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23 【ライラ】規格外な新入生

長らく更新がなかったにも関わらず、足をお運びくださりありがとうございます。評価、応援励みになります。

順次投稿予定です!お読みいただきありがとうございます!

 私はライラ・モンド。

 獣人を愛してやまないしがない男爵家の一人娘。


 子供の頃お父様に連れられた王都で初めて出会った獣人達…。

 もふもふの尻尾!

 頭にお耳!!!

 いつかあの尻尾に触れてみたい……!

 うちには獣人を買い取る余裕はないけれどいつか……!


 6歳から7歳になる年に小神殿での魔力測定が行われると、私にも魔法の適性があるとわかり両親は諸手を挙げて喜んだ。


 学園に入ると講義の他に“チーム”という団体活動の時間があった。


 まさか学園にこんな素晴らしいチームがあるなんてーー


ーー獣人を愛でるチームーー


 獣人の従者どころか、お話したことも、あのピコピコ細やかに動くお耳、ふわふわの尻尾に触れたこともなかったが、歓喜し迷わず加入した。


 先輩方は獣人を自慢したい方が多く、従者の獣人とお話したり尻尾やお耳を触らせてもらえる機会もあった。


 なんという滑らかな手触りーー

 きめ細やかな毛波!

 愛らしいお耳や尻尾は感情に合わせて向きが変わるのねーー!


 綿毛のような獣人、ちょっと毛がごわごわした獣人、毛が薄く短毛なのかツルツルの手触り、サラサラ、むっちり、しっとり……

 私は毛の密度が濃いむっちりが好みかなーー。


 彼等(獣人達)との触れ合いは感動の嵐だった。

 尻尾を手にとってスンスンと匂いを嗅いだときは、主に命じられているとは言え流石に嫌な顔をされたがーー

毛がお日様の光をたっぷり吸収するのだろうか、焼きたてのパンのような香りがしたーー


 先輩方は獣人を着飾ることがお好きで、尻尾が窮屈にならないような獣人専門の衣装店、宝石商を網羅していた。中でも、獣人専門宝石商の“リト”はセミオーダーが半年~1年待ちの人気ぶりで、いかに独自性のあるデザインや稀少な宝石を使うかで獣人好きの度合いが決まるのだと激しく語られることが多々あった。



 一方、学園内で暴行を受ける他の生徒の従者獣人を先輩方は庇うことはなく、獣人の生い立ち、由来、どこに何人いるのかーーそういったことには一切興味がなかった。

 ただ“美しく着飾り連れ歩くこと“が“自分たちのステイタス"なのだと。

 学園内では“生徒間による身分毎の上下関係を作らない”こととなってはいたが、力のない男爵家の私には可哀想でも助けてあげることは出来ない。




 折角チームに入ったからには私も情報を集めなきゃ!

 ニ年目は先輩方口頭で伝わる衣装店や宝石店を一覧にまとめた。

 三年目は王都には“獣人お断り”の店もあるらしく、それらをまとめた。



 獣人は稀少で価値が高いというのに暴力をふるう貴族が多いことも疑問で、講師の先生方に頼み込み、四年目は学園の生徒にアンケートをとった。


 寮に獣人を連れてきているかどうか

 何人連れているか

 自宅には何人いるか

 死別は何人か

 貴族は領地、タウンハウス別の人数

 獣人専用のアクセサリーはつけているかどうか

 着用させている人は何個つけているのか

 獣人衣類の愛用店

 獣人の入手経路は何年・どこで・誰から

 毛色、目の色…………


 等々、少し自慢したくなる内容も盛り込んだ内容で配布してもらい、講義外の時間を何日もかけて一人で集計した。


 大変だったし嘘も混じっているかもしれないが、毎年続けよう。


 そんな活動を繰り返しーー数年。

 私がチーム長補佐に任命された。


「あなたの熱意には負けたわーー」


 残念なものを見るような目で前任のご令嬢に言われたが、気にしない!

 チーム長補佐になったら現地調査等も交渉して行けるかもしれないーー!


 初めてのチーム長補佐になった年、気になる新入生の噂もあり浮かれて夜中々寝付けない日が続いた。待ちに待ったお披露目の日がやってきた。広いコロシアム状の訓練場を上の席から見下ろし、獣人の従者連れの生徒をメモしていく。


 ーー今年は少ないなーー


 そんなことを考えていると、輝くような金髪の少女の横に黒髪の獣人が付き従い、周囲より頭の飛び抜けた茶髪の獣人が何やら話しかけていた。


 見つけた! 話題の獣人大好き公爵令嬢!

 黒髪の獣人さんは初めて見る!

 お屋敷には10人を超える獣人が暮らしていて、公爵邸内のお仕事を自由に選べるって聞いたけど本当かな?


 学園にも“うちのお父様は公女様に獣人をお譲りしたんだぞ”と偉そうに話している生徒がいたから……もしチームに入ってくれれば、お屋敷に訪問できないか交渉したいーー!



 会場に夜空に輝く星のように光の玉が現れ始め、はしたなくも「ぶっ!!!!」と口から不恰好な音が漏れ周りからジトリと見られた。


 何あれ何なのーーーー!?

 公女様、隠れるようにしてるけど4色のオーブを浮かばせてるーー!

 4属性? そんなことあり得るの!? 一体何者!?



 オーブフラワーの詠唱があたりへ響くと色とりどりの光の花が咲き乱れ、目立たなくなったがしっかり見てしまった。

 





 チームアピールの後、はやる気持ちを抑えながら、しかし他者に先に声をかけられるわけにはいかないと、目的の人物を目掛けてまっすぐ歩くーー。



 その人物はちょうど、どのチームに入るか談笑していてーー


「ーーそこの獣人を連れたあなたーー」


 勧誘すれば、元気よく喜んで、と返事が返ってきた。

 その後茶髪の獣人を連れたキャロリーヌという少女も加入し、なんとこちらは辺境伯のご令嬢!

 しかも従者によれば、辺境のフリアンディーズ地方で獣人の保護をしていると!


 今年は、大物新人が続々だぁーーーー!

 心の中で10回はガッツポーズをした!








 ポムエット公爵家への訪問は、彼女たちがチームに参加してから数ヶ月後のある週末、思った以上に早く叶った。

 これを逃すと、公爵令嬢は週末、毎週予定が入るんだとか。毎週末暇な男爵令嬢(じぶん)と比べてしまう。


公爵家ともなると6、7歳の子供でも忙しいんだなぁーー……




 

 獣人を愛でるチーム全員が公爵家と関わりが持ちたいと、訪問を望んだが流石に迷惑になってしまう。自分と数人、テレシア嬢のお友達のキャロリーヌ嬢、獣人の従者がいる者は連れて伺うことになった。


 あ、ドレスーー


 何年も新調していないソレはすっかり小さくなっていて、仕方なく制服で行くことにした。


 公爵家へ到着すると、テレシア嬢、キャロリーヌ嬢も制服姿でホッと胸を撫で下ろす。キャロリーヌ嬢はダニエルという茶髪の獣人を連れてきていなかった。

 テレシア嬢に案内されながら、広い公爵邸を見て回る。


「獣人さん達がどんな仕事をしているか興味がおありとのことでしたので、普段通りが良いと思って……ご案内しますね」


 チェリー、アプリコット、マスカット、フィッグ、ドリアン、グレープ、パイン、キウイ、ココナッツ、ネクタリン……これは全部名前だ。テレシア嬢が名付けたという獣人は他にもみんな変わった名前をしていた。


「ど……独特なセンスですのね」

「あはは……名付けに悩んで、美味しそうな名前にしてしまったんです」

「お……いしそうなんですの?」


 踏み込んだことを聞いたキャロリーヌ嬢は英雄だと、メンバー全員同意する。

 レオンさん以外アクセサリーは一つ、ネックレスで統一されていて……


 おんやぁ?


 締まりのないニマニマ口元が緩むのを自覚すると無粋なことを考えてしてしまう。



 キッチンやメイド、書類仕事、本の管理、庭師、馬番……等の見習いと、本当に獣人達は各々色々な業種で、みんな生き生きと働いていた。


「ポムエット公爵家での生活はどうですか?」


「最高ですよ! どことは言えませんが、以前別のお屋敷で別のお坊っちゃまにお仕えしておりました。坊っちゃまが勉強をサボったら代わりに鞭で叩かれる係で……食事も満足にいただけず本当に辛い日々でした。旦那様に荷物持ちに連れられた先でお嬢様とお会いしてからは、まるでずっと夢を見ているかのようです」


「私はよく覚えていませんが、獣人商人に連れられて虚な目をしていたそうです。昔のことは覚えておりませんが、テレシア様のように獣人にも分け隔てなく見習いをさせてくださる方に出会えて幸せです」


 満面の笑顔で話す獣人達、本当に幸せなのだろう。


 訓練場へ行くと、獣人が剣を振っているから驚いたーー。

 騎士志願者なのだという。国王陛下も認可されている取組らしく、内密にするよう話がありまた驚いた。ポムエット公爵家の騎士団と言えば、下級貴族なら喉から手が出る程欲しい地位だったから知られると一悶着ありそう。


 チームメンバーに付き従って同行した獣人従者の中にも、羨ましそうにしている者もいた。



 最後にティータイムをとって、ポムエット公爵家訪問は幕を閉じた。

 有意義な時間だったーー。

 早速今日のことをレポートにまとめなくっちゃ!








 そうこうしている内に、今年も学園内にアンケートをとる時期になった。このアンケートが想定外の事態をもたらす。


「先輩! このアンケートは先輩が作られているというのは本当ですか!!!?」


「え…エエ、そうよ?」


 目を輝かせたテレシア嬢が勢いよく入ってきたかと思うと、手にアンケート用紙を握りしめている。


「項目がとてもよく纏まっていて凄いです! 答えやすいです!」


「まぁ……そう言ってもらえると作った甲斐があるかな。ありがとう!」


「これまでも取られていましたか? 結果はお持ちですか? もしよろしければ見せていただけないでしょうか!」


 アンケートに興味を持ってくれるなんて!

 テレシア嬢は見込みがあるーー!!



「素晴らしい結果です。きっとまとめに時間がかかったことでしょう……! 」


「そっ! そうなのよ!! わかってくれて嬉しいわ! 結果を集計して、項目別年毎に推移を比べてみたの! 」


 我ながらよくできてると思うのに、それがなんの役に立つんだと言わんばかりの眼差しを向けられることが多かった!

やっと理解者がーー


「このアンケートが、分析が、獣人さんにとって良い方向に動くかもしれません! よろしければ、学園外でこの内容を必要としている方に見せても良いでしょうか?」


 突拍子もないことを言う子ね! 学園外でこれを必要としてる人って一体誰かしら?

 しかし軽く許可してしまったことを、この後後悔することになろうとは……







 しばらくすると、王城から呼び出しがかかり制服姿で一人向かった。

 場所はーー特務室。



 嫌な汗が背中をとめどなく流れる。

 王城なんて来たこともない。

 うぇ。吐きそう…。

 扉の前に立つと心の中でつぶやく。

 一体何が待っているのだろう。


 ドアをノックする。


「モンド男爵家のライラです! こちらに来るよう指示を受け参りました! 」

「入りなさい」


 低い声が聞こえ恐る恐るドアを開けると、中には見たこともない男性たちと共に、真正面の上座に神殿服に身を包み頭からベールをかぶった……神殿長がいたーー。



「あなたがこれを作ったのですね」


 四角形に並んだテーブルの空いている席に腰掛けるなりそう言われ、見れば、テレシア嬢渡した資料がーー


「学園内とは言え、これだけまとめるのはさぞ大変でしたでしょう。実に興味深い! 」


 中年の偉そうな男性がそう言うが、あれはなんちゃらかんちゃら伯爵だったか……


「あ、あのっ……な、何かいけないことをしてしまいまいま、ま、ましたでしょうか……」


 目が回る。

 なんでこんな偉そうな人たちの所に私が呼ばれているのーー!?

 動揺して言葉がおかしい。


「あぁ……気を楽になさってください。何も責めていませんよ。むしろ、あなたが愛してやまない獣人のために、是非協力をお願いしたいのですーー」



 唄うように滑らかで心地よい中性的な声が発せられ、ぐるぐるしていたテーブルが、視界がぴたっと止まった。



「えーー?」



 こうして、私は学園内にとどまらず、学園外でも獣人の調査に携わる事となったーー。


 それにしても「学園外でこの内容を必要としている方」がまさか神殿長や特務室の面々だなんてーー

 さらっと紹介しちゃうなんて、いくら公女とは言え子供でしょ!?

 何者なの!?



 本当に、規格外な新入生!!!!



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