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30 会議2

 意味がわからず一斉に資料を見ると、地名の書かれた、どこかで見覚えのあるグラフがあった。

 あ、獣人を愛でるチームにいたライラ先輩の書き方にそっくりーー

 この世界に産まれて以降初めてみた、前世と同じようなグラフ。卒園したライラ先輩は、この書き方を好んでよく使っていた。


「資料は“獣人の守護者”が現れてより調査を始めた獣人の所在地とその数について、流動的ではありますが6年の歳月をかけて特務団がウィント卿率いる第四騎士団と共に調査を行いまとめたものです」


「ーー王都とフリアンディーズ領に随分獣人が偏っているんだな」


 そういえば、キャロリーヌ様は獣人を保護しているって話してたっけーー?



「そしてこちらの地図をご覧ください」


 机の真ん中に地図が広げられると、レドアラン公爵が驚いた様子で立ち上がった。


「そんなーーランベール公爵、これは……」


「お気付きでしょう。この地図には騎士団の派遣要請があった場所を示しております。昨今()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のです。“獣人の守護者”の出現は神殿より他国主要人物にも伝わっており、同様の調査が行われました。ポムエット公爵の報告によりますと、他国でも同様の結果が出ているとのことです」



「「「ーー!!! 」」」


「なるほどぉ。フリアンディーズ領の獣人はぁ、辺境地の悲劇以降にぃ、増えたってことですかぁ?」

「残念ながらこれまでこの様な調査は行われてこなかったためわかりかねますが、その可能性はあるかと」



 最近王都にある我が家(ポムエット公爵家)には獣人がこれまで以上に集まっていた。ツテのある貴族は獣人の法案を漏れ聞き「お譲りしたい」「引き取ってもらえないだろうか」と取引きを持ちかけることが多く、神殿の治癒師をそういった目的(痛めつけた獣人の治療)で呼ぶことが難しくなってきたこともあり“ポムエット公爵家は負傷した獣人を引き取ってくれる”と王都内外から集まりつつあった。

 私が治癒を使えることは公になっていないが、負傷している獣人さんはもちろん治している。


 法案発表前だから、まだ罰することはできないんだよねぇ

 


「更にフリアンディーズ領については、獣人商人がここから来ているのではないかという疑惑も浮上しました」


 真剣な面持ちで陛下が頷き指示を出してきた。


「ポムエット公爵家に獣人が集まっている件は把握している。フリアンディーズ領については早急に、しかし内密に調査を行うべきだろう」



「テレシア嬢はキャロリーヌ・フリアンディーズ嬢と学友だと聞いている。遊びに行くという名目で現地へ赴いてもらえないだろうか? 」

「そんな……」


 キャロリーヌは友達だ。疑うなんて……

 唇をかみギュッと手を握りしめると、レオンが手を重ねてきて小声で言った。


『血が出るぞ……フリアンディーズ領で何か起きているだけで、キャロリーヌは関係ないかもしれない。しっかり調べて、潔白を証明すればいいんだ』


 諭すような金色の瞳を見てコクリと頷く。


「……わかりました。キャロリーヌ様とお話ししてみます」


 そう、力強く返事をした。

 レオンの言う通り、キャロリーヌ様が獣人を保護した中で悪いことしてる人がいるだけかもしれない。


「調査にあたり娘の護衛は我が騎士団(ポムエット家)より腕の立つものと、獣人騎士団の一部であれば不自然はないでしょう」


「文官からも頼りになるものを同行させましょう」


「並行して神殿からも辺境伯領への治癒師派遣と称し、調査していただけないだろうか……どうだろうカミーユ」


「それでしたら、こちらのウッドリィが適任かと思われます。こう見えて魔力量が多い上、分析力も高く優秀でございます」


「カミーユ様……! 光栄です。お側を離れるのは心苦しいですがお任せください」


「私はどちらにしても隣国へ赴かなければなりません。私の代わりだと思って、頼みましたよ」


 綺麗な……見事な営業スマイルを浮かべるカミーユだったが、心酔した様子のウッドリィにはそうであっても関係ないのかもしれない。


「辺境伯領は遠方となる。調査の件もある為王国騎士団も神官の護衛と称し現地に赴くべきだがーーさてどうしたものか」


「はいはいはーい! 俺が行きまーす!」


 レドアラン公爵が元気よく手を挙げるが、陛下が首を振る。


「お前が出てしまっては業務が滞るだろう。ーークロイツ卿、どうだろうか。第三騎士団の中から卿と数名を選抜して同行してもらえないだろうか」



「……仰せのままに」


「そんなぁーーっ! テレシアちゃんとお近づきになりたかったのにー」

「娘に近寄るなレドアラン!」


 叱られた犬のように大袈裟に落ち込んだ素振りをするレドアラン公爵と、小さな声で返事をしたクロイツ卿がタイラー卿の後ろで何やら内緒話をしだした。何を話しているのかは、こちらには聞こえない……


「わ、私は一体何故ここにーー」


 背後で内緒話をされるタイラー卿は、本日何度目かわからないセリフを独りごちた。


 これで会議は終わりと思ったその時ーー






 ノックの音が響いた。


「会議中失礼します! ポムエット公爵令嬢がお連れになった獣人について、報告がございます」

「入りなさい」


 入ってきた騎士は何故か髪型が乱れていたが、学園で私が獣人を保護した経緯を子供の獣人視点で説明した。

 


「そしてーー、勘違い……ではないと思いますが、明確で無い報告をお許しいただきたいのですがーー」


「ーーもう少しシャキッと話して欲しい……」

「はいぃぃ! 申し訳ございません第三騎士団長! 」


「いいからぁ、報告してくださいなぁーー」


 騎士はゴクリと喉を鳴らした後爆弾を落とした。




「その獣人の子供が、魔法を使いました」




 《《魔法を使えないはずの獣人》》が魔法を使ったーー騎士はそう、報告した。





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