユ神殿長は付け足した。


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