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第8話『温かな思い出』

「今日はレーヴァン様を特別な温泉に連れてってあげるの」

少し時間を遡る。


先日『神杖』を2つ手に入れた俺達は、遂に自由気ままな日常を謳歌しようとしていた。


こちらに来てからあまりゆっくりと出来ていなかった事もあり、俺が「温泉に行ってみたい」と発言したところベルが既にオススメの温泉の場所をピックアップしてくれていたのだ。


今日はその温泉へみんなで向かう予定だ。

その準備も全て昨日の夜までに終えており、タオルと桶も街で人数分用意してある。


準備は万端!

異世界温泉…うん。楽しみだ!


「頼んだぞ、ベル」

「ん」

そう言いながらベルの頭を撫でる。

ベルはほんの少し口角を上げて微笑む。


リノ助はともかく、ベルはアホの子ではない。

特に、どちらにも分け隔てなく接しているが、ベルといるとついつい妹の事を思い出す。しっかり者の妹達は今頃、元気にしているだろうか。


因みにリノ助に頭撫で撫でなどしてみろ?


キモイぞ。


酔っ払い顔負けのアヘ顔で「えへへ〜↑」とか言い出すに決まっている。


「よし、じゃあ出発しますか」

「レーヴァン様、リノンがまだ」

「ん?リノ助?さっきまですぐそこにいなかったか?」


そういえば目の前でベルの頭を撫でてるのを見たら、リノ助なら必ず自分もやってくれと突っ込んでくるはず。


その時だった。

『どこでもいけるドア(ダイヤル式)』の扉が勢いよく開かれたと思った矢先、


ーーーバンッ!

「颯爽登場!」


との掛け声と共に、リノ助が飛び出て来た。


「どこにいってたんだよ?」

「じゃーん!コレを買ってきましたー!」


その手には『酒』と銘が入った陶器が握られていた。


お酒?マジで!?

でもそりゃそうか。

この世界にだってお酒はあるのだ。お酒が無いとやってられないのはどこ世界も共通認識なのであろう。


うむ、素晴らしい!


「おぉ!リノ助!気が効く……あれ?」

ここでふと、あることに気がつく。


「あれ?素直に褒めて貰えると思ったのですが?」

きょとん。と、黙っていれば非凡な可愛らしさを感じる顔でリノ助が見つめてくる。


「あぁ、ありがたいんだけど、リノ助の見た目で良く買えたなーと思って」

腐ってもロリババァ(自称天使)

見た目だけはちみっこ(・・・・)なのだが。


「私だって『ツテ(・・)』位ありますよ。えっへん!」

あやしい。


でも今は素直に受けとっておこう。

「そっか、ありがとな。じゃあ改めて出発するか。ベル頼む」

「ん!」


 年甲斐にもワクワクしている自分に驚いた。大人になってからというもの、心の底から感じるこの気持ちを忘れていた気がする。


少年や少女が最初に突き動かされる衝動が、このワクワクを感じる心、いわゆる興味関心の追求なのだとしたら、大人はその逆なのだろう。


楽しみや興味の喪失。日頃のちょっとした残念感。“不幸”だと感じる一瞬。理性による心のヤスリ掛け。

その積み重ねが大人になるという事なのかもしれない。


あぁそっか…。


こういった感情の振り返りをする時間があるという事に、俺は落ち着きと安心を覚えた。


老いてもなお「少年よ大志を抱け、この老人の如く」と発言した偉人の偉大さが今になって身に染みるようだ。

昔はただの有名人が意図的に流した誇大広告としか思ってなかったからね、しょうがないね。




「ん。よし」

ベルがカチカチッとダイヤルを回す。


「さぁ、どうぞなの!」

「おぉ!」

「いっきまーす!」


遂に!温泉!

温泉嫌いな人いるか?いやいない!




そのドアの、先に広がっていたのは、




ゴプゴプッドッパーーーーン!


「うぉぉ!凄い勢いの間欠泉だな!」

「立派な湯気が立っていて、とっても熱いですね!レーヴァン様」

「ん、レーヴァン様にふさわしい場所なの!」

「さぁ入りましょう!」

「うん!景色も良いし、この濁り湯が身体の芯からホッとする」

「お肌すべすべになりますね!」

「んー、コレがいいの〜」


もう温泉最高!!!






・・・・・・・・・・・・?





「とでも言うと思ったか!」

「とでも言うと思ったんかー!」

「ん?言ってくれると思ってたセリフと違うの」


確かに絶景だ。ここにしかない景色。

熱気も凄い。呼吸がし辛いくらい。

間欠泉?ぬるま湯かな?


「アレ噴火じゃねーか!」


目の前に広がっているのはぐつぐつと煮えたぎる真っ赤な噴火口。



そう、ここは火山だった。



「レーヴァン様はともかく私達は入れないんだぞ!レーヴァン様と温泉!お酒!飲みたかったのにぃ!」


「リノン。私はレーヴァン様のお疲れを癒して貰う為に此処へお連れしたの。遊びじゃないの!!」

ベルの目が燃えてる。本気だ。マジだ。


「いや俺でも入れないと思うぞ!ってか入りたくない!」

「えっ!入り…たく…ない…!」

「いやだってマグマだし!?溶岩だし!?アレ岩石だし!?湯じゃねぇし!」

「がーん…なの…岩だけに…」

「なんか寒いですね?レーヴァン様やっぱり入ります?」

「…はいらん」


さておき。

ベルの落ち込む姿を見るに、とても衝撃を受けているようだ。


「あぁ……その、傷つける為に言ったんじゃないぞ。ベル」

「でも入れないの………」

不安そうな顔をするベル。


俺は少し自分に反省をして、なるべく優しい表情をするようにつとめた。


そしてちゃんと向かい合いながら理由を言った。


「俺も1人の人間だ。例えココへ俺だけが入れても、ベルとリノ助と、みんなで入る温泉でゆっくりしたいんだ。俺だけがここで身体を癒せても、2人がお預けを喰らっていたら俺の心が癒されないんだ。だからみんなで、ベルもリノ助も。みんなで一緒に入れる所はないかな?ベルの選んでくれた温泉で、一緒に俺は入りたいな」

因みに俺はロリコンではない。それだけはハッキリとさせておこう。



「…!」


その時、ベルはふと忘れていた小さな時の記憶を、

さっき撫でられた頭に残っている、手の温もりと同じ。


温かい思い出を、思い出した。




「ーーベルとゆっくり、一緒に入る温泉は、また格別だな。なぁベル」


お父様ーー?



「あっ」

ベルは小さくそう言うと、目尻に涙を浮かべた。


「あぁ、ごめん!泣かせる為に言ったんじゃないんだ」


「……ううん、レーヴァン様」


涙を拭ってベルは言う。

「感服したの!」


身を乗り出し、頬を赤らめながらキラキラした顔で、晴れやかな笑顔で。

「早速!心当たりがあるの!すぐ!そこ行くの!」

「お?……うん!よし!そうするか」

「やったー!今度こそ温泉です!」


「ん!みんなで!みーんなで入るの!!!」

(ありがとう、お父さん…!)




その時のベルの晴れやかな笑顔は、

みんなでワイワイ温泉に入りながら、リノ助がベロベロに酔って変な芸を披露している時も変わらずに笑っていて、


騒がしくてゆっくり入れた訳じゃなかったけど、とても楽しくて。ベルとリノ助はいっぱいはしゃいで、


俺が見守りながら、時には混ざって、


ここに来てから一番楽しい時間で、


温泉も温かかったけど、


その時間も、ベルの笑顔も、リノ助の酔っ払いも、俺を取り巻く全てが、


心温まる大事なものだと、




ーー俺は、心の底から感じたんだ。








「おーい、リノ助。ダメそうかー?」

「れ〜びゃんしゃまぁ〜ぶっちゅぅうぅう〜ですぅ〜」


自称ヒロインとは思えないブッサイクなタコ(ぐち)をするリノ助。

まぁ、あれだけはしゃいで酔っ払えばこうなることに無理はない。


「ダメそうだな」

「ん、リノンは可愛いの」

先程入った温泉は、確実に俺達に良い影響を与えた。

特に、ベルが本心を少し表に出すようになったのだ。

ましてや、あんなにリノ助と楽しそうにしてる姿を見たのは初めてだった。

心と身体を温めて、皆を笑顔にするーーこれが温泉の効能の真実なのかも知れない。


間違いなく、温泉に来てよかった。


そう思いながらリノ助を背負い、現在は帰宅している途中である。


リノ助は温泉にて持参したお酒を湯水の様にゴクゴクと煽り続けた結果ベロベロに酔っぱらってしまい、自力では到底歩けないので仕方なくこうしておんぶするしかなかったのである。


「ったく、おんぶは今日だけだからな」

「羨ましい、レーヴァン様は優しいの」

「ベルもおんぶされたいのか?」

「ん、次来る時は私が全力で酔うの!」

 どこか違う部分で気合い入ってるよな。


「酔わなくてもちゃんとしてやるから」

「やったの!ぐびぐび呑むの!」

 酒から離れてない!


 それはそうとして、お礼を言わなきゃな。


「ベル、本当にありがとな。温泉とても楽しかったぞ」

「ん。私もとっても大事な事に気づいたの。レーヴァン様のお陰なの。また絶対みんなで来るの!」

「あぁ、また何度でも来れるさ」


 さぁ、そろそろ帰りのドアが見えてきた。





完全な帰宅までは目と鼻の先なのだが、ここである事に気付いた。


「あれ?こんな所に道なんてあったか」

「んー、初めて見たの」


行きの時は気付かなかっただけかもしれない。

こちらから滝の音が微かに聴こえてくる。


 滝かぁ。


「まぁ折角だし、リノ助には申し訳無いけど滝の音がするし、少し見ていこうか」


温泉帰りに滝のマイナスイオンを浴びるのもまた一興だろう。


「ん、わかったの」

「気にしないれくらさぃ〜、らいじょーぶれすぅ〜…ぅぃヒ!ック」


俺はまだこの時、知らなかった。


まさか自分達が狙われているとは。





「もうすぐ着くかな?」

滝壺に落ちる水の音が大きくなってきた。

「清々しいマイナスイオンを感じるの」

まぁ、確かに少しひんやりしてるかな?


そう思っていた時、

ヌルッ。

「ん?」

思わず足元に目をやる。


そこの土だけ水分を多く含んだ粘土質になっていた。


「なんだ?ぬかるみがあるな」


いくら水場が近いとはいえ、ここだけなんておかしいな。


「レーヴァン様!なんか変なの!」

すると俺達の周りの土がヌチャヌチャと音を立て、次々と粘土に変わり始める。


 このままじゃ飲み込まれる!


「足場がまだ生きている箇所へ避難するぞ!」

「はいなの!」

持ち前の身体能力を活かし、リノ助を背負いながら脚力のみで跳躍を繰り返す。


にしても違和感がある。明らかに足場がおかしい。

これは誘導されているのだろうか。


避けていくうちに、滝壺間近の開けた場所へ着いた。

「これじゃあ落ち着いて滝を眺めていられないな」

間違いなくあれは魔法だ。完全に誘い込まれたって訳だ。

近くに魔法を使ったヤツがいるはず。

反射的に警戒を強める。


すると突然、

「こぉ〜んにぃ〜ちわぁ〜♪獲物さ〜んよぉ!!」

お調子者っぽい言い方が腹立つが、余裕綽々という感じで、一人のモブが現れた。


まさか自分から出てきてくれるとは助かる。


「何が目的なんだよ?」

「遊びたいだけだよぉ!おに〜ぃさん。ヒャハハハ!」

「ふざけんな。こっちは旅行帰りなんだ。遊ぶとか面倒くさいから、さっさと帰らせてもらうぞ。行こうベル」

「ん。バイバイなの」


そして俺が一歩踏み出そうとした時、地面が僅かに光る。


ジャリリリリリリリィッ!


「俺の狩場に来たのが悪かったなァ♪ガキでも面が良ければ金になんだろぉが!簡単に返す訳ないっしょ♪キヒヒ!」

「クッ!ソッ!また盗賊かよ!」

急に地面から鋭い針が、勢いよく何本も突き出てきた。


この身体は何事も大丈夫だと言われているが一応、全て紙一重で避けれた。


「ハハッ!冥土の土産に教えてやるよ。ここら一帯にはなぁ、俺様がありとあらゆる罠を張ったのさ。毒霧や転移魔法陣!それだけじゃ〜ぁねぇよ!もちろんさ!魔法陣の先には底無し沼、火山、大海原のど真ん中ァ!思わず踏み抜けばグサッと逝くかもなぁ!イヒヒヒヒっ♪」


「説明ありがとな、変な小細工しやがって!」

この際、その内容がブラフでもブラフじゃなくても無闇に突っ込むという選択肢は元より無い。


「動いてもあの世、動かなくてもあの世行きなんだよぉ!」

モブはそういうと、銃と杖を取り出す。


「銃で仕留められない時は足場をくり抜くか、ずらして罠に強引に掛かって貰うぜ?」

はぁ……もう!こんな時のチートじゃないのか!俺の身体は!

でも、違う場所に飛ばされでもしたら戻ってこられなくなる。


じゃあ罠魔法の魔力感知!



なんてものは出来ない…



何故かというと、

まず魔力感知で特定が出来ない。そもそも罠魔法は罠に引っかかってから発動となる。従って設置段階における始めの発動時を見ていないと場所がわからないし、地面に魔力が溶け合い時間が経てば自然の元々ある魔力と遜色無く、全く感知出来ないのだとか。という謎の説明が頭の中に浮かぶ。

ルシファーと閻魔の知識による恩恵の一つだ。


これは間違いなく罠魔法最強なのでは?


あっ。てか、そこら中ゼオンで撃ち抜けばいいのか。


ついでに言えば、最近ゼオンしか使ってねぇな。


「おい少しでも妙な真似してみろ!動いたら足元は無ェぞ」

そう言いながら杖をこちらへ向けてくるモブ。


そこのセリフは「命は無ェぞ」じゃないのか。


魔法で空中を足場にしたくてもあいつに攻撃の手段がある以上は下手に動くことができない。


万事休す…?

無詠唱魔法を使うか?でもそうなると殺すしか罠の解除方法がない。


主に罠魔法の解除は3種類。


一つは、術者の心肺停止。

これは論外。旅行帰りに殺害なんて気分が悪くなる。それに殺しはあくまで最終手段だ。


二つ目は、物理的な破壊及び強制発動。

さっき言った通り、ゼオンで撃ち抜くなどがこれに当たる。


三つ目は、術者による解除。

正直これには展望が無い。

一番安全な方法に限って一番可能性が無いというのは世の常であり、些か疑問ではある。

脅して解除も出来なくは無いのだろうが、ただしそれには問題がある。

最強の罠魔法でも、術者による解除の際には設置時と同量の魔力を消費しなければならないのだ。魔力が残ってなければ何も出来ない。ポーションなどで魔力を回復させたらそれこそ抵抗されるのがオチ。

どこに苦戦の末敵の武器を弾き飛ばしたのに再度拾って渡す様なバカが居ようか。


「クソッ、どうしようもないのか!」

「んふぇ?」

背中から声が聞こえた。場面が違えば優しく声を掛けてあげられたものを。


「リノ助起きたか?でも今、俺でもやばそうな場面なんだ。まだ寝てたほうがいいかもな!」

「なにいってんれすか?れーびゃんしゃま?よいこらせっと」


そう言いながら俺の背から降りるリノ助。


「おい何やってんだ!」

おいおい!なにする気だコイツ?


「ぁあ?ヘロヘロじゃねーかお嬢ちゃん。そんなに死にたいのかぁ?」


「悔しいけどあのモブの言う通りだぞリノ助!遊びじゃないんだ」

「ぅいッひ〜ぃ」

リノ助の目は完全に据わっている。飲み屋街の路地に一人はいるおっさんと同じ状態。


「まぁまぁれーびゃんしゃま、ここはこのリノンにおみゃきゃしぇくだしゃい!」


ビシッ!っと、敬礼をするリノ助。



因みに俺ではなく隣のベルにしている。


「リノン、逆方向なの」

「あれ?れーびゃんしゃま、ちぢみました?」

だからそっちは俺じゃねえんだって。

もうだめだ。終わった。


「リノン、私はレーヴァン様じゃないの」

「まぁまぁ、ここはわたしがぎゃつんとやったりましゅ!」

おいおい不安しか無いぞ!


「やめとけリノ助!」

そもそもあいつ癒しの天使なんじゃねぇのかよ!

とにかく、自分の状態異常をどうにかして欲しい!


「ふん!こ〜んなもぶきゃらわぁ〜、リノンのデコピンでぽぉーん!と、いっぱつはじいてやりましゅよぉ〜!」


「おい無茶だ!」

クソ!魔法で止めるか!?でも下手に動けば全員やられる!


「はぁくいしばれぇもぶぅ〜!おりゃあ!」

「ダメだ!」

俺の止める言葉が聞こえるはずもなく、走り出すリノ助。


「ハハッ!ドチビが!いい度胸だぜ!いいぞ来い!俺様が張り巡らせた罠を掻い潜れるかな!」

「やめろ行くな!リノ助!!!」

あ、もうリノ助はおしまいだ。


クソッ!俺がさっきしっかり止めていれば!

そう思って目を瞑った。








のだが、


「………ん?爆音が聞こえてこない?」


「ん!!レーヴァン様!あれは!」


恐る恐る目を開ける。


「こなくそぉ〜!いっくぞぉ〜!うぉりゃあぁぁあ〜!」

もちろん、リノ助の攻撃は擦りもしない。なぜならまだモブの所まで行けてないから。


しかし、罠に掛かってもいない。


何故なら、

「ふらっふらな酔っ払い特有の、『千鳥足』で罠を掻い潜っているの!!!」





「………ギャグ漫画かよ」

思わず素で反応してしまう。


「うぃい〜、ひっく…ん〜ぶっとばしてやらぁ!しょして〜そのあとわぁ〜れーびゃんしゃまにぃ〜ムフフッ、ブッチゥぅうしてもりゃうんだも〜ん!」

「なっ!なんだこのチビ!なんで全部の罠を避けてんだよ!俺だけが足場のポイントを知っているのに!ありえねぇ!!!」


う、うーん。


………まぁよしとするか!!!


これはこれでチャンスだ。

リノ助が気を引いてるうちに、後ろ手にゼオンを出す。


あとはベルを背負って、リノ助を回収しながら身体能力に物言わせて大ジャンプして、ゼオンをモブと周辺目掛けてぶっ放しながら逃げる。


それか、空きあらば気絶させる。

よし、これで行こう!


「クソッ!お嬢ちゃん、悪く思うなよ!こうなったらお嬢ちゃんを撃つしかねぇんだからよォ!!」


「やめろ!」

おい!なんだよそれ!こっちはまだ準備が出来てないのに!


「危ない!リノ助!こっちへ戻れ!」

「んふぇ?」

その時、


ーーバァン!!!「リノン!!!」


俺が呼び声を上げたと同時に銃声が鳴る。



嘘だろ!?

「リ、リノン?」


最悪な事態が起きた。


俺はそう思いながら、リノンに呼びかける。


リノンはだらんと力なく腕を下ろしながらふらふらとしている。


「リノン…うそ…だろ…」


徐々に、こちらへ振り向いたリノンの表情は…


「あぁぁ〜!れーびゃんしゃまがいま、リノンってよんでくりぇたぁ〜うへへへへッ♡」




キモかったーーーーーー!


「ふざけてんのか!?なんだァ!なんなんだよこのチビ!罠も銃も避けやがる!バケモンじゃねーか!」

「よ、よし!ナイスだリノ助!」

今がチャンスだ!


「ベル、俺の背中にしがみつけ。絶対に離すなよ」

「ん、ついにおんぶの時なの!」

「よし行くぞ!」

俺は強く地面を蹴り、真正面に跳ぶ。


「リノ助!お手柄だ!」

「やっひゃぁ〜」

そしてリノ助を引っ張り寄せながら、リノ助が立っていた所を足場として踏み、今度は斜め上方向目掛けて跳ぶ。


「な!野郎!逃すかよ!」

「遅い!」


俺はゼオンを片手に、銃口全てに魔力を込め、振り撒く様に撃つ。


爆破の衝撃で地面が大きく揺れ、モブがよろける。


「ぐぁあぁあ!俺の罠がぁ!こんなの面白くねぇよ!くそがァァァァァァァァァァァ!!!」


足場が全て露わになり、罠も殆どが無くなった。

すぐさま足場が無事な地点に降り立ちゼオンを構える。


「こいつで終わりだよ、強かったぜ。モブ」


そして今度は強く吹き飛ばす為に、一発に魔力を溜め込んで撃つ。


「うげひゃッ!!」


岩壁に打ち付けられたモブは程なくして気絶した。





「ふぅ。今までのモブで一番厄介だったな。みんな、もう大丈夫だぞ」


てかこの世界の盗賊強すぎではないだろうか?いやある程度強くなければ盗賊なんて出来ないかもしれないが、これほど苦労することは無いと思う。


だって普通はさ、もっと無双できるシーンの筈だろ?


異世界序盤で手に入れた力を遺憾無く発揮して、そのイキリのために存在している都合の良い登場人物なんじゃないのか?


ってアレ?


「……」

「……」

みんなからの反応がない?


「おーい、どうしたんだ2人とも?」


「やっとのおんぶ、それに俺から離れるなって言った。ずっとこうしてるの」


離すなとは言ったが…俺から離れるなとは言ってない気がする。


「いや、それはあの時だけで、もう安全だからな。また今度おんぶしてやるから」

身体を軽く振っても離れない。

「レーヴァン様、ぎゅーなの」

ちょっと可愛い。


因みに俺はロリコンではない。改めて言い切っておこうと思う。


「いやなの!譲れないの!」

はぁ……まぁいっか。


あとは、

「おいリノ助。大丈夫か?」

ピクリとも動かない。

銃弾が当たっていない事はわかっている。

さしずめ酔っている所を強引に抱き寄せたため、リノ助はぐったりしているのか。


そう思って、地面に一度寝かせようと顔をこちらに上げさせた時だった。


「うぷっ…」

「大丈夫かリノ…」


それは、まさに間欠泉の如く。



「ぶぉおぅええぇぇぇぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェエェェェエ!!!」

※美しい煌びやかなカラーリングにてお楽しみください。



見事なまでに吹き上がり、





主に俺の顔面を、覆い尽くすのであった。

次回予告!!!


「温泉気持ち良かったですねぇ〜」

「そうだなぁまた行きたいよなぁ」

「今度は私が一番ぐびぐび飲むの!」

「頼むから程々にしてくれよ……もうあんな目はごめんだぞ……」

「ポッ。天使で乙女の聖なる異物ですよ♡せ・い・い・ぶ・つ♡」

「やめろ!思い出したくもない!」

「ん。レーヴァン様、私のオエーも浴びたいの?」

「そんな特殊性癖はない!トラウマになるからやめてくれ!」

「レーヴァン様。心に正直になって下さい。私はどんなレーヴァン様でも受け入れますよ。次回『強敵現る?新しい力発動!』」

「心に正直になって言うが!そんなもの浴びたくない!」

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