これでヨシっと。
さて、鳥取県に居る。
ワープを使わずに辿り着いたので結構疲れた。
隣に立つのは沼袋南。
吉原のソープに居た頃の源氏名はミミ。
「ごめんなさいね、こんな田舎まで来て貰って。
鳥取って何も無いところだから。」
『いやいや、俺の営業先に比べれば大都会ですよ。』
沼袋は申し訳なさそうな顔をするが嘘ではない。
荒野に浮かぶ鉢伏鉱山を思えば、鳥取市は大都会である。
俺達はタクシーで沼袋の祖母が入っている高齢者施設に向かっている。
最後の孝行として祖母に伴侶を見せたいとのこと。
打ち合わせは飛行機の中で済ませてあるので、2人で鳥取の町を眺める。
「あっちは砂丘。」
『有名ですよね。』
「それだけよ。
島根とセットで要らない県。
本当に何もないの。」
『他にも何かあるでしょう。』
「反対側には池があるわ。
湖山池。
中学校の頃、遠足で歩かされた。
疲れたのを覚えてる。
日本一大きい池だから。」
『へー!
日本一!?
それは凄い。』
「まさか食い付いて貰えるなんて思わなかったわ。
でも、今は止めた方がいいよ。」
『何か問題でも?』
「変な宗教団体が集会やってる。
シンセーだのトイチだの、何かキモい。」
『ああ、それじゃあ見物は諦めます。』
狭い町なりに問題はあるそうだ。
市街を抜ける時に吉川経家公の銅像の前を通ったのだが、白装束の集団がタムロしていたので写メを諦める。
「母方が代々市内に住んでた家系なのよ。
父は荒い漁村の出身…
同じ県内でも文化が全然違ったから、実家同士は付き合いがないの。
父は懲役中に死んだしね…」
『今から行くのは母方のお祖母様ですね。』
「結構可愛がって貰ったから。
私の結婚を楽しみにしてたし。」
『ゴメンね。』
「謝ることないよ。
どのみち子供は欲しかったし。」
沼袋の俺への望みは、たまにでいいので父親らしく振る舞いに来ること。
異存はない。
俺が父親に男手一つで育てられた人間だからな。
本当に顔は出すつもりでいる。
「着いた。」
『鳥取城下の一等地ですね。』
「所詮は鳥取だよ。」
言葉とは裏腹に沼袋の表情は明るい。
久々の故郷を彼女なりに楽しんでいるのだろう。
そのおかげか施設の門を潜る頃には、まるで新婚夫婦の様に自然に振る舞えていた。
「孫がお世話になっております。」
老婆は施設の応接室で深々と頭を下げた。
75歳にしては、やや老けているように見える。
『はじめまして。
飛田と申します。』
打ち合わせ通りに沼袋の祖母と応対する。
比較的フレンドリーな雰囲気だったので、そのまま30分程談笑し、水入らずの話もあると思ったので少し席を外す。
戻って来て最後に挨拶。
花嫁姿が見たいと言われたので、東京でウェディングフォトを撮る事を約束する。
更に30分ほど話し込んでから御暇することになる。
「母娘で似たような人を選ぶんだねぇ。」
別れ際に沼袋の祖母は寂しそうに笑いながら呟き、俺たちに手を振る。
俺は深々と頭を下げて施設を後にした。
「ゴメンね。
お祖母ちゃん、飛呂彦君をヤクザか何かだと思ってる。」
『謝ることはないよ。』
強盗殺人で逮捕され獄死した沼袋の父親。
話を聞く限り、かなり凶暴な男だったようだ。
俺にも粗暴犯特有の雰囲気はあって、きっと沼袋の祖母はそれを指摘したのだ。
『次はお母さんですね。』
「まだ時間はあるから、喫茶店にでも入ろう。」
鳥取市にはヒルトンやリッツの様な高級ホテルがない。
従って結婚の挨拶は全て実家に赴いて行う。
沼袋は喫茶店でギリギリまで時間を潰した後、時間丁度に実家に俺を連れて入った。
『ギリギリで良かったんですか?』
「あまり帰りたくなかったから。」
沼袋の実家は田舎の旧家である。
所謂名家なのだろう、庭の池には鯉が泳いでいたし、床の間には本物の甲冑が飾ってあった。
祖母ほど親密ではないのか、沼袋とその母親の会話は妊娠報告にしては幾分淡々としていた。
俺に対してもただ慇懃なだけ。
事前に沼袋が俺を【宝石商】と紹介したのが怪しまれていたのだろう。
確かにな。
この歳の自称宝石商などロクなものじゃない。
『単なる丁稚です。』
そう言うと少し安心した表情になったので、何事も年相応に越したことはないのだろう。
30分ほど話を続けてからお暇した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結局、沼袋と京都で2泊だけ観光して東京に帰った。
やけに熱心に写真を撮ろうとするのを咎めようとして気づく。
この女にそうさせているのは俺なのだ。
ちなみに俺は母親の写真を持っていない。
「ごめんね。
引っ張り回しちゃって。」
『いえ、楽しい旅行でした。』
「…。」
まあ、流石に3日も一緒に居れば俺の嗜好くらいは把握するよな。
飛田飛呂彦はカネにならない事を楽しめない奴なのだ。
沼袋の妊婦グッズの買い物に付き合ってからマンションまで送って別れる。
鳥取の実家はちゃんとしているのでシンママでは産めない。
母娘2代でヤクザ者と結ばれるのは、例え田舎でなくとも良くないことなのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
沼袋と別れた後、一旦鉢伏鉱山に戻る。
『エヴァさん、妊娠中に揃える備品とかある?』
「ありがと。
でも、他の子を優先してあげて。」
『あ、はい。』
「皮肉で言ってる訳じゃないのよ。
父親には父親の苦労があるんだろうなって思っただけ。」
その後、坑道の奥で作業していたガルドに弁当を届ける。
『親方。
俺、家庭とか向いてなさそうです。』
「安心しろ。
そうやって悩んでる時点で資格はある。」
『そんなモンですかねぇ。』
「最低な奴になると乳飲み子放ったらかして武者修行に出たりするからな。」
『それは酷い。』
「ああ、まったくだよな。」
香辛料の仕入れを打ち合わせしてから地球に戻る。
まず、沼袋に買ってやった一式と同じ物を買って遠藤に届けに行く。
すぐに帰りたかったが、沼袋と2泊した事を思い出し、バランスを取らねばと思い直す。
特に熊本観光したいとも思わなかったので、遠藤のマンションで一晩過ごす。
俺はこの女の身の振り方を真面目に話したかったのだが、好きなアニメやスイーツの話題ばかり振られて辟易する。
仕方ないので、その場で母子手帳やら出産後の段取りやらを検索してロードマップを作成。
『これ…
女1人で産めるものなのですか?』
「他の子は実家に戻ってました。」
『…戻られますか?』
「嫌です。」
『でしょうねぇ。』
親への当てつけでソープ嬢になるような女が実家に戻りたがるとも思えない。
『俺も考えますので、遠藤さんも真剣に模索しておいて下さい。』
「(プイッ)」
『俺も考えますので、梢さんも真剣に模索しておいて下さい。』
「(ニコッ)」
そんな不毛な夜を過ごしてから府中に戻る。
自宅で寝直そうとしたが上手く眠れない。
きっとセックスなしで女と泊まったせいで性欲が高ぶってるのだろう。
なので村上翁に連れて行って貰ったピンサロに向かう。
前回の女を指名してやると思いのほか喜ばれる。
まあ、こんなモン女なら誰だっていいしな。
処理も済ませたので帰宅して熟睡した。
「オマエからこんな時間に珍しいな。」
『ピンサロ行ったら村上さんを思い出しました。』
「奇遇だな。
俺もソープ行くとオマエを思い出して笑っちまうよ。
で、用件は?」
『銀を預けっぱなしなので、引き取りのタイミングを決めて貰いたくて。』
「おう、俺は何時でもいいぞ。
丁度、倉庫前に居るし。」
『あ、そうなんですね。
運賃払いますので、こっちに来られる予定とかありましたら…』
「うーん、予定はあるんだが…」
『え?
何か問題でも?』
「今、チャコちゃんが隣に居るんだよ。」
『…マジッすか。』
「飛田クン、ヤッホー。」
『…どもです。』
「ゴメンな。
俺も接近に気付かなかった。」
「だって専務。
飛田クンと通話する時だけ
私から逃げるじゃないですか。」
「いや、逃げてはいないけどさ。」
「嘘。
飛田クンに悪い遊びばっかり
教えてる癖に。」
「これも仕事なんだよ…
トビタ、こんな状況。」
『大体把握しました。
銀は今度取りに行きます。』
「えー。
私も飛田クンの家に行きたーい。
専務ばっかりズルーい。」
「ははは。」
『ははは。』
家を教えない代わりに、村上家の出張仕事に同伴する羽目になってしまう。
参ったなー。
今日は砂糖を仕入れる予定だったのだが…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「専務!
仕事が終わったら飛田クンを貸して下さい!」
「えー。
今日は結構真面目な日なんだが…」
「私も大真面目です!
人生掛かってます!
何なら村上一族の存亡が掛かってます!」
「えー。
なら仕方ないかー。
トビタ、話だけ聞いてやってくれ。」
『村上さん、もう少し粘って下さいよ。』
「でも一族の存亡が掛かってるらしいからな。」
『ああ、なら仕方ないですね。』
「しゃあ! (ガッツポ)」
チャコちゃんが席を外したタイミングで村上翁に詫びられ、今度熱海にでも遊びに行こうという話で落ち着く。
『今日は山梨ですか?』
「前にオマエが甲府の客を捌いてくれただろ。
それが切っ掛けで、山梨の依頼にも応対する事に決めたんだ。」
どうやら、今日は遺品整理案件らしい。
それも貴金属だけを他の家族に内緒で処分したいとの事。
相続あるあるなので、村上翁も手慣れたものである。
「介護してたのはワタシなのに、妹夫婦が動産を全部寄越せってゴネてるのよ!」
第一声がそれ。
要は長女の不動産継承に対して次女側が動産を要求するという、日本中いや古今東西で起こってるであろう問題。
長女としては次女夫婦が帰国する前に母親の貴金属を電撃換金したい。
「だから、領収書とかそういうのは止めて!」
「なるほどー。」
「買い叩きもやめて!」
「なるほどー。」
「まずは宝石ッ!
ダイヤモンドよ!
高く買って!」
「あー、これココ山岡ですねー。」
「な、何よ!
ダイヤよ、ダイヤモンド!
500万くらいにはなるでしょ!」
「いやあ、ははは。」
「じゃあ、こっちはどう!?
純金よ!
18金ネックレスよ!
家族旅行の時にお父さんが奮発して買ったの!
ワタシ知ってるんだからね、金が今すごく値上がりしてるって話じゃない。」
長女さんが自慢気に掲げたのは自称純金のネックレス。
(ちなみに純金を名乗って良いのは24kな。)
村上翁が試すように俺を見て来たので、丁稚としての義務を果たす。
『デザインからしてタイで買ったものですね。』
「え!?
分かるの!?
アナタこの価値が分かってくれるの?
ちなみにアナタ社員さん?」
『いえ、単なる丁稚で「当家の婿です。」
…この女、攻め過ぎだろ。
「あらあ、娘さん夫婦でしたのね。
お似合いよ。」
「ありがとうございます (ドヤ顔)。」
えっと、強引に既成事実化するのはやめてもらえませんかね。
まあいいや、仕事仕事。
『デザインは素敵だと思いますが、色合いからして18金ではなく15金以下だとは思います。
不幸にしてタングステンが混ざっていた場合、買値は極度に下がってしまうでしょう。』
村上翁の表情を見る限り的外れな回答ではないようだ。
で、長女さんの許可を得て簡易測定。
案の定、金も含まれているネックレス。
他店ではどうか知らないが、俺や村上翁は取り扱わない。
ゴネられたので、トイレを借りてワープしてドバイで純金の指輪を買って見せてやる。
明らかな違いに長女さんが黙る。
その後も色々見せられたが、大した物は無かった。
「じゃあ、どうしろって言うのよ!
折角呼んだのに徒労じゃない!」
「いやあ、ははは。
それはお互い様と申しますか…」
「何か金目のものを探してよ!」
押し切られて家中を探し回らせられる。
あまり、こういう事は言いたくないが安物で溢れた家だった。
唯一、値が付きそうな物は仏具関係。
特に仏鈴は純金24k。
しかもずっしりしてる。
「じゃあ、これを買ってよ!」
『え?
でも、それこそ仏具は今から使うんじゃ…』
「もっと安いのを使えばいいでしょ!」
滅茶苦茶な話であるが、葬儀前の仏具を買い取る羽目になってしまう。
村上翁に目線で合図されたので、車に戻ってワープ。
ドン・キホーテでタングステン製の仏鈴を買って戻る。
これには長女さんもニッコリ。
絶対故人が悲しんでるよコレ。
「なーんだ、ちゃんと準備してるんじゃない。
流石はプロね。
じゃあ、本物は買い取ってくれるわよね?」
仕方がないので重量計測すると1000グラム。
妙に区切りが良いので相続税対策用の仏具なのだろう。
㌘あたり60$なら即金かつ記録無しで買い取る旨を伝える。
円換算で900万円だが、日本円の手持ちが乏しい。
ドルでも構わないなら買ってやる旨を伝える。
長女さんはアレコレ粘ろうとしたが、俺達が帰り支度を始めたのを見て折れる。
「足元を見ないでって言ったのに。」
『出張料や機密料も込みなら、寧ろ得をしてると思いますけどね。』
勿論、相手が納得する筈も無かったので一礼して去る。
食事休憩の最中、俺だけが香港に飛ぶ。
『趙社長、今よろしいですか?』
「おお、飛田社長。
熱烈歓迎ですよ。」
『こちらでは金道具も扱っておられますか?
これなんですけど。』
「ほう、24k。
これは…
日本の祭具?」
『はい、仏教用具で死者の魂を慰めたり相続税を回避する効能があります。』
「おお!!
素晴らしい祭具じゃないですか!
死者の魂は兎も角、税金を逃れれるって最高ですよ!
私も仏教徒になろうかな。」
『ええ、これを買い取って頂けないかと。』
「はい、喜んで!
ちなみに香港の税制に効力は及びますでしょうか?」
『いやあ、流石にそれは当局と話し合って頂けませんと。』
「『わっはっは。』」
査定の結果。
24k1000㌘で間違いなし。
しかも㌘単価84$を提示してくれた。
明らかに色を付けてくれた事に感謝し、趙家への便宜を約束して山梨に帰る。
差額24$×1000㌘で24000$の利益。
チャコちゃんの目を盗んで14000$を渡そうとするが、無言でそのうち4000$を突き返される。
せめて折半と攻防しているうちにチャコちゃんが戻って来たので慌ててドル札を隠す。
誤魔化す為に先程の仕事の話。
「やっぱり山梨出張は止めるわ。」
『遠方の客はオンライン撮影でモノを見てからにしません?
インド人はそうしてましたよ。』
「だな。
じゃあ山梨利権はオマエにやるよ。」
『まーた、すぐに押し付ける。』
「でも、アタリも混じってるかもだぞ。」
『混じってるんですかね?』
「全部ハズレでも飛田ならマネタイズ出来そう。」
「まあ、空いてる時でしたら付き合いますよ。」
遺品整理はどうしても買い叩きになる。
それが商機なのか煩雑なのかは捉える者次第。
移動コストカットが強みの俺としては、現在のドバイ・香港スキームが1番楽なので優先順位はそちらとなる。
だがまあ、移動の選択肢が増えるのは悪くない。
少なくとも今日の出張で山梨のワープポイントは複数確保した。
これで都内の貴金属業者の中で、俺が最も山梨市内での優位性を持った事になる。
移動時間・費用、東京から山梨は案外コストが嵩むからな。
「ねぇ、専務。
仕事は終わった?」
「残念ながらな。」
「飛田クン借りていい?」
「同意は本人から取れよ。」
「専務がオッケー出したら、飛田クンは自動的に私に着いて来るもん。」
「そうなのか、飛田?」
『否めませんね。』
「埋め合わせは今度な。」
『期待してます。』
そんな下らない遣り取りがあって、村上翁の車は去って行く。
「2人きりになっちゃったね♥」
『…。』
なっちゃったね♥、じゃねーだろ。
「えへへ、飛田クンの初カップル旅行ゲットだぜ♥」
惜しい、俺の初めてをゲットしたのは沼袋だ。
(広義に捉えるならエヴァとの馬車行が早い。)
「温泉行こうよ。」
『いやあ、ははは。』
だって村上翁と熱海温泉に行く約束しちゃったしな。
「ぶー。
Hな店には行く癖に。」
『アレも仕事なんですよ。』
「男の人ってズルい!」
『否めませんね。
でも、女性からそう非難される事も含めて仕事なんですよ。』
「飛田クンは口が上手いからズルい!」
まあなあ、普段イスラム商人や中国商人と戦ってるからな…
ロジックを組み立てる癖は付いてるだろうなぁ。
「さて!
プレゼンを開始します!」
『え?
今からですか?』
「今です!」
参ったなー。
今、疲れてるんだけどなー。
「風魔法の究極奥義を編み出しました!」
『なるほどー。』
「まずは天目山を目指します!」
『うーん、終電なくなるかも。』
「それが狙いです!」
…圧が強い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
甲斐大和駅から降りた俺達はアプリで呼んだタクシーに揺られて首洗い池に向かう。
2人で武田勝頼公の墓標に一礼してから、向かいの山肌に直る。
「須藤千夜のッ!
最終プレゼンーッ!」
『うわっ、びっくりした。
急に大声出さないで下さいよ。』
「はい、それでは本日は!
男の人がギリギリ許してくれる範疇の風魔法を披露します!」
何故ギリギリを攻める?
「この究極奥義を見ればッ!
飛田クンのメインヒロインの座は私に転がり込む筈ッ!!」
おとなしくさえしていれば、この女が普通にメインヒロインだったんだろうなー。
「はーい、心の中で余計なツッコミをしない!」
『あ、すみません。』
「やっぱり心中でツッコんでたんだね!
酷ーい!!」
『誘導尋問やめてくれませんかね。』
「それでは左手を御覧下さい。
何が見えますか?」
『え?
山ですけど。』
「他には!?」
『えっと、風力発電の風車…
あッ!』
「ふっふっふ。
そういう事なのですよ。」
『えー、マジっすか。
いやー、その使い道はちょっと。』
「違う!
人助け!」
『え?』
「山梨は盆地だから風が吹かないの!
でも三セクが補助金欲しさに立てちゃったの!
見て、あの回らない風車!
日本国民の血税なんだよ!」
『な、なるほど。』
「だから私がプレゼンに使っても正義なの!」
『いやー、その理屈は飛躍してるような。』
「うおおおおッ!!
風魔法発動ッ!!」
『あっ、ちょっ!!』
「須藤流究極奥義ッ!!
天目山エターナル風林火山ウインドォォッ!!」
この女、まーたチャコりやがった。
あー、勝手に風力発電回しちゃってるよ…
これ、絶対何らかの法律に抵触してるよな。
そもそも風って個人が勝手に生み出していいのか?
気象庁とか管轄警察署の許可がいるんじゃないのか?
「見て見てー!!
飛田クンッ!!
回ってる回ってる!
いつもより大目に回っておりまーす!!
うわははははwww」
『あ、うん。
もう分かったから、そろそろ停止しましょう。』
「ふっふっふ。
私のプレゼンはここからなのだよ♥」
『えー、終電…』
「風を吹かせるだけなら大抵の風魔法使いが出来ると思うのね、多分。」
『出来るでしょうねぇ。』
「でも、須藤千夜は一味違います!
圧倒的ヒロインパワーをお見せします!」
…大抵の男はヒロインにパワーを求めてないと思うぞ?
「な、な、な、なーんと!
天目山エターナル風林火山ウインドは永続技です!」
『え?』
「MPが尽きるまで任意の地点に風を吹かせ続けます!」
『え?
ちょ?』
「しかも消費MPより、私のMP回復速度が上回っているので永遠に風力発電を回し続けることが可能です!
永久機関は実在したァァァッ!!」
腰に手を当て高らかに笑うチャコちゃんの背後では風車が猛スピードで回っている。
…加減しろし。
「どう!?
このプレゼンでヒロインレースの順位は大きく変動したと思うのだけど!!」
『あ、はい。』
参ったなー。
減点しようにもチャコちゃんの持ち点残ってないんだよなー。
まあ、いいや。
【須藤千夜 持ち点マイナス100】
これでヨシっと。
この話が面白いと思った方は★★★★★を押していただけると幸いです。
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