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32 深まる謎2

 王城にある訓練場に来ていた。

 フリアンディーズ地方の調査はそのまま行う、今日はこの後エルの魔法を確認する方向で話はまとまり、陛下、お父様、ランベール公爵、タイラー卿は別の会議があるらしく解散となった。


「テレシア様、申し訳ありません。私もお供したい所でございますが、隣国へ向かう支度があるためお先に失礼しなければなりません。ウッドリィを置いて行きますので、何なりとお申し付けください」


「カミーユ様! 私は確かに神官ですが、この様な小娘の……いえ、無論公爵令嬢ではありますがこの様な未熟者の指示に従うつもりはーー」


「口を慎みなさいウッドリィ。彼女が幼なくとも、私と同じように神より特別な“名”を授かった事実は変わりません。何度も教えていますが“名”は世の中に必要であるからこそ授けられたのです。彼女の歩みにこそ神の示される未来があります。聡明な年長者であるあなたなら、きっとその能力を役立てられるはずです。どうか彼女達に協力してください。あなただから頼めることです、ウッドリィ」


「カ、カミーユ様、それ程このウッドリィを信頼してくださっていたなんてーー」


 ポタタッ


 何かが落ちた。鼻血!? 

 見れば鼻と口元を手で覆ったウッドリィは、カミーユの神々しいまでの笑顔と厚い信頼に鼻血を流して喜んだ。


 その様子を、騎士団長達と共に冷ややかな目で見てしまったのは仕方がないだろう。






 レドアラン公爵も別の会議に出席するはずが「こっちの方が面白そう」等と言ってタイラー卿に会議出席の代打を任せていた。

 第二騎士団長と言う立場にありながら何故あれ程謙虚なのかと思えば、普段から今回の様な代打が頻回されているとしたら、萎縮する癖がついてしまうのは無理もない。



「まずオーブから作ってみよう」


 ウィント卿がオーブの作り方を学園の講師顔負けな程丁寧に教えていく。ちなみにエルと一緒に、レオンも訓練場に立たされている。

 ポムエット公爵家に使いを出し、レオンの隷属契約書を取りに行かせていた。契約を破棄すると本当に魔法が使えるか検証するため、先に魔力の使い方を一緒に教わっていた。


 ただ……私と一緒に授業を聞いてきたから、一通りわかってるはず。


「我に宿し力よ、その末端を顕現せよ。オーブ」


 両手を構え集中するが、レオンの手の間には何も生成されない。


「ダメだ、そもそも魔力の流れなんてものが何もわからない」


「ボク……なんだかわかる気がします。手のひらがぽかぽかしてきたような……」


 するとエルの手の間には小さな光が点滅し始めた。


「良し、そのまま、握り拳ほどの丸い形をイメージして維持するんだ」

「握り拳……ヒッ」


 小さな悲鳴と共に点滅していた光は消えてしまった。


「どうした?」

「ウィント様、エルは“握り拳“が怖いのではないかと思います」


 ふるふると身体を震わせ耳はすっかり怯えた様に倒れフラッシュバックを起こしているようで、レオンがエルを抱きしめ宥めるように背中をさすった。


「大丈夫、大丈夫。ほら、同じ獣人の俺が言うんだ。大丈夫、もう怖いことはない」


 






「これじゃぁ、魔法が使えてもぉ役に立たないんじゃなぁい?」

「そんな言い方はよせ、アメスクア卿。これは人間のせいだ。獣人をこれまで軽視していた我々が引き起こした事態だ」

「えぇーー、ウィントってば相変わらず地獄耳ぃ! くぉわぁーーい」

「……でも、オーブ、作れそうだった。魔法が、使える獣人がいる、これだけで、十分意味がある……」


 遠巻きに見ているアメスクア卿の声を拾ったウィント卿が、訓練場真ん中付近から声を返した。

 恐ろしい程耳が良いが、クロイツ卿のつぶやき声までは聞こえなかったようだ。



「ごめんなさいもう一回やってみます。レオンさん、ありがとう。ウィント様、お願いします」





「テレシアちゃんは、2歳の頃のことをはっきり覚えてたよね。それより前の事も覚えてるの?」


 訓練場を眺めながらレドアラン公爵がさらりと問いかけた。


「ぅわぁーー、私ですらぁ空気読んで聞かなかったのにぃ」

「ご想像にお任せします」


 赤い髪を襟足でほんのちょっと縛った公爵は、陛下と同じ年頃に見えるのに悪戯っぽく微笑んだ。


「カミーユ様でさえ幼少期は我々と同様、記憶が朧気だそうでございます。“獣人の守護者”故、それもまた何かの思し召しなのかもしれません」


 まともなこと喋った! ウッドリィ神官が様子のおかしい以外のところを初めてみたかもしれない。


 しかし、その鼻には詰め物がされていて……台無し。


「できた! できました!」


 声のする方を見ると、エルの手の間に風の色をした光の玉が浮かんでいる。


「風属性だな。上空へ手をかざしこれから私の言うように唱えれば、離れた仲間にも合図として使うことができるからやってみるんだ」


 上空に綺麗な薄黄緑色のオーブフラワーが二つ咲いた。ウィント卿も風属性なんだ。


「凄い凄い! 獣人ちゃんもぉしっかり訓練すればぁ、立派な戦力になるんじゃなぁい?」

「ーー身体能力は……人間より……高いはずだしな……」


「ぼっボクがですか!? 暴力は怖いけど……そうだったら、嬉しいです」






「神殿の、魔力測定で使う玉は獣人には使えませんか? 人と同じ様に魔力があるなら……と思ったのですが」

 ふと、思ったことが口をついて出た。属性も、魔力量もわかるし早いと思う。


「ーー! 確かに、そうです……ね。いかがでしょう。ウッドリィ神官」


「……あれは全員使ったことがあるため安易に考えていらっしゃるかもしれませんが、神より賜りし創世の時代より受け継がれる代物です。そうでなくともいくつか割れてしまい、ルトルヴェール王国でも他国でも、小神殿に置かれていたものが減りつつあります。万が一人間以外の種族が触ることで割れでもしたら……私の独断では判断しかねます」



「万が一、魔力測定を使用するとしても隷属契約は破棄してから触れたほうが賢明だろう。ただ、隷属契約が何故魔力を封じていたのか、契約主に手を出すことができない以外の効力について詳細な確認をしてからでないと、迂闊に契約破棄の状態を維持することも得策とも思えないねぇ」


 チャラけた雰囲気を潜めたレドアラン公爵は語尾こそ柔らかい口調だが、その赤い瞳は鋭く光る。


「レっ、レオンの契約を破棄しようとしていますが、大丈夫なんでしょうか……」


「エルを見た限り……身体には、問題なさそう……」



 訓練場ではいつの間にか、ウィント、エル、レオンで木剣の素振りが行われている。エルは剣を握るのは初めてなのか、怖いのか、子鹿の様に小刻みに震えていた。



「こちらにおいででしたか。お嬢様、王城からの使いによりお申し付け通りレオンの隷属契約書をお持ちしました」


 騎士服姿のグレープが、紫色の猫耳を背後を警戒した様子にしながら歩いてきた。


「グレープ! 持ってきてくれてありがとう」


「しかしーー、レオンの隷属契約書を一体何に使うんですか?」


「今にわかるよ」



 レオンの隷属契約書……。学園に入って1年が経った頃、お父様から私へと契約し直した契約書は数年が経っても当時のままだ。


「テレシア・ポムエット公爵令嬢、それでは頼みます」

「はい。レオン、行くよ」

「ーーあぁ」


 レオンと向かい合って立ち、互いに契約書の端と端を持つと魔力を流していく。


「我、テレシア・ポムエットは当獣人との隷属契約、破棄をここに宣言する」



 契約書は輝いた後、光を纏いながら端から崩れていった。






「……え、これだけ?」


 拍子抜けだと言わんばかりに、レドアラン公爵の声が静まり返ったその場に響き渡る。


「はい。これでレオンと私の隷属契約は解除されました。破棄を見るのは初めてですか?」


「まぁそぅよねぇーー肝心なのはぁこの後でしょ」




「ではレオンくん、先程教えた通りにもう一度オーブを作ってみましょう」

「はいーーウィント様」


 手を構えてオーブの詠唱をするとレオンの手と手の間に小さな光ができた。


「「「おぉーー」」」


「本当に魔法が使えるーー獣人が」



「ウィント卿、急ぎ会議中の陛下に報告を!」

「かしこまりました」


 レドアランに命令されウィント卿は走って行った。


「お……お嬢様、これはどう言うことでしょう」


「これは国家機密です、グレープ。今見聞きしたことは誰にも話しちゃダメですよ」

「……はい」


「これはぁ~神殿でぇ獣人の魔力測定してもらっちゃうしかないんじゃないですかぁ?レドアラン公爵様ぁ。ウッドリィ神官様ぁ」




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