オッサンは無駄に気を遣うから嫌なんだよ。
新宿。
仕事終わりの村上翁と合流。
そのまま個室居酒屋へ。
隣の個室でカラオケが鳴っており、密談には丁度良い。
「昨日はすまなかったな。
本当は金貨の話がしたかったんだろう?」
『あ、いえ。
素晴らしい食卓でした。』
「若いうちから変な気を遣わんでいい。
ああ言うのが好きな奴もいれば嫌いな奴もいる。
ただ、まあ…
慣れてはいけ。
年長者からのアドバイスだ。」
『あ、はい。』
「金貨1枚52万で買い取る。
最初に言っておくが、俺はちゃんと中抜きしているから遠慮はするな。
他の店で売るのも当然あり。
名前を教えてくれればどんな店か調べてやる。」
『ガンガン抜いて下さい。
その方が俺もやり易いので。』
「金貨、何枚あるの?」
『色々あって数百枚です。』
「マジか!?
オマエ、もうヤバい橋は渡るなよ?
ここからは守りのターンだ!
それは理解してるよな?」
『あ、はい。
今はどうやって換金するか、そればかり考えてます。』
「オマエの換金用にキャッシュを自宅に500万ストックしてある。
とりあえず9枚買い取るから一緒に来い。」
えー、またあの家に行くの?
嫌だなー。
絶対にチャコちゃんが出て来るパターンじゃない。
『…じゃあオナシャス。
この場で金貨渡しますんで、家の外で現金を受け渡ししません?
(ジャラッ)』
「馬鹿、10枚じゃねーか。
500万しか無いって言ってるだろ。」
『じゃあ、差額20万円はコンサル代ってことで。
俺が警察やら税務署から目を付けられずに金貨を円に換える方法を考えといて下さい。』
「えー。
20万でそこまでやらされるのは…
まあいいや。
人生経験総動員してやる。」
『あざっす。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
チャコちゃんの顔を見たくなかったので、巣鴨駅前の喫茶店で村上を待つ。
30分ほどして村上到着、無言で重みのあるウェストポーチを渡して来る。
「それを腹の下に巻け。
紙は全て100ずつ結束されている。
帰宅したら念の為にオマエが目視でカウントしろ。
不足があればちゃんとクレーム入れるんだぞ!」
『あざす!』
なるほど。
確かにウェストポーチを服の下に巻けば安心感凄いな。
「なあ、チャコちゃんの事なんだけどさ。」
『スミマセン!
流石に今はこっちに専念させて下さい!』
「…そりゃあそうだ。
飛田が正しい。
よーし、まっすぐに帰れ。
寄り道はナシな。」
『コンサル、期待してますよ。
明日から毎日新宿で待ちます。』
「え、怖。
20万じゃ割に合わねーな。
まあいいや。
馬鹿な若者がカタギで生きていけるように考えるのも年寄りの仕事だからな。」
夢中で飯を食いながら、ふと卓上を見る。
コロッケ、唐揚げ、枝豆、煮卵、ザク切り胡瓜。
そして俺が何気なく使っているのはフォーク。
確かにこれなら机の汚れを気にせずに済む。
…ったく。
オッサンは無駄に気を遣うから嫌なんだよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
府中の自宅。
ワープは安全にカネを運べるのが良いよね。
100万の札束が5つ。
そのうちの1つだけ結束が乱れている。
『あー、絶対そうだわ。
あのオッサンならそういう事するわ。』
呟きながら数えると案の定101枚。
一枚だけ新札でない紙幣が混じっていた。
pururururururu
「もしもし飛田か。」
『クレームです。』
「うん、そいつは悪かった。」
『じゃあ、また明日。』
「おう、また明日な。」
そのうち年寄りの余計な気配りもワープで割愛出来るようにならねーかな。
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