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第2話 『少女?との出会い、この世界について』

「……………」


 目を開けると、見慣れない天井がそこにはあった。

木造の小屋って感じだ。

 にしても、なんかめっちゃ寝た感がある。すっきりした気分だ、あれだけ眠かったのに。


 妙に冴え渡る身体の感覚と共に、横たわる自分を引き起こす。

 そして、手を開いたり閉じたりしながら自分を確かめる。

大丈夫、身体はしっかりと動く。


 ……ってなんで俺、裸なんだ?


「あ、おはようございます」

「…ん?あぁ、おはよう」


 俺に言ったのか。「おはよう」と言われたら「おはよう」と返す。これが見知った人との会話であれば普通の事なのだが…

 明らかに知らない子が目の前にいる事で、全く情報が頭に入ってこない。


 だって、俺の真前には…


「女の子?」


「はい、そうです」


 おっと、心の声が口から出ている様だ。

うーんと。

マジか。裸なんですけど…


「ごめん、何か着る物あるかな?」


 落ち着け。じゃないと俺はただの変態で犯罪者になってしまう!




「改めまして、私はリノンと申します」


 このリノンと名乗った少女は、年相応の可愛らしい雰囲気の女の子って感じだ。少し色白で、栗色の髪は肩くらいで揃えられている。瞳の色は緑。片目は髪で隠れてて見えないが。全体的に白を基調とした少し袖や裾が長い服を着ている。


「初めまして、俺はーー」


 あれ?うまく言えない?


「多分、元の世界の名前はこっちでは発音しづらいのだと思います」


 じゃあなんで他の言葉は普通に話せるのか?まぁいっか。細かい事に突っ込んでいたら俺が裸になっていた時点まで会話ん戻さなければならなくなってしまう!


「そっか。じゃあ……なんかいい名前はないかな?」


流石に名無しって訳にもいかないだろう。


「そうですね、うーん…」


リノンは少し悩む。でも答えはすぐに出た。


「では、レーヴァン様はどうでしょう?」


「お、おう。じゃあそれにするか」


 レーヴァン。レーヴァンか、なんだかファンタジーで言う所の魔族っぽい名前だな。


 因みに貰った服は、黒いフード付きのロングコートに、履き心地の良い黒のデニム、黒いハイカットのブーツと全身ほぼ真っ黒である。上は肌に直接コートなので、前締めないでこのまま出かけたら危ない人だね!


「はい!魔王族にぴったりの名前だと我ながらに思います!」


「そっか、魔王族なんて輩もファンタジーのこの世界にはいるのか」


「はい、レーヴァン様も今はそうですよ」


「おーそりゃ強そ………俺も?」


 リノンはコクコクと頷いている。

 この場面における自分のリアクションの正当性を疑う。つまりそれほど今の自分の立ち位置を飲み込めていないワケである。


「質問ばっかで悪いんだけど、なんちゃら族って事は、魔王ってのは沢山いるのか?」


「いえ、1人しかいません。魔王族の中でも魔王になれるのはたった1人なのです」


 ほう?まだ俺が魔王だって決まったわけじゃない、よかった。

よくわからない世界に来て早々討伐対象とか嫌だよ!


「そっか。あと俺って人じゃなくなったの?」


人外転生?


「まぁ一応、人ではあります。ただこの世界に来たことで『心に体が一致』した……最適化された体になりました」


「で、魔王族と…」


「はい。魔族、魔貴族、魔皇族、魔帝族、魔王族と。…ま、本当はレーヴァン様はもっと上の位なんですけどね…」


分類多いな!


「聞かなかったことにしとく。んと、じゃあなんだ?俺は魔王族だから倒される為に呼ばれたのか?」


 勇者の宿敵として召喚されて殺される運命とかごめんだけどな。


「いえ、違います。レーヴァン様がここに来たって事は、レーヴァン様の力を欲してどこかよからぬ勢力がレーヴァン様を召喚したって事です」


「召喚された?」


「はい。そこに行かせない為に、もし召喚された場合はここに繋げるようになってるんです。逆に魔族なんてゴロゴロいますし、今は討伐されるなんて事も無いですよ」


「そっか。召喚した所に呼ばせない為ってなんでそんなに手が込んでるんだ?」


「そうですね…ルシファー様に会いましたか?」


ル、ルシファー?なんとファンタジー。


「そんなとこまで物語要素なのか。いや、俺が出会ったのはリノンと、ここに来る直前に白と黒のオーブ2つと話しただけだ」


「多分そのオーブのどちらか1つがルシファー様です。ですが今ルシファー様は完全にレーヴァン様の魂と融けあい、一つになっています。その力を使おうとしている者達からレーヴァン様を守るために、ここに来るようにして、後の事を考え私をここに残し、私がキチンとしたこの世界の知識をレーヴァン様にお教えする。という事です」


 なるほど。何もわからん。

 それもこれも、あの質問と関係があるのかな?

自分の目で確かめて決める。って言ってしまった手前、この出会いも何かの縁ってやつ?


 逆に、この子が俺を利用しようとしてる悪い奴らって可能性は…………あまりないような気がするな。

あのオーブ達は良い人ぽかったし、味方がいるとも言ってた。

それにこの子が嘘ついてるとは思えない。


「色々突っ込みたいが、大方無理矢理ここに連れて来られたわけね。それにしても…」


まじでファンタジーなのかぁー。


「一応聞くけど、元の世界には帰れないのか?」


「はい、出来ません。たとえ覗く事は出来ても行く事は不可能です。それこそルシファー様のように魂のみにならないと」


「そっか…じゃあ、俺はこの世界に慣れながら暮らしていくしかないのか?」


「はい!身の回りのお世話などはレーヴァン様の保護者である、このリノンにお任せ下さい!」


 目を煌めかせ、満面の笑みを浮かべるリノン。

 どうしてこんなにもドヤ顔なのだろうか。

 それにお世話なんてさせたら本当に俺はR18本にありそうな、少女に色々させている変態のそれだ。


リノン…リノンねー。

俺はリノンと言う名前と、俺から見たこの子のイメージを照らし合わせる。ものの数秒で新しいイメージの合成が終わる。

よし決めた。


「リノン!張り切りますよ!」

「ところでリノ(すけ)

「ふえ?リ、リノ助とは私の事ですか?」

「そうだな」

「はい!何でしょうか?」

「失礼だと思うが、リノ助って、今何歳?」

「はい!いちじゅーひゃく、123歳です!」


 ムフーッと鼻息を吐き、誇らしげな顔をし、指で数えながら答えるリノ助。


「……ごめん、それって若いのか?」


「はい!まだぴちぴちの123歳です!」


「因みに魔王族の俺は何歳まで生きるんだ?」


「はい。元々のご自身とルシファー様、あとぷらすわん…その魂の同化に適した体を得た…という事は!それはもう無限!不死身に生きますよ!」


無限?不死身に生きる…?


「つまり寿命がないって事か?」

「はい!」

「…じゃあ、首を飛ばされても?」

「はい!」

「心臓を貫かれても?」

「はい!」

「難病にかかっても?」

「レーヴァン様」

「はい?」


 リノ助は人差し指を誇らしげな表情で目の前に掲げ、もう片手を腰に当てる。


「まずレーヴァン様の皮膚を貫ける物なんて私は知りません。そして多分絶対、病気には掛かりません! 」


『多分』という憶測と『絶対』という確固たる自信のフュージョン。


「……死なない命って何なんだよ」


 偶に、今生きるこの世界や俺達もゲームの中の住人で、もしかしたら俺らの意識もプログラムされているんじゃないかと思う事があったけど、本当にそうなのかもしれないと思ってしまった。俺も死なない様に設定されているのだろうか。


 家の中を見渡しながら、ふと鏡を見る。

こうして見ると、体に変化があったのは確かみたいだ。

髪の毛は今まで通り黒だが、癖のあった髪質は今やなく、そのせいか少しロン毛になっている。これはそう…ウルフヘアーと言うやつだっけ。生徒指導の先生に見つかったら次の日までに切って来いって言われる長さだ。


アレ、今の時代だと体罰に当たるんかね?


 あとは目の色が濃いブルーに変わっているし、肌は白く、平々凡々だった顔つきも少女漫画に出てくる様な綺麗系に変わっている。これは確実にスキンケアでどうにかなる範疇を超えている。なぜ?


おい?これが俺かよ、別人みたいだ。


「レーヴァン様、お顔はルシファー様に似て良かったですね!カッコいいです!」

「ルシファーに似てるのか?」

「はい!まるでご兄弟の様ですよ!」


 俺の細胞で、俺の血肉や皮膚なのに俺の顔じゃない。さしずめ異世界整形とでも言うべきなのか?


「俺は魔法とか使って生きて行くのか?」


「そうですね、レーヴァン様なら素手でどんな魔法もちょちょいですが、杖があった方が断然強くなりますよ。あと、普通は杖がなきゃ魔法操作…まぁ使えない人がほとんどなのでその意味でも杖は欲しいですね」


 そうか、まずは世界に馴染んで色々知って知識を得ないといけないのか。

強すぎる力は不自然。まぁそうだよな。


「でも杖を買うお金持ってないんだよなー」


「その点は大丈夫ですよ。お金はまだありますし、まず杖は買う必要がありません」


「どういう事?」


「レーヴァン様には先にこの世界について説明しなきゃですね!」





「つまり、ここは多種族が暮らす世界『ルミナディア』で、剣と魔法…いやほぼ魔法の世界。でも魔物は言うほど跋扈してないし、そもそも戦っているのは主に国や種族どうし。暮らして行くには魔法が不可欠って訳ではないけど、使えるに越した事はない。一年は360日で1日は24時間。どんな種族でも成人と定められている年齢は18歳であると」


「はい、そうです」


「んで基本魔法が使える様になる、つまり、杖を持ち始めるのはその18歳の時、町で行われる成人の儀の際に、自分に見合った杖が精製されて、そこから2年は魔法をちゃんと使える様に国の施設に通わされるって事か」


「はい、因みに杖の材質は色々あって、木や石、とけない氷や金属なんて事もあるんですよ」


 よし、もし俺の杖が、とけない氷だったらずっとコップに入れておこう。


「年齢は越えてしまってるが、とりあえず町に行って杖を作らないといけないんだな」


「そうですね。ここから一番近い町に行きましょう」


「杖を作った後は俺も学校に通わなきゃいけないのか?」


「いえ、その必要はないと思います。ルシファー様の魂と同化したレーヴァン様なら自然と魔法を使いこなせるはずです」


ルシファーさまさまだな。


「実感ないけどな」

「まぁ、よからぬ輩もいるデストロイな世界ですが、気長にいきましょう!」


そうだなー。

なんか聞いてたら、当たり前だがどう転ぶのかわからないファンタジーライフになりそ………デストロイな世界?


「そうか、俺の事を召喚した奴がいるんだった」


先は険しく長いのかな。


「まぁ普通に暮らしていれば、早々出会いませんので。では、いざ出発です!えいえいおー!」


「ぉ、おぉー……」


郷に入っては郷に従えと言うが、なんだか全然気乗りしない!

次回予告!!!


「さぁ、なんだかんだ遂に杖を手に入れるぞ。まさしく異世界っぽいな」

「どんな杖になるんでしょうね?案外、魔法少女が持ってそうなステッキになったりして!」

「おいやめてくれ、ちょっとだけそんな気がしてきた…ほんとやだ!」

「えへへ〜」

「まさかほんとじゃないだろうな?」

「レーヴァン様次第ですよ!さて次回!『こんにちは異世界?』お楽しみに!」

「えっほんとやだよ」

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