知恵は回らねど火は踊る!!!
薄汚いアパートの一室で俺は思案し続けていた。
俺のワープ能力なら、目視した場所全てに忍び込めるし、盗みたい放題だ。
従って、その気になれば今すぐにでも大金を盗み出す事が可能である。
…だが、我が国の監視カメラ数は異常だ。
さっきネットで調べたが、判明しているだけで500万台以上のカメラが仕掛けられているらしい。
くっそ、監視社会かよ!!
俺が泥棒出来ねーじゃねーか!!
くっそ…
窃盗罪は結構重いからな。
何度も危険を冒す訳にはいけない。
理想を言えば、一発で一生遊んで大金をGETしたい。
そしてワープは浪費を楽しむ為だけに使う。
これこそが令和におけるチートとの向かい合い方だ。
カネ、カネ、カネ。
カネさえあれば、こんなボロアパートともオサラバ出来る。
(まあ今月中に退去させられるのだが。)
一見悲観的な状況であり、異世界に行く前の俺と親父も頭を抱えていたが…
今はワープがある。
使い方さえ間違えなければ、今夜中にも俺は大金持ちだ。
だが…
こんなチートを保有している事が知られたら…
悪い想像をしてしまい寒気がする。
ロクな末路は辿れないだろうな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
深夜、ふと思い立ち布団から抜け出る。
目星を付けていた古着屋の店内にワープし、何着かの服を拝借。
顔を隠せる鍔の大きな帽子もだ。
一旦、自宅に戻り大きなマスクを着用。
よし、監視カメラに映っても俺を特定する事は困難。
『ワープ!!!』
次に親父の故郷のホームセンターの裏手にワープし、ガソリン缶を盗む。
『ワープ!!!』
そして俺から税金を取り立てようとした市役所に到着。
派手に灯油を撒いてから放火!!
『ワープ!!!!』
子供の頃に林間学校で遊びに行った瀬戸内海の離島の海岸で服も燃やして、ガソリン缶ごと海に捨てる。
当然、指紋を残すようなヘマはしていない。
『ワープ!!!!』
アパートに戻った俺はシャワーを浴びて寝た。
いやあ、金儲けの方法は思いつかなかったが、テロには最適だわこのチート。
熟睡したかったのだが、消防車がうるさくて全然眠れなかった。