世の中に馬鹿が見当たらない時は、オマエがそうなのだ。
俺の能力【ワープ】はチートだ。
今朝、色々と実験してみたのだが、移動にタイムラグがない。
俺の住む大阪府から中学の修学旅行で行った浅草まで飛んでみたのだが、時間が全く経過をしていなかった。
0.01秒とか、そういう単位での誤差はあるのかも知れないが、少なくとも1秒以内のラグしかない
事が判明した。
端的に言っても無敵の部類に入るだろう。
俺の好きなバトル漫画でもワープ使いは概多彩な戦法で物語を彩る強キャラとして描写される。
問題は俺に戦闘行為を行う意思が乏しい点である。
別に平和主義者という訳ではない。
世間に認知されればヘイトが集中する事が予見される状況だけに、これ以上のリスクを背負いたくないだけなのだ。
カネだ。
要は一生遊んで暮らせるカネさえあれば何だっていい。
問題は現代社会ではカネの管理が厳重で、ワープ持ちと言えど簡単には稼げないことだ。
実はパチンコ屋の換金所システムをかなり執拗に調査してみたのだが、どう計算しても換金所内にワープしてもカネは手に入れる事は不可能だった。
カメラの向き、現金の回収タイミング、人事全般。
【世の中に馬鹿が見当たらない時は、オマエがそうなのだ。】
なるほど。
昔、どこかで聞いた格言は的を射ている。
認めよう。
馬鹿は俺だ。
そりゃあ、そうだろう。
こんなチートを持っているのに、まだ換金出来ていないのだから。
溜息を吐きながら財布を開く。
【6万3200円】
これが全財産だった。
親父の遺産には最初から期待していない。
あの男が借金に苦しみ続けたことは息子の俺が誰よりも知っている。
…だから言ったじゃねえか。
高校なんて行かなくていいってさ。
アンタ、たかが子育てにリソース割きすぎだ。
別に片親なんて気にしてなかったのに…
『俺、強盗をするよ。』
故人への義理として一応口に出しておく。
カネがないんだ。
このままじゃ俺は窮死する。
現に親父が死んだ。
もし俺が生活に困ってなければな…
このワープをもっと理性的に使うんだがな。
腹も減ったし、殺して奪うことにするわ。
…強盗には武器が必要だな。
素人の俺でも簡単に殺せる武器が欲しい。
どこで手に入れる?
刃物商? 銃砲店?
論外、ああいう店はカメラが特に厳重だしセコムも入っている。
…仕方ねえな。
『ワープ!!』
俺は溜息を吐いてから叫ぶ。
うんざりしながら目を開くと…
「飛田!?」
「え? 飛田君?」
「アイツ生きてたわけ?」
「どこ行ってたんだよオマエ。」
「国王陛下! 失踪中のヒロヒコ・トビタです!」
薄汚い玉座の間。
大嫌いな異世界人、大嫌いなクラスメート。
反吐が出る。
でも、あちこちに武器が無造作に飾っているのは都合が良いな。
俺でも扱える武器をここで仕入れて行こう。
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