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ラストエピソード 音楽とともに

それから....少し時は過ぎた。


「おばさん!只今!」


ダブルケイの扉が、勢いよく開き…和恵が飛び込んでくる。


「お帰りなさい」


カウンターの中から、里美がこたえた。


「あっ!志乃お姉さん!いらっしゃいませ」


慌てて、二階に上がろうとした和恵は、カウンターに座る志乃に気付き、頭を下げた。


「お帰りなさい。和恵ちゃん」


志乃は、持っていたグラスを置いて、微笑みかけた。


和恵も微笑むと、ゆっくりと奥へ向かう。


「何か、飲む?」


里美の問いに、


「今はいい!」


和恵は首を横に振ると、ステージ横の扉から、2階に上がる。


ドタドタと途中まで、階段を上り、またドタドタと下りてくる。


「おばさん!」


店に顔を出し、


「後で、ドラム借りていい?」


「いいわよ」


里美は、少し呆れながらもOKした。


「やったー!」


と両手を上げ、


和恵は階段を走って、上がっていく。


その様子を眺めていた志乃は、再びグラスを取った。


「ドラムやってるの?」


里美はため息をつき、


「誰の影響か知らないけど…最近、営業前によく叩いているわ」


「で…筋はどうなんですか」


志乃の質問に、


里美はタバコを取り出し、火をつけた。


タバコを吹かすと、


「才能とかじゃなくて…本当に…嬉しそうに叩くのよ。あの子は、上手くなる」


里美は確信していた。


「才能があっても…楽しめなかったら、いけないし…」


志乃は、グラスをコースターの上に置き…氷を見つめながら、呟くように言った。


「香里奈のこと?」


志乃は頷き、グラスの中の氷を転がす。


里美は、タバコの煙を吐き出した。


「あの子は…音楽が大好きだと思う。本当に。だけど…自分から、見つけたものではないし…」


「歌に苦労してない…。挫折も味わっていない」


志乃は、グラスを指で持ち上げ、呟く。


里美は、視線を奥のステージに向けた。


「生まれながらに、音楽に愛されてたから…仕方ないわ」



「歌は、人生よ。何の苦労も、苦悩もない…人生から、人の心に触れる歌は…生まれない」


志乃は、グラスの中身を飲み干した。


里美は、志乃のグラスに、新しいウィスキーをいれた。


「だけど…あの子は凄い歌手になるわ。絶対に」






「早く!」


前を歩く太陽に、直樹は目を細めた。


(彼女は太陽です。例え…沈んでいるときがあっても)


なぜなら...


(太陽は沈んでいても、輝きをやめることなんて、できないから…)


直樹は、自分が闇だと思っていた。


でも、そんな自分を...太陽はずっと照らしてくれた。


そんな太陽がそばにいれば、どこにいてももう...迷う事はない。


「愛しています」


思わず...声に出た。


しまったと思ったが、


太陽は振り向いてこう言った。


「あたしも!」



直樹は今、輝いていた。


それを、自分でも実感できた。


愛することは、


自分も、相手も、


輝かせるんだ。


直樹は、自分が…太陽になっていることに気づいた。


人は誰でも、太陽になれるんだ。


「ありがとう」


直樹は笑顔で答えた。


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