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何せ俺は忠良な丁稚ですから。

スマホ越しではあるが、パープルシャトウの犬童社長と今後の打ち合わせ。

DNA鑑定とか、店からの謝罪と補償とかそういう話。

ただ、犬童社長は内心では【遠藤】の腹の中の子が俺の種である事を確信している様子だった。

明らかにその前提がある上での話し合い。

堕胎か出産か、産ませるなら認知するか非認知か?



  「重ね重ね申し訳ありません。

  本来、性風俗産業に携わる者として…

  こういう相談をさせて頂く事自体が

  非常識だと思います。

  ただ、生命に関わる問題で勝手な判断も

  出来ないと感じましたので。」



『いえいえ、犬童社長のお心遣いはよく伝わっております。

忌憚のない御意見に感謝もしておりますので、引き続き宜しくお願いします。』



電話切ってから、しばし考える。

恐らく他のソープでも妊娠騒ぎが始まってるだろうな。

熊本の次に行ってたのは吉原か…

確か【ミミ】なるソープ嬢だけを指名してたらしいが、その子も俺の子を既に宿している気はする。


恐らくは【ワープ】の副産物として俺の精子も女の卵子に直接ワープしているのだろうが…

この能力は反則過ぎるだろ…

もはや副産物の精子ワープ能力のみでハイパーチートである。



「オマエさあ。

チャコちゃんの居ない時を見計らって来るのやめろよな。

俺、すっごく気まずいんだぞ。」



『まあまあ、慎ましい丁稚って事で勘弁して下さいよ。

雇い主のお嬢さんには指一本触れないという。』



「こんな丁稚やだなあ。」



村上翁と六義園を歩きながら密談。

茶室では何やら文化的なイベントが催されているらしいが、俺達はソープの話で忙しい。



「何?

ミミちゃん妊娠させたの?

プライベートで逢ってたってこと?」



『いえいえ。

どうやら俺の精子にはピルが効かないようなので、問題が発生する前に急遽事前報告をと思いまして。』



「…どうやらってオマエ。

他のどこかで孕ませたのか?」



『熊本。』



「若いねぇ。」



『あ、熊本でビジネスパートナー見つけたんで、柴田税理士に紹介していいっすか?』



「何?

ソープ嬢?」



『いえ、ボーイさんです。』



「若いねぇ。」



『今日の夕方、こっちに到着します。』



「今日の話を事前報告とは言わねーよ。」



『昨日、決めたんすよ。』



「まあいいや。

そのスピード感こそが飛田の真骨頂だ。」



『ジュエリーデザイナーさせようと思ってて、村上さんも作品見てやってくれませんか?

ちょっと特殊な世界らしいですけど。』



「アホ。

俺が何年古物商やってると思っとるんだ。

宝石鑑定もかなりのモンよ。」



『スミマセン。』



「でも、合格。」



『?』



「宝石に関しては意識して俺以外のルートを作ってるんだろ。

商売人として100点満点だ。」



『ありがとうございます。』



「販路は複数持つ。

この鉄則を真面目に実践してる飛田は偉いよ。」



『えへへ。』



「問題は子種をバラ撒いた事への着地点だな。」



『どうすればいいと思います?』



「オマエがどうしたいかが全てだ。」



『まあ、女が産みたいなら産ませてやりますし、堕胎したいのならそれも容認します。

生活費は何とか出来ますし。』



「オマエって明治大正に生まれてたら正当に評価されたんだろうなあ。」



『どうなんすかね?

昔の時代の男社会で評価されたとは思えませんし…

それに、俺には今しかありません。」



「ふふふ。

じゃあ、今を乗り切って行かないとな。

一応、金地金の処分ルートを見つけておいたらから、どこかメシでも食いながら説明するぞ。」



『はい!』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



夕方。

村上と共に東京駅で中本を迎えてから、柴田税理士事務所へ。

柴田が思っていたより乗り気で日付が変わるまで熱論。

男4人でカネカネカネと喉が枯れるまで叫び続けた。



『いやあ、柴田先生がここまで興味を持って下さるとは思いもしませんでした。』



「職業柄、無数のビジネススキームを拝見してますからな。

割の良い商売は嫌でも分かりますよ。」



なるほど。

確かに税理士業ほど多くの商売の内情に触れる稼業は存在しない。



『やはり、宝石というのが良かったですか?』



「場所を取らずに高単価、かつ普遍的な価値。

私は相当の仮想通貨を保有しており、その価値も熟知していますが…

それでも尚、宝石には無二の希少性があると感じております。

飛田社長が高ランクの宝石をビジネスに現物出資出来るという点が大きいですね。」



『集める方はこれからも頑張れると思います。

大抵の種類は何とかなると供給元も申しておりました。』



「ふーむ。

じゃあレッドダイヤモンドは?」



『あ、聞いておきます。』



「あ!

それならアレキサンドライトを!!」



『?』



「既に御存知かと思いますが、光の条件によって色が変わる珍しい宝石です。

非常に人気なのですが、主な原産地がロシアでして…」



『ああ、ウクライナ戦争…』



「仰る通りです。

そもそもがロシア皇帝アレクサンドル2世が命名の由来の宝石ですからな。

分かるでしょう、マーケットやアート界の微妙な感情。」



『まあ、何となくは。』



「ですが、アートの世界に参入するなら、あると強いです。」



『承知しました。』



「ただ、このプロジェクトには1つ大きなハードルがあります。」



『はい。』



「中本さんに一定クオリティの作品を制作して貰わねばなりません。

それも単なる秀作では意味がない。

一流派を築き得る独創性が必要不可欠です。

ブランドの構築とはそういう事ですからね。

それが出来なければ、このプロジェクトは画餅に過ぎません。」



『承知しました。

では来週のこの時間に事務所を貸して下さい。

この世の物とは思えない程のオリジナリティを披露して御覧に入れますよ。』



「…ほう。

大きく出ましたな。

分かりました!

是非、お願い致します。


妻も同席させて宜しいですか?

彼女の家系はかなりの宝石道楽です。」



『ええ、俺としてもその方がありがたいです。』



「もしも私を驚かせることが出来たら。」



『出来たら?』



「今後一切、細かい事はゴチャゴチャ言いません。」



『励みになりますね。

でも柴田先生のゴチャゴチャには今後も期待させて下さい。』



「ははは、これは一本取られましたね。」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ヒロヒコ、頭を上げなさい。

男の人がペコペコするのは好ましくないことよ。


例えどれだけ落ち度があったとしてもね。」



『冷静に考えたら、エヴァさんに悪いことばかりしている気がして。

何か埋め合わせをさせてくれませんか?』



「そう、早速外で女の人を作ったのね。

あまり失礼な事をしちゃ駄目よ。」



『ど、どうしてそれを!!!』



「ん?

ヒロヒコは分かり易いから。


そんな事よりも御用命のドワーフ宝飾。

どうぞ。」



『あ、はい。』



エヴァに渡されたのは、指輪? ペンダントトップ?

シンプルながらも蛇がうねるようなデザイン。

まさにザ・異世界。

地球人の発想ではない。



『い、いいの?

これ、かなり高価なものなんじゃない?』



「いいわよ。

私が子供の頃に祖母に教わりながら作ったものだから。

だから質には期待しないで。」



聞けば、ドワーフ女性は物心ついた時から花嫁教育が開始され、10歳くらいになるとその一環として細工仕事を習うらしい。



『いや、これ…

かなり凄い作品なんじゃない?』



「そう?

実家に飾ってある母の細工物の足元にも及ばないけど。」



『今度ご実家に遊びに行った時に拝見するよ。』



「あら残念。

私達は出禁よ。

敷居を踏むことも許されてないわ。」



『…そっか。』



「全部持っていきなさい。」



『いいの?』



「旦那様のお仕事を手伝うのも妻の勤めよ。」



『あの…

何かお返しを…』



「叔父さんや父さんと相談しなさい。」



『あ、はい。』



「こうやって無事に顔を見せてくれているだけでも嬉しいのよ。

危ない橋を渡るなとは言わない。

でも、戦うならちゃんと勝ち抜いて。

凱旋以外は何も要らないから。」



『…はい。』



その後、ガルドにアレコレと報告。

宝石の話はまあいいとして、外で女を孕ませた話は流石に渋い顔をされた。



「…あのさ。」



『あ、はい。』



「それは暗に、俺の口からブラギに言えって話?」



『いやいやいや!

そんな訳ないじゃないですか。』



「じゃあ、オマエが直接ブラギに説明するんだな?」



『え!?


…はい、いえ、はい。』



「どっちだよ。」



『あのぉ…

出来れば親方にも同席して頂きたいと言いましょうか。』



「義親子の問題に俺が口を挟める訳ないだろうが。」



『俺は親方の丁稚なので…

監督責任的な…

何せ俺は忠良な丁稚ですから。』



「嫌な丁稚だなー。」



ガルドの背中に隠れる気満々でブラギと面会した俺だったが、当然殴り倒される。


そりゃ痛いよ!!!

ボーリング球よりデカい拳で殴られた事のある者だけが俺を笑えよ!!!

死ぬかと思ったわ!!!


言っとくけど、最初の一発は思わずワープで逃げたからね。

瀬戸内の孤島で5分くらい恐怖に震えてたからね。

(怒った時のブラギの貌が日頃温厚な人物だけに滅茶苦茶怖かった。)

それでも、今後の家族関係とか考えて腹を括って殴られるためにワープで戻ったからね。


ブラギは俺の度胸と覚悟を称賛した上で、きっちり俺を殴り倒した。

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― 新着の感想 ―
トビタ君は少子化対策マンだったのかあ、、、つうか嫁さん気合い入ってるなあ、戦国時代なら旦那に天下とらせそう
これは店を出禁になるだろうかな、これ以上のトラブルを防ぐとして他に方法が考えつかない そしてブラギ氏に殴られるトビタを想像し笑いました、死ぬかもしれないという恐怖にひきつった乾いた笑いですが・・・これ…
港ごとに女がいるのさ とか嘯けたら、昭和ならいけたのにね
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