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知ってる固有名詞が少ないからな。

結論から言えば、ドワーフキャラバンは大成功だった。

代表団は皇帝との謁見を許されたし、貢納品は大いに喜ばれた。



「この様な立派な宝物は帝都にもない!

今日は余にとって最高の一日となった!」



当然、異民族懐柔の為のリップサービスなのだろうが、皇帝は概ねドワーフに対して好意的であり、氏族に対して様々な権利書を発行し、自身が保有する鉱山管理会社の重役陣も紹介してくれた程だった。

予めそういう指示があったのか、物品の買取も相当有利なレートを適用してくれた。

王都時代に割り当てられていたドワーフ区画も引き続き使用することも許された。

皆が胸を撫でおろし安堵の涙を流していた。

彼らは賭けに勝ったのだ。



「じゃあ、これがトビタの取り分な。」



『いやいや!

600枚は多過ぎでしょう!』



「ははは、その台詞は帝国人に言ってやれ。

アイツら大喜びするぞ。」



黒胡椒の本来の買取価格は㌔辺り金貨15枚。

だが、帝国㌔金貨30枚で買い取ってくれた。

まさしく大盤振る舞いである。

俺の持参分が20㌔なので金貨600枚

総取りする訳にも行かないので、幾らか受け取ってくれと頼むがガルドは笑うだけだった。



「トビタは弓が巧いからな。

有望な若者へのサービスさ。」



『…。』



要は彼らは俺がグリンヒル残党兵を大量に射殺した事への報償を何かの形で支払いたかったのだ。

俺が表立っての表彰を謝絶すると知っっている所為だろう。



『戦死者への弔慰金として金貨100枚を支払う事は可能ですか?』



「悪い心掛けじゃない。

だが、それは自分の同胞に支払ってやれ。」



『そんなに仲が良かった訳じゃないですし。』



「駄目だ。

自分の所属するコミュニティを粗略にする者は他コミュニティからも信頼されない。

これはドワーフ云々の問題じゃない。

極めて普遍的な話なんだ。」



『…。』



「トビタ。」



『…そっすね。』



その後、バルンガ事務長とも相談してドワーフキャラバンに金貨50枚、残りの50枚は戦死した級友達の供養に費やすことになる。


植田亮平・西岡悠馬・根元ヨシキ・沢口春奈。

彼らが勇敢に散った事をこの地で証しておく。



『じゃあな。』



これらの墓標はすぐに朽ちるだろう。

俺に墓守までする義理がないからだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



金貨500枚。

府中の自宅で何度も数え直しているから間違いない。



『よし…

やった!

俺は賭けに勝ったんだ!!』



感極まって、思わず涙がこぼれる。

危ない橋を渡っただけあって、最高の収穫になった。

村上翁の算定では金貨1枚の換金レートは55万円。

つまり、2億7500万円分の金を獲得したのだ。



『…この金額ならFIRE出来るな。』



うん。

そうだな。

もう異世界は不要だな。

年利2パーセントの投資信託に預ければ、毎年550万円を受け取れる寸法だ。

一ヵ月あたり45万円強。

何もせず遊んで暮らせる金額だ。



『…。』



俺の家、貧乏だったからさ。

皆が普通に買って貰ってるゲームとか持って無くて、スマホも無くて。

親父はいつも「背中が痛い」と辛そうで。

たまに父子でフードコートに行くと、周囲に居た客が足早に立ち去って。

学校でも女子達から臭いとか汚いとかずっと陰口叩かれて…

体験学習でドーナツ屋に行った時、俺だけ厨房作業に回されたこともあった。



『…。』



まあいいさ。

全ては終わった事だ。

俺には親父の分まで奪われたものを取り戻す義務がある。

勝たなきゃ、ここで。

でなきゃ死んでも死にきれない。



『…。』



不意に電話が鳴る。

どうせ村上翁だ。

他には教えてないからな。



「やっほーっ♪」



『?』



「やっほーっ♪

聞こえてますかー?」



『…チャコちゃんさんですか?』



「うふふ。

覚えててくれたんだ。」



…知ってる固有名詞が少ないからな。



「専務ー。

飛田君の生存確認でーす♪」



  「アイツに着信履歴の見方を教えてやってくれ。」



「あはは、了解でーす♪」



『…。』



「酷いよ、飛田君。

何回電話しても取ってくれないから、専務が寂しがってたんだよ。」



  「余計な事は言わんでいい!」



「あはは、すみませーんw」



『チャコちゃんさん。』



「んー?」



『村上さんに謝っておいて下さい。』



「ですって♪」



  「別に怒ってねーし。」



「ですってw」



『俺も村上さんの顔、しばらく見れてなくて寂しいです。

また、遊びに行かせて下さい。』



  「今日はすき焼きだから来いって伝えておいて。」



「自分で言えばいいのにw

ねえ、飛田君。

村上家は急遽すき焼きの日になったから、おいでよ。

今は都内?」



『府中に戻っております。

じゃあ、今から伺います。』



「専務、良かったですね。」



  「…そうだな。」



「お!

珍しく天邪鬼が発動しないww」



  「うるせー。」



『じゃあ、着替えてから向かいますので。

また後ほど。』



「ねえ、飛田君。」



『はい?』



「おかえりなさい。」



『…どうも。』



一度に大量の金貨を持ち歩くと村上が怒るからな。

今日は10枚だけ鑑定して貰おう。

一気に現金化するのは愚策かも知れん。

金の高騰がいつまで続くかを村上翁に教わらなくてはな。

この話が面白いと思った方は★★★★★を押していただけると幸いです。

感想・レビュー・評価も頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
投資の計算は知ってたけど税金は知らなかったかー まず税務署との戦いですな
あれ?胡椒の販売先見つけて、金の密売見つけて、、、うん、勝ち組(笑) 後は税金系うまくかわして、枕高くして眠れるを確定できたらかあ。
ガルド親方いいこと言うなぁ とはいえ、級友にかんしては所属したくて居たコミュニティではないってのもまた確かではあるからな・・・ 異世界でも日本でも、地歩になるコミュニティに所属できたり作れたりすると…
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