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俺は誇り高き日本男子である、強姦魔呼ばわりとは何事か!!

山の稜線に沿って移動している。

とてもでは無いが騎走は不可能なので徒歩で轡を引く。

俺とガルドは魔界飛び地を無言で眺めていた。



「ヒロヒコ、あの戦況が読めるか?」



『えっと、1番手前の焼け落ちた建物。

あれは魔族側の国境防衛施設だと思うんです。

それが真っ黒焦げになっていると言うことは、国境は完全に破られたということですね?』



「そうだな。

他には?」



『えっと、その建物の周辺にビッシリ広がったテントは王国軍ですよね。

真ん中の大きくて高い建物は攻城塔かな?

ここで野営しているということは、更に進軍する予定なんですか?』



「ああ、それにあの大軍。

面包囲で魔族をジェノサイドして、100%の王国領に組み込むつもりだろう。」



『…。』



「オマエはどうしたい?」



『関わり合いになりたくないです。』



「義侠心とか同情心は湧かない?」



『相手が自分なら存分に発揮出来るんですけどね。』



「お、賢明な答えだ。

安心したぞ。」



『ただ、この戦争が氏族にネガティブな影響があるのなら回避したいですね。』



「うーん。

そこまで心配する必要はないぞ?

仮にオマエの同胞が目立ち過ぎたところで…

まぁ、魔界での入札から数年外される程度で済むだろう。」



『それって、今のニヴルにとっては結構な痛手じゃないですか?』



「ガキが心配する事じゃねぇよ。」



『エヴァさんと正式に所帯を持ちました。

そりゃあ、まだまだ未熟ですけど。

子供で居ることは許されない立場になっているとは自覚してます。』



「…腹を割って話すぞ。

タカハシ君達が戦功を挙げれば挙げるほど、魔界での俺達の立場が悪くなる。

正直、勘弁して欲しい。」



『…。』



「誤解しないで欲しいんだが、俺はあの青年は立派だと思うぞ。

置かれた状況でベストを尽くしている。

…ただ、オマエの存在と紐付けられるのは困る。

目立ってるんだよ、オマエらは。

分かるだろ、そういう呼吸。」



『同郷である限りは俺が何を言おうと、所詮はワンセットとして見られる。』



「不本意かも知れんが、社会ってそういう物だからな。」



クラス転移から始まった物語だ。

どれだけワープしたところで、学級という枠からは逃れられないか…

ま、世の中ってそんなものかもな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ガルドが兎狩に成功したので、焼け落ちる魔族前線を見物しながらBBQ。

炙ったエリンギに舌鼓を打つ。



「じゃあ、タカハシ君達を含めた徴用兵を救出して共和国に帰還させる方針でいいな?」



『まあ、無難な落としどころでしょうねえ。』



俺にとってはここで級友が全滅してくれると助かるのだが、流石に口には出せない。

一匹狼のガルドですら同胞愛は相当濃厚なのだから。

兎の小骨を吐き出しながら友情っぽい台詞を適当に並べておいた。



「そして、小刻み移動は禁止。

いいな?」



『…はい。』



「オマエの為に言ってるって事だけはせめて理解してくれ。」



『まあ、それは、はい。

ありがとうございます。』



「よし。

それじゃあ、小刻み移動を使わずにこの問題を解決してみろ。」



『え?

ま、マジっすか?』



「出発前に散々言っただろ。

親方命令だ、ツベコベ言わずにやってみろ。」



うーーーーん。

俺からワープを取ったら本当に何も残らないんだけどな。


もしもワープを使っていいなら、王国軍の首脳部を連続殺害する。

なんらかの混乱が発生するだろうし、並行して督戦兵も殺害すれば徴用されている連中の解放の糸口を掴めるだろう。



『カネで解決するのはアリですか?』



「…そのカネが説明可能な方法で獲得されたものなら俺は反対出来ない。

社会に対して公表は出来るのか?」



『…公表っすか。

あー、ちょっと難しいかもですね。』



「じゃあ、そういう事だ。」



ワープはおろか、ワープで貯めた富も使用禁止か…

俺のアドバンテージ消滅したな。



「どうする?

国境は存分に観察出来たし帰るか?

ちなみに国境見物の感想は?」



『え?

親方に教えて貰った兎狩手法。

戻っても再現できそうです。』



「お、良かったじゃねえか。

たまにはフィールドワークもいいモンだな。

じゃ、帰るか。」



『あー、そうっすね。

帰りましょう。』



「…。」



『その前に王国の軍陣に挨拶してもいいっすか?』



「いいんじゃない?

挨拶は世渡りの基本だしな。」



俺とガルドは草笛をピーピー吹きながらノンビリ山を下る。

反対側の尾根に洞窟を提供してやった村人達が居たので手を振り合って別れる。

やや怠け癖のついた馬の尻をペンペン叩きながら、数時間掛けて街道に戻り脇道をトロトロ騎走。



「ここから先は作戦区域だッ!!!」



突然背後から叱責されたので驚く。

振り返るとどうやら帰陣中の伝令騎兵らしい。



『あ、すみません。

軍陣って入っちゃ駄目なんですか?』



「当たり前だろう!!

大体何の用事があって…」



そこまで叫んで伝令兵が黙り込む。

俺とガルドの組み合わせを見た途端に言葉を止めたという事は、こっちの事は知っているのだろう。



「失礼、ニヴル族のガルド氏ですね?

以前、城下で何度か遠目にお姿を拝見したことがあります。」



  「如何にも。」



「…という事は、貴殿はヒロヒコ・トビタ氏で間違いない?」



『間違いありません。』



「…御用件は?」



『挨拶です。』



「加勢ではなく?」



『争いごとが苦手なんですよ。』



「挨拶と言うと…

貴殿の同郷の兵士達に?

それなら条件が…」



『あ、いえ。

貴軍の代表の方に。』



「司令官閣下に面会?

アポはあるの?」



『あ、ごめんさい。

アポも紹介状もないです。』



「…いや、流石に、アポなしは。

いや、ちょっと待って。」



『駄目なら諦めます。

諦めてこのまま帰ります。』



「…OK。

私が取り次ぐ。

但し、軍陣まで同行して貰うよ?

状況によっては、そのまま滞陣をお願いするかも知れない。

いいね?」



『ええ、用事があれば帰りますけど。

構いませんよ。』



「こちらも作戦行動中だ。

帰したくても帰せないかも知れないよ?」



『力づくで解決出来るので問題ありません。

無論、ドワーフには頼らない。』



やや冗談めかして答えると、伝令兵は口笛を吹いて寛容さを示した。

今思い返せば、言質を与えない為の上手い切り返しだったと思う。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




司令官と言うからてっきり白髭の老将をイメージしていたのだが、出て来た男は30代前半くらいの風貌だった。

本当にこの男が軍を統括しているのだろうか、と疑問に思った瞬間に相手が口を開く。



「敗戦続きでね。

私のような軽輩が出世してしまった。

ちなみに士官学校の卒業順位は下から2番目だ。」



『あ、いえ。

そんなつもりでは。』



「君には色々言いたい事はあるが、ドワーフとの関係上強くも出れない。」



『あ、いえいえ。

すみません。』



「用件は?」



『えっと、まずは結婚報告です。』



「…まあ、話題にはなってるよな。

知ってるよ、軍でもトピックスになっているしね。」



『この度、私飛田はニヴル族のエヴァ嬢と結婚致しました。』



「うん、おめでとう。」



『ありがとうございます。

ちなみに後ろに居るのが、義叔父にあたるガルドです。』



「ガルド殿、祝福を述べても構わないですか?」



  「はい、ありがたいです。」



「姪御さんのご結婚おめでとうございます。」



  「ありがとうございます。」



「…。」



『…。』



「じゃあ、用件を聞こうか?」



『仲人であるギガント族長…

ああ共和国の元老院議員にそういう人物が居るのですが…

彼から徴用兵の帰還引率を依頼されて、ここに来ました。』



「…。」



『…。』



「なるほど、共和国さんとのコネを使って級友を保護しに来たと。」



『いや、誤解があるようなのですが…

あくまで私が依頼を受けたのは共和国人の解放のみです。

級友達に関しては、特に誰も何も言及しておりません。』



「何?

そういう交渉術?」



『いやいや、別に術策でも何でもなく…

単に正直に話しているだけです。』



「言っておくけど。

地球部隊は手放せないよ?

こちらにとっても切り札だからね。

私の一存ではどうにもならない。」



『いやいや。

切り離して議論させて下さい。

まず共和国徴用者の引き渡しを要求します。

国際法にも抵触していますし、先方もかなり怒ってますよ?

何せ共和国では国民は国家の財産と規定されているくらいですし。』



「…あそこはあそこで、タテマエに反して内情は酷いんだけどね。」



『同じ酷いならタテマエの御立派な国に住みたいものです。』



「…ノーコメント。」



『失礼致しました。』



「共和国徴用者は230名。

但し、作戦行動に伴う欠員が発生しているので、現在は200名をやや切っている。」



『では、その200名弱の引き渡しを要求します。』



「断る。」



『…。』



「厳密に言えば。

徴用者を解散させる権限が私に与えられていない。」



『その権限は誰が持っているんですか?』



「軍人が指揮系統をペラペラ話す訳ないだろう?」



『じゃあ、その人が積極主戦派なんですね?』



「お、鋭いね。

若いのに大したものだ。

君、士官学校入れば。

下から3番目くらいで卒業出来るかもよ。」



()()()()()()()()()()()()()()()()。』



「え?

それって…」



()()()()()()()()()。』



「おいおいおい。

君も怖い奴だな。

下から5番目くらいで卒業出来ちまうかもなあ。」



()()()()()()()()()()()()()()。』



「繰り返すね?

軍人が指揮系統を部外者に話す訳がない。

そんな初歩は士官学校で最初に叩き込まれることだ。


救国の聖女アリアス姫も日々、我々に訓戒して下さっておられる。」



『え?

それって。』



「さあ帰った帰った。

例え国際法に違反しているとしても、それがなんだ。

我が国の王族特権は全土に適用される。

救国の聖女アリアス姫がおられる限り、王国は不滅。

外国勢力の干渉に屈することなどあり得ない!」



『え?

いいんすか?』



「何のことだ?

さあ、帰りたまえ!

あまりしつこいと、こちらも強硬手段を取るよ!!

大型攻城塔には近づくなよ!!!

あの塔自体が貴人女性の為の区画だからな!!

許さんぞ、絶対!」



『あ、はい。』



いやいやいや!!!

え? ヤバいだろ、その発言。

え? アンタ軍人だろ?

え? 流石にそれは駄目だろう…



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



と言う訳でアリアス姫には死んで貰った。


勿論俺に武勇はないので、夜陰に紛れて塔の最上階にワープ。

侍女に囲まれたお姫様っぽい人(俺と同年代のかなりの美人)が豪華なベッドに腰掛けていたので、「多分この人だなー。」と思いながら敏捷そうな護衛の婦人兵2人を桧山戦法で後頭部を吹き飛ばして殺す。


状況理解の為にも最後に言い分を聞いておこうと思ったのだが、姫(?)が涙目で俺が強姦魔であると非難してきたので、腹が立ってワープクラッシュ(ワープで背後に回り込み斧で後頭部を叩き割る技)で殺してしまった。


俺は誇り高き日本男子である、強姦魔呼ばわりとは何事か!!

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― 新着の感想 ―
貴人女性の寝所に夜間立ち入るならず者は強姦魔って言われても仕方ないはある 沸点低いなw
強姦魔ではないのは間違いない。 やってることはもっと凶悪だw
戦争を強いられた200名弱の命 と 戦を煽り無辜の外国人に戦を強いた人殺し誘拐犯女郎とその走狗2名の計3名の命、比べるべくもない!!! 前者は元々230名おり差分は死亡したと推測、その中にはトビタにと…
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