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第7話『モブの名はキャスバル?』

現在、新作ゲームが話題沸騰で大人気ですよね。今では大型アップデート等、飽きさせない工夫が豊富で一つのコンテンツを太く長く遊べる事は嬉しい限りです。


皆さんは人生を変えるゲームであったり、長年敬愛している大好きなゲームはありますでしょうか?

私の人生で一番好きな神ゲーは『テイルズ◯ブハーツ』です。本当に素晴らしいゲームです。

封印の地で仲間の一人(幽霊)であるサリヴァーンを解放した俺達は、ようやく長い一日の帰路に着いていた。

そう、後は帰るだけだったのだが…そう簡単には行かなかった。


疲れている時に限って、立て続けに問題が降って湧くのは、どの世界の人間にも等しく平等であるらしい。


「ちょっと待って下さい!」

全く聞き覚えの無い声だった。


「もう立て続けに誰?」

俺は半ば呆れ気味に反応する。


もう少しフレンドリーな出会いはないものだろうか。


「僕の名はキャスバル。貴方の金品を懸けて、決闘を申し込む!」


コイツは一体何を言っているんだ?

何故、俺の物なのにわざわざ俺が闘って勝ち取らなきゃいけないのだろう?


「やだよ。話にならない。じゃあな」

「さよならでーす」

「ん、ばいばい」

しかも名前が…キャスバルって…今後危な過ぎる。関わりたくない。


余所余所しいのは当たり前なのだが、そんな俺達の態度を見たキャスバルが尋常ならざる息遣いで俺の両肩を掴み激しく揺らした。

「いやいやちょっと待ってくれ!頼む!初戦闘なんだ、受けて欲しい。この通りだ!」


明らかにおかしい、掴む手が震えている。

何かに焦っている様にも見えるがそんな事は俺が知った事ではない。

知りたくないし、益々こんな奴と関わりたくない。

俺は掴まれている手を振り払い、距離を取るように歩き出す。


「いや。そんな事言うけど、やってること盗賊だかんね」

「レーヴァン様の言う通りです。悪党とおんなじことしてますよ?」

「ん、頭を下げてると見せかけて奇襲してくるかも」

ま、ベルの言う通り油断は禁物だな。


「奇襲だなんて、僕は正々堂々と戦います!」

は?どの口が…盗賊が何を言ってるんだか。


「本当に正々堂々が良いのであれば盗賊なんてするなよ。そもそもあんた賊には向いてないんじゃないか?」

気合が足らないよなぁ。

盗賊に必要な狡賢さというか、悪行を生業として生きるという決意やら意志が全く感じられない。


「コレは自分で進むと決めた己の道なんです!申し訳ありませんが嫌でも戦って頂きます!」

「そんな大層なこと言うなら、んー、決闘とか言ってたし、騎士とか似合ってるんじゃないか?名前も騎士っぽいぞ」


騎士ならば、安定した職業ではないか。

いわば公務員の様なもの。たまに起こるであろう戦争に出たとしても、隙を見て戦場から離れていれば口実はそこそこに生き残れるし、普段はだらっと訓練をして散歩という名のパトロールやら筋トレ、宿舎の家事を分担してこなせば良い。


「ダメなんです!敷かれた道ではなく自分で切り開く道じゃなきゃ…僕は変われない!」

そう言いつつ懐から赤いグローブを取り出したキャスバルは、それを身につけた。


キャスバルの両手が黒く輝きだし、熱風の様に高温の魔力が噴き出す。

「既視感凄いんだけど、アレって…」

「逆に運がいいかもしれませんね」

「ん、『神杖』」

「おいおい嘘だろ」

まさか今日だけで全て集まるとかないよな?



「行きます!覚悟!」

キャスバルは中々のスピードで突っ込んでくる。

纏った魔力を身体に充満させ、魔法に変換した様だ。


 『魔力』これは血液を介して身体を巡るのだが、その魔力をどれ程駆使出来るかは、肉体における魔力の“浸透率”によって差が出るらしい。“浸透率”が高ければ高いほど魔力の巡りが速く、扱える魔力の量も増える。

その点、キャスバルは優秀なのだろう。

推進力は人間が出せる速度を軽く超えている。

まさに通常の3倍ほどの速度…

ってやめろ!

どうやら何者かが俺に不可抗力を掛けている様だ。


改めて、戦闘に集中する。

俺は黒い()“ゼオン”でキャスバルの足元近く目掛けて、足止めの銃弾を何発か撃つ。

「うわっ!」

すかさずキャスバルに銃口を向ける。

「それをどこで手に入れたかわからないけど、真面目に危ない物だから持ち主に返してこいよ。出来ないなら俺が返してきてやる」

「嫌だ!コレは自分を変える力をくれるんだ!絶対に返さない………!嫌だ嫌だ嫌だッ!」

駄々を捏ねる子供の様に髪をぐしゃぐしゃに乱すキャスバルから、ドス黒いオーラが溢れ出る。


「どこが正々堂々だよ」

力に溺れ、自分を見つめ直す事も出来なくなる前になんとかしなければならない。


『神杖』の力に頼りきった今のキャスバルに、自分の道を切り開く力なんて無いだろうに。


ブツブツと何か口走るキャスバルの瞳が暗く濁り始めた。このままだと身体を巡る魔力に意識を呑まれてしまう。

「………そうだ。ここから僕は変わる!名前も捨てる!もうキャスバルなんかじゃない!今日から僕は!シャ…」

「何も言うなぁ!」

強制的に言葉を途中で遮り、全速力で近づいてキャスバルの鳩尾に強烈なヤクザキックをかます。


砲弾の様に重い振動がキャスバルの身体を突き抜ける。


「ッッッ!!!」

キャスバルは全身に力を込め、なんとか地面を転がらずに後ずさるに止まる。


「グハァッッ!ゲホッ!ゲホッ!」

纏っていた黒いオーラが霧散する。魔力の巡りを遮るには、どうやら身体への物理的ダメージは効果的らしい。

やはり力こそパワー。


「…はぁ…やりますねェ!だが僕にも意地がある!」

グローブが赤く熱せられ、キャスバルの全身が鈍く黒く光る。


「赤い彗星拳ッ!」

正拳突きにより放たれた巨大な力の塊が、渦を巻き、周囲の樹々を巻き込みながら真っ直ぐに向かってくる。

このままだと地形を変えてしまうだろう。


「仮初の力に…」

拳には拳。指を折りたたむ様にゆっくりと握り込む。

「頼ってんじゃねぇ!」

掛け声と共に、圧縮した魔力を一点に集中させ、放つ!


そして、鋭く尖った魔力弾が大きな渦を突き破った。 


「なっ…」

さらに、その余波がキャスバルへ向かって飛んでいく。


「な…に…」

俺が放った拳の余波は、キャスバルを纏っていた黒い光を、全て打ち消した。

それはキャスバルの表情から察すると、キャスバルの気力を打ち消したとも言えた。


「その通りです…」

キャスバルの拳から、輝きを失ったグローブがズドンと落ちる。


「お前、根は悪い奴じゃないんだろ?真っ当な職こそ、お前は輝くと思うぞ」

「…………」

「おーい?」

やり過ぎたか?無反応だ。


「おい大丈夫か…」

「認めたくないですね、自分の若さ故のあやまち…」

「まぁ!若い時はそうゆうこともあるって!」

先程同様、セリフを遮る様に言う。

コイツふざけんなよ!とんでもねぇ野郎だ。あんまり喋らんでくれ。


 俺の思いを他所に、キャスバルは少しから笑いした後、こう切り出した。

「僕の家は…父は薬中、母は僕に対する暴力が酷く、それが嫌で今さっき家を飛び出して来ました」

「……えっ?」

重いわ!勝手に語り出すな!

しかし重苦しい空気が漂い始めた今、流石に無視もできない。


「何で賊の真似なんかしたんだ。しかも今さっき家出したって?こうさ…役的に?もうちょっと溜めてから出て欲しかったなぁ」

「僕だって一生懸命に生きていたんですよぉ!だからこれから自分の力で生きて行こうって思って!それなのになんなんですかぁぁあ!」

「ちょごめんごめんごめんて」

再度、両肩を掴まれ激しく揺らしてくるキャスバル。

父は薬中、母は家庭内暴力、そして息子は情緒不安定。


まぁ可哀想だが、同情している時間はない。

ほんの少しだが話は聞いたんだ。

サラッと解散してここは早く切り上げよう。


「仕方ない!そんなに言うんだったら、証拠を見せてあげますよ!」

勝手に話を進めるな。

「いや、別に言ってないし見たくないんだけど」

俺の声は届かない。しかもその手にはいつの間にか携帯電話が握り締められている。

「おいお前…」

ピッポッパッ♪とぅるるるる♪とぅるるるる♪

「は?」

「あ、もしもし…母さん…はあ?!うっせぇよボケ!帰んねーよ!!!」ブチっ。

切りやがった。何故電話をした?そして一体何がしたかったのだろうか?

「声大きいよ、もう訳がわからない」

「お待たせしました、もうすぐ来ると思います」

「何が?とにかく俺達はもう…」

帰るからな。


そうハッキリ言ってやるつもりだった。




ドドドドドドドドドドドド…


ん?地響きが段々と大きくなっていく。

地震とは違う。しかも何かがこちらに向かってくる様な気がする?



「リュウセイ…」

「りゅうせい?」

「レーヴァン様?」

「どうしたの?」

「いや誰かがリュウセイって」

見上げた空は、まだそんなに暗くない…


「星とかハッキリ見えないけどな。2人は見え…」

ビシュュュッッッーーー

「蹴りぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!」


突然、視界がスローモーションに切り替わる。


目に映る全てだけでなく、聞こえる音や声、あらゆる魔力の流れすら、遅く感じられる。


単純に俺の身体能力がバケモノなだけではない。

これにはもっと大きな役割がある。


俺の視界がこのようにスローモーションに強制移行するという事は、既に危険な何かが目前に迫っているという意味があるらしい。

要するに、安全装置が働いているのだ。



 まさに音を置き去りにしている(・・・・)とてつもない勢いの蹴りがキャスバルの脇腹に、今にも突き刺さろうとしている。

いや、メリメリと突き刺さっていく。

真っ直ぐに伸びる強烈な蹴りは、徐々に腹にめり込み、横を向いた姿勢のままキャスバルの身体はくの字型に変形する。身体各所の骨が軋み、複雑に折れていくさまが目にハッキリと映る。


そして俺の安全装置が正常を感知し、スローモーションが切れると同時に、キャスバルは激しい音ともに勢いよく吹き飛ばされ大木に打ち付けられた。


グバァァァァァァァアンン!!!


「あ!がぁっ!!」

キャスバルの口から血反吐が噴出する。


「「「………!!!」」」

俺達は突然の事で驚きを隠せない。

蹴りの勢いによって圧縮された空気が強風に変わり、髪が激しく靡く。


「…え?ちょ早過ぎて何がなんだが?」

「はわわわわわわわわわ」

「……殺人キック、だったの」


チラッ。

「あなた方は?」

蹴りを放った女性が声を掛けてきた。

空気で解る。ピンと張り詰めた糸の様に鋭い視線、腹に重く負担のかかる低い声。

この人はやばい。


「えっと………あのー………」

だめだ!これ以上の厄介事に巻き込まれたくない!

ボサボサの髪そのままになんとか口を動かす。


「あー………もしかしてあちら、息子さんですか?」

「そうですが」

身を持って体験して始めて言葉の意味が解る。

“ヘビに睨まれたカエル”とはまさにこの事なのかもしれない。


「んと……先程?息子さんが僕達と戦いたいと仰っていて、あの、こちらは断ったんですよ、あの全然戦いたくなかったので………ハイ」

余りの威圧感に、繋ぐ言葉がちぐはぐになる。


「でも息子さんから掛かってきたので………その……返り討ち?に?させて頂きました。ハイ」

「ほう?」

「そしたら急に?ご自分の話をされまして。そのー、お父上が薬に浸っているとか?お母様が………息子さんに対して暴力を振るう?とか?なんかそれが嫌でお家を飛び出してきたらしいんでー……すよ。ちょっと何言ってるか分かんないんですけどね、ハハハ」

これ以上の事態悪化を防ぐ為、俺は戦々恐々としている。


この場の酸素が全てこの人の支配下にある様な、そんな緊張感が付き纏い、呼吸にも許可が必要だと勘違いしそうだ。

自由に吸い込める空気など、吐息一つ分もありはしないのだろうか?


カラカラの喉がありもしない唾を飲み込む。


「………」

「………」

この値踏みされている様な眼差しに嘘は通用しない。


久々に感じる、母親に問い詰められ、ガチ説教をくらう感覚。


あいつが全部説明してくれればいいのにと思わざるを得ない。事の発端であるキャスバルは一向に目覚める様子はなく、大木の下でぐったりと沈んでいる。



………死んだんじゃね?


「はぁ……全く…」

「…すみません」

どうして俺が謝らなきゃならない!理不尽過ぎないか!


「夫は、糖尿病の薬や、そこから併発している病気の薬を毎食15錠程飲んでいるだけです。はっ!病気など、好き放題、暴飲暴食をしすぎたせいです!自分への甘さは気の緩みから生まれるのです!」

「え?」

薬中ってそういう意味かよ。薬漬けの間違いじゃねーか。


「だから息子には少し厳しいと思っておりますが、しっかりした男に育ってもらわないと!教養も必要です。学問も学ばせなければなりません。時間がないので連れていきますね、では」

暴力っていうか、めっちゃ厳しい教育者ってことか?


こういう家族の問題には首を突っ込まない方がいい。


キャスバルよ、生きていればいつか親のありがたみがわかり、恋しくなる時が来るぞ。


それと名前、変えなくて良いからな。危ないから。

今の名前、とてもカッコいいと思うぞ。


あと、赤いなんちゃらとか、彗星なんちゃら〜とかって言うのもやめた方が良いと思うぞ。


俺はそう願わずにはいられないのであった、まる。





………………………お前まさか妹とかいないよな?







兎にも角にも、『神杖』がもう一つ手に入ったことも含めて、遂に(・・)帰宅した俺達は、みんなで今後の方針を練ることにした。


最後に、話しは変わるが、今まで特に気になっていた事を聞いてみた。


「ってか杖じゃねーじゃん!」

何が『神杖』だよ!

手に入ったグローブを見ながらそう感想を述べる。


「まぁ形態はそれぞれなのですよ。一般的には杖って事だけですから」

「ん、仕方ない」

その一般的という部分の範囲に、俺達は含まれていないのだろう。


「想いに反応するんじゃなくて、せめて持てる人が限定出来ればなぁー」

「レーヴァン殿がそれを言うか。まぁしかし、『神杖』を無条件で持つことができるのは同じ派閥で同位存在の使徒かレーヴァン殿だけだ」

使徒ねぇ?全員幽霊なのだろうか?


「そもそも使徒って何族なんだよ?」

「それも多種色々ありますが、私はルシファー様の使徒でしたので、天使族ですよ。でも今は身も心もレーヴァン様の使徒なのでレーヴァン族です!」

おや?聞き間違いかな?

「リノ助はアホの子族かと思ってたぞ」

「何言ってるんですか?レーヴァン様。この可憐さは天使族にしか備わっていないものなのですよ」

両手で何回も何回も髪をファサッーファサッーってするな。

ちょ似合ってない似合ってない。


「ん、私はお父様が閻魔大王だから王鬼族」

王鬼族?『鬼』って事かな?

「私は人族の代表として天界側に付いていた。一応、剣を極めたのを認められてな」

お前は幽霊族じゃないのか!人間だったのか!


てか人間ってやっぱり幽霊になるんだな。


「んー、種族もあんまり限られないなると、じゃあコレは誰の?」

赤いグローブに目を落とす。赤色ってサリヴァーンと同じだよな?


「コレは生前、私の宿敵であった『シャルルマーニュ』のグローブだ」

「ん、獄界側の『闇の赤』シャルルの神杖」

シャルルマーニュ?確か十二勇士で有名なやつだろ?中世かな?


「じゃあチャンスがあればシャルルマーニュの封印を解きたいけどな。災害モンスターの状況とかわかる?」

「どこにいるまではわからないが、今はまだ自然の気配が落ち着いている気がするな」

「という事は、選択肢としてはシャルルマーニュの解放、若しくは暫くダラダラしても良いってわけだ!」

やっと、自由時間が出来るわけだな。


少しだらーっとして、『どこでもいけてしまうドア』使って観光して、美味しいもの食べて、とか色んな事を想像していると、楽しくなってきたな。


「まぁレーヴァン様が来て、間もないうちに色んな事が重なりましたからね。まとまった休息をとっても良いかもしれませんね」

「ん、『神杖』を2つも。この短期間で集まったのは上出来なの」

「まー、全部偶然だけどな」

「それもまた必然というものだ」

おっ、さすが剣を極めた年長者。

年の功はカッコいい事言うじゃないか。言葉の重みが違うよ。

「であれば、どっか温泉とかでゆっくりしたいなぁ」

「ん、任せて。レーヴァン様にぴったりな良いとこ知ってるの」

「ありがとなベル、任せた。さてと、俺はちょっと吸ってくるわ」

流石にみんないる部屋でキセルを吸う訳にもいかないからな。みんなは良いって言ってくれると思うけど、親しき中にも礼儀ありだ。


「では私はベルとお夕飯作りをしますね」

「ん、今日も沢山捌くの」

「私はせっかく封印から解いて頂いたのでな、ゆっくり寝かせてもらおう。危機が迫った時、我が力が必要な時は召喚するといい。ではまた」


各々散らばりながら、俺だけは、いつも外へ行く時に使ってる扉に手を掛ける。

ガチャ…パタン。



スーふぅ〜。キセルのマイルドな香りが心と頭を落ち着かせる。

まだ夕方だけど、月が綺麗だなぁ〜。

なんか黒と白の月があるけどそれもまたファンタジーで良し。

スー…ふぅ〜。


んー。そもそもこっちの世界って月が二つもあったっけ?しかも色違い?黒と白?あれ?






「あれ?レーヴァン様ってあの扉から出て行かれたよね?」

「ん。リノン、今『どこでもいけるドア』の座標はどこ?」

「帰ってきたあと、ダイヤルをぐるる〜って一気に回しちゃったから、どこだろ?」

「……」

「ん〜?」「んー」

「…まぁ、レーヴァン様ならなんとかなるって」

「…まぁ、それもそうなの」

夕飯の調理は続く。






月の数位でいちいち気にしてたらファンタジーなんて生きていけねーよなー。

そもそもファンタジー世界なんて、俺にとっては驚きしかないもんな、落ち着いてこの世界を楽しもうじゃないか。


スー…ふぅ〜。

その時、微かに誰かの声が聞こえた。耳を澄ましてみる。

「……と確認可能な起動思念術詠唱者の補足に失敗。思念反応、探索開始」

思念術?何かのゲームみたいだな。

「…機能障害…の探索失敗。付近に強力な思念術詠唱者を確認。追跡を開始する」

ずいぶん変わった喋り方だなー?

足音が近づいてくるって事は、こっちにくる。

「…!対象を発見。警告、非常に強力な思念反応を複数感知!『ヤツ』のではない。接触を試みる」


と、近寄ってきた姿を見て、俺は固唾を飲む。

よりも先に顔を逸らす…‥……!


「…お、俺は夢でも見てるのかな?」

思わずキセルを落としそうになる。

「お前に質問がある」

「いや、俺にはないんで。じゃあ」

「お前の身体から複数のス「あー!!」の反応を感じる。お前は誰の「あー!!」だ?」

「何も知りません!じゃあな!」

ーーーガチャッ!

俺は急いでドアを開け、

ーーーバンッ!!!

速攻で閉める。

「あ、レーヴァン様お帰りなさい」

「リノ助!このドアのダイヤルを回せば行き先が変わるんだな?!」

「はい、そうですが…」

「うぉりゃあぁぁあ!!!」

ダイヤルを火花が散る程勢いよく回す。


ギャリリリリリリリリリィィ!!!


「な、何かあったんですか!?」

「いや!!何も!!」

思わず肩で息をする。

ここはファンタジーだもんな。

このドア、どこでもいけちゃうもんな。

ゲームの世界に行けてしまう(・・・・・・)事だってあるかも知れないんだ。

うん。しょうがない。

こういうこともあるさ。


「さ、夕飯にしよう」

「レーヴァン様。不自然なの」

「そんな事ないぞ。ベルは今日も可愛いなぁ〜」

「んー?」

「お待たせしました〜!今晩は…」

ゴトンッ。

良い匂いがするな。これは……そう。角煮の匂いだ。


さぁ、気を取り直して、

俺は満面の作り笑いを浮かべて言う。

「ありがと2人とも。よし、食べようか!」

「「「いただきます!」」」

そして、何事もなかったかのように食卓へ着いた。

次回予告!!!


「レーヴァン様、この作品のテーマはなんでしょう?」

「この物語は俺が怠惰を貪っている所をこれからも書き残しているはずなんだがな」

「ダメです!ぐうたらは病気です!それにこの物語は私とレーヴァン様のいちゃラブ純愛物語なんですから♡」

「……嘘…だろ。なんだろう。不思議と少なからずそんな感じになる気がする……俺がリノ助と?ないないない。相手はアホロリっ子だぞ?どう転ぶってんだ?」

「大丈夫です。すぐ私の虜にしちゃいますよぉー!」

「残念だけど、リノン。次は私のターンなの。次回『温かな想い出』お楽しみになの」

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