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【間話】ソフィアとテオ

恋愛系のお話になります。

「ごめん、婚約は破棄しよう」

 そんな言葉を紡ぐ日が来るなんて、夢にも思わなかったーー。





「みてて! ソフィアー」

 訓練場で小さな身体が真新しい木剣を勢い良く振り下ろす。いつか立派な騎士になるんだと、幼いその笑顔は輝いていた。


 クララック伯爵家とミュレー侯爵家は、親同士の仲が良かった。お互いの子供が異性だったら一緒にさせようと話していた両家は、早々(はやばや)と幼い子供達を婚約させた。


 いつから一緒にいたのか、物心つく頃には隣にいつもテオがいた。

「ソフィアはいつも色んな本、読んでるんだなー」

「テオも読んでみる? 元騎士の冒険記をこの前読み終わったのだけど、知らないことばっかりで面白いのよ」

「おれは、本読んでると寝ちゃうからなぁ。ソフィアが読んで聴かせてよ」

「まぁ、テオったら」


 照れ臭そうに笑うと、素振りに戻って行く。テオにはもっと、野原を駆け回るような女の子が向いているんだと幼心にわかった。もっと幼い頃は自分もそうだったかもしれない。しかし令嬢としての在り方に厳しい母は、それを許さなかった。いつの頃からかテオの訓練の間、私は端に座って本を読むのが習慣となり、そんな私にもいつも興味を示してくれた。

「おれ勉強も礼儀作法も苦手だから、ソフィアが得意なら助かる!」


 結婚や恋がどういうものか、お互いにわからなかったが、婚約したのだからこのまま大人になっても一緒にいるんだということだけは理解していた。

 勉強嫌いなその様子にクララック伯爵夫妻は頭を抱えていたが、テオの正直で真っ直ぐなところは最大の魅力だ。


 魔力測定の日ーー

 一緒に行く約束をしていたテオは寝坊したらしく、先に行くよう知らせが届いた。

 一人で入るのは心細く、ちょうど目の前を歩いていた女の子の後ろをついていくと、目の前の少女は奥に座る少年と挨拶を交わしていた。色素が淡く線が細いその男の子は薄く微笑み、何とも儚げだ。

ーーこんな男の子もいるんだーー


 それがエリアス・ランベールに対する第一印象だった。


 少し日焼けした肌に白い歯の見えるお顔が眩しいテオとは随分違う子もいるんだなーー


 あとを追っていた少女が母の教え子であるポムエット公爵家の令嬢だと気付き声をかけると、奥にいたエリアスも口を開き挨拶を交わした。

 こうして3人は友達になった。


 テオにその事を話せば、彼も隣り合った子達と仲良くなったのだという。

「一人は、おれと同じく騎士を目指しているそうなんだ! それで……ソフィア、しばらくそいつと訓練するから、会う日を減らしたいんだけど……」

「わかりました。訓練頑張ってね!」


 毎日のように会っていた二人は、週に1回、月に1回と段々会う日が減って行った。

「どうせ、学園に入学したら毎日会えますもの……」

 寂しさを紛らわすようにテレシアへ手紙を送ったが、そちらも返事は来なかった。

「テレシア様はしっかりしているけれど何かに夢中になると周りが見えなくなってしまう癖があるの。単純に忘れてしまわれたのかもしれないわね」


 お母様がそう仰ったのでランベール公子へも手紙を出してみると、やはりテレシア様からの返事は返ってきていないとのことだった。


“ランベール公子様はどの様な本をお読みになりますか?もしおすすめの本がありましたらお教えください”


 そんな一文を手紙に添えれば、手紙と一緒に本が届いた。

"おすすめの本をお送りします。興味がなければそのまま送り返してください"


 それはある神官が各国の神殿を魔法を使わず歩く冒険記だった。元騎士の冒険記は読んだことがあったが神官のものは初めてで夢中で読み、その旨を手紙に綴るとまた違う本が送られてきた。

 本の趣味が合うことから、入学まで手紙と本のやり取りは続いた。




 学園に入ると、最初の講義でテオにテレシアとエリアスを紹介した。

「ランベール公爵家にポムエット公爵家! すごい人と友達になったんだな! ソフィアはすごいなー」

「テオだって、もうお友達じゃない! 勉強がんばりましょう」


 テオからは、トーマスとエレナと言う二人を紹介された。

「婚約者のソフィア・ミュレーです。よろしくお願いします」

「まぁ、テオに婚約者がいるって本当だったのね! てっきり見栄を張っているのかと思っちゃった! よろしくねソフィア! 」


 男爵令嬢だという彼女は、初対面から呼び捨てだった。でもまだお互いに6歳、お母様には"これから学園で礼儀作法を初めて学ぶ子も多いからあまり気にしないよう""ソフィアはお手本でいなさい"と言われていたこともあり、目を瞑ることにした。


 エレナは、少し日に焼けた肌に屈託なく笑う少女で、トーマスとテオに影響されて共に騎士を目指すのだという。その自由さが眩しく見えた。



 テオ、私、テレシア、エリアスの4人で座ると、次第に講義中のテオは寝ていることが増えていった。

 一緒に食事をとっていても、テオだけ話についてこれないことも増えた。


 トーマス、エレナ、テオで座っていると、講義中何やら小声で話しているようだが起きている姿も見られるようになり、段々テオは彼らと、私はテレシア達と過ごす時間が増えていった。

 それでも時々会えば、真っ直ぐに騎士として成長していくテオに、私も負けないよう学ばなくてはーーそう思った。



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